書簡集リスト
                                                十 菱  麟

 私の作家(愛彦:よしひこ)の友人に面白い人がゐた。同年輩の文筆の人で、特技として人から物を問はれると目をつぶり、口を自然にひらくままにして、霊感を受け、何にでも答へるといふ人だった。
 宗教などは何もやってゐなかった。深層意識の奥をさぐってゐたと思ふ。合掌も唱へ声もしない。終始無言である。

 私もこの頃何もすることなく、思想もなく、右(上)の人のような精神状態にゐることが多くなった。今年平成14年に私も七十六歳になる。池田大作みたいに私より少し年下だが精神活動が活発である。私は正反対。ボケに近い状態であって無思想。いつもかうなるといい。老につきものの病苦はあるが、それはそれでほっとけばよい。治さうと努力すると苦しみとなる。

 ハガキくらゐの分量しか書けないのが普通で、今日は特別。

                                         平成14年2月20日
                                             奈良県橿原市
                                             鳥屋町1・5・6


(原稿用紙に2枚)
茫漠に霊感