千ちゃん!
                                       於天神920818/1318
 女房に怒鳴ったら、家出をするそうです。
 原因はなぜか、君のことです。女は非論理、毛嫌いすると、冷静さがなくなり、私と離婚すると決め、今、台風のなかに村役場に離婚届けを出しにゆくというのです。子たちは反対しています。別室で、子たちと話し合っている気配です。
 離婚したら、私にこの家を出て行けと。出ないのだったら、母と子たちが出てゆきますだと。狂ったとしか思えないが、そのままにします。
 これも運命。そこには、神さまが働いているのです。戦争や原子爆弾にも、神さまは働いています。甘っちょろい砂糖菓子みたいな神さまはどこにも居ません。必要なら、台風で大分県の林産業者を倒産させることもあります。
 これで、母子家庭がもう一つ増え、今の6人の子供も他の16人と同じ境遇になるのです。
 長女の王玉(高2)が玄関で母を止めています。すると、大泣きが始まりました。母のほうがです。そして、雨の中を決然と飛び出してゆきました。
 留守番の6人の子はショボンとしています。王玉はすすり泣いています。
 役場は機械的に離婚届を受け付けるでしょう。そして、保護家族として10万かそこらの金を愉美子にくれるでしょう。私は間借り人としてここにおり(ほかに仕事場がないから)、愉美子に下宿代を支払うでしょう。変な関係です。
 家庭裁判所を通せば、金銭的に彼女に有利なのに、それもしないで、ただ、法律的に離婚を成立させたくてたまらないのです。私にとってはGOサインですが、やはり6人の子供がかわいそう。傘張りを続けて、お金を母子に渡します。
 登仙さん(藤川君)から千のレタ−のコピ−が届いたので、それを見せたのが始まりでした。愉美子はいつものように、「この人は、いつも生母に触れないようにしている。そこに問題があるのよ。だから、ママコンで、年上の女の人とばかり...。」
 そういう見方にも一理はあるのでしょう。しかし、それと毛嫌いと離婚とどうつながるのか、さっぱり分からない。私がマリア様の話をちょっとしたら、「あんなの、普通のオンナよ」と捨てぜりふをして、台所に去ったので、私は腑に落ちず、台所に行って、「それはどういうわけ?」と聞いたら、「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎いのよ」と口走ります。彼女は心の病気なのでしょう。今のところ、どうにもなりません。
 ヤスヒロも愉美子を大変嫌っています。愉美子がこう言った、ああ言ったと報告すると、ヤスは逆上し、その二度目に、ヤスは私に絶交状を叩き付けました。「坊主」が愉美子で、「袈裟」が私だったのです。みんな、どこかが狂っています。冷静に、ありのままを見る心に欠けています。精神病院に入っていない「狂人」が世間中にゾロゾロいます。99.99...%がそれです。ブロイラ−飼育の先公たちに責任があるのか、飼育係を製造した大本の連中が犯人なのか。元には元があるから、大昔に悪魔でもいたのかもしれない。気がついた者から、一人でも二人でも、この狂気世界から、心で、自分を切り離すべきです。
  も も も、あまり役に立たないようです。子供たち、TVもファミコンもやらず、シンとしています。私はテレビ室に行って、みなを元気付けてきます。13:58。
                    
 私は犬が好きです。猫はずるいし、呼んだほうに来ないし、貴族的なエゴイストだ、恩知らずだ。それでも、わが家の母子は猫狂いをしています。
 それはそれでいい。人の趣味だから。離婚もやりたい人はやればいい。趣味だから。ヒステリ−は趣味というよりも、女の本性です。そのややこしいオンナにオトコは引かれるのだから、変に世間はできている。男女大戦争は、エデンの園時代から続いています。でも、女は言葉巧みに、蛇から貰った知恵の木の実を男に食わせました。エバにだまされたADAMは、エデンから追放され、汗だくで労働して苦しい人生をやるようになり、女は死ぬほどの苦しみを嘗めて子供を生むようになりました。このおとぎ話は象徴ですが、いろいろのことを教えてくれます。
 私は登仙(藤川はトウセンとも読むので、そのもじり)から来た千レタ−のことを書きたいのですが、その矢先に「家庭騒動」が起こったのであります。まったく、人生は一瞬先も闇です。
 「愛美組」(近代的に言えば"愛美コミュ−ン")では、理想社会のサンプルを作ろうよ。結婚という諸悪の根源を追放しよう。子供が生まれたら、みんなで育てよう。両親の私有物ではなく、みんなの子宝なのです。財産も"愛美コミュ−ン"の財務委員会が管理します。みんなは別に私有の財布を持たなくてもいいのです。国税の支払いも、郵便出しも財務委員から金を受け取った事務委員がしてくれます。「今夜、カラオケに行こうよ」という3人がいたら、財務委員のところに行ってカネを貰います。余れば帰ってから、財務の金庫に返します。足りなければ、店の人から"愛美コミュ−ン"の財務課に電話してもらって、送金の約束を取り付ければいいのです。夜遊びなど嫌いで、夜は一所懸命に植物学の研究をしている「組員」(現代風に言えばコミュ−ンメンバ−)は、研究が完成して書物にして発表したくなれば、事務課の渉外係を通じて出版社に交渉して、出版してもらいます。その印税(大体、定価の10%)は"愛美コミュ−ン"の財務に入ります。その金は別に植物学者の私有財産ではありません。別の「組員」が、田舎から88歳のお祖母ちゃんを引き取ることになったら、「お年寄り寮」の建設費にそれを使うかもしれません。心がひとつで、皆が愛し合い、助け合いの美をよく体得していれば、財産をめぐる醜い争いなど起こりようがないです。スナックに通うのは怠け者だとか、お酒を毎日飲む人は穀潰しだとか、非難する人はひとりもおりません。千さんは総務に適任です。いろいろの場合が分かり、世間のすみずみをよく知っているから。序列は総務→事務→財務となりますが、それは支配ではなく、人間の体のように、頭脳が一番上についているようなもので、まとめ役です。足の小指一つがヒョウソにかかったって、頭脳は悩みます。ほかのことは何一つできなくなります。人体のすべてが必須であり、どれも大切なように、"愛美コミュ−ン"の一人一人は全体にとって大事な存在です。ひとりの18歳の少年が外で喧嘩して、少年院に入ったとします。それはコミュ−ン全体の問題です。交替に面会にセッセと通うでしょう。そして、「愛美」の心は、その少年院の他の子供たちにも染み透ってゆくでしょう。そういうものを創ろう。
 さて、いよいよ、X月Y日(日付またもやなし)の登仙宛てレタ−に移ります。
 14日の誕生祝い電報無事に着きましたか? 実は、あのアイデアは愉美子の発案だったのです。千円越すがいいか?と訊いたら、「いいわ。」だから、オンナって、何が何だか分かりません。愛と憎が背中合わせに双子みたいに引っ付いています。
 午後3時。村民健やか体操のアナウンスが、村中のスピ−カ−から鳴り響いています。いまごろ、愉美子は離婚の手続きをすませ、こちらに帰りつつあるでしょう。「もう、悪い妻とか、女房でない女房だとか罵られないですむわ」と平和になって。これが、大恋愛の終止符か。だから、結婚は離婚するためにやるようなものです。無理して形式を保ち続けても、どちらかが死ねば、即、離婚です。ただし、世間からは死に水を取った良妻だと褒められたりします。私の母がそうでした。今から13年前に夫に先立たれ、今は86歳になっています。絵に描いたような良妻賢母でした。出来すぎたくらいの。両親の夫婦喧嘩のときは、私は何度も離婚を勧めましたが、母親は頑張りました。意志が強いのです。または、明治大正の