WIZARDRY RPG

− OutLaws Edition −

■ワールドガイドセクション■


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◇街角にて◇

 とても達することのできない遠方より、より重要なのは冒険者たちが実際に歩く身近な場所でしょう。ここでは、そんな冒険の舞台を紹介していきます。それぞれ、あくまでも一例として捉え、アレンジして使ってみてください。

城塞都市

□冒険者の酒場□

 酒場は決して上品な場所ではありません。そこで、夜遅くまで酒を呷るのは、自分の家を持たない流れ者ばかりです。剣と鎧が持ち物のすべて。そんな彼らは酒場を自分の家のように思っています。ですから、どんな酒場にも常連がいます。酒場でトラブルを起こしたら、彼らが黙ってはいないでしょう。食い逃げはもっての他、剣を抜いて喧嘩しようものなら即座に叩き出されます。また、得てしてこのような店の主人は引退した冒険者で腕っ節もなかなかな場合が多いのです。
 通常、酒場は昼から営業を始め、朝方にはすべての客が酔いつぶれるまで続きます。結局24時間開いており、行く当てのない冒険者たちに寛容なのです。
 酒場は仕事の斡旋の場でもあります。もっとも一般的なのは隊商の護衛です。流れの護衛屋は酒場で商人を待ち、次の街まで一緒に行動します。その街でその街に居ついている護衛屋に代わり、自分たちは元の街まで戻るのです。
 他にも、何か人手に困ったときは酒場で張り紙をして人を求めるのが普通です。庭の力仕事から、モンスター討伐の手伝いまで。時には密かに暗殺や破壊工作の依頼もされるかもしれませんが、それは酒場と相当に親しい場合に限られるでしょう。重要な用件は信頼すべき相手にしかしないものです。

□宿屋□

 酒場と宿屋は兼ねられている場合が多くあります。酔いつぶれてしまった者を宿に担ぎ込んで高額な宿代を払わせるという手法は、ごく罪の無い悪徳商法のひとつです。
 ごく普通の場合は、板間にクッションと毛布だけが提供されます。仕切りもない場所にザコ寝になるわけです。性別や種族に対する配慮はなされていませんが、きちんとした貸し金庫は使用できますから、盗難の心配はありません。
 次の段階は6ベットの部屋で、一行が収容できます。もっと高級な部屋はあまり見受けられません。旅の最中で余分な金を使うのは誰しも望まないからです。

□商店□

 品揃えの点においては、満足のゆく店は決して多くないということを覚えておいてください。こと武具のたぐいは、注文されてからの生産になることが少なくありません。これらはすべて、混迷期の影響によるものです。物資を大量に保持している商店はそれだけで襲撃の対象になりやすく、警備に掛かる経費で割に合わなくなってしまうのです。
 ある物を売る。これが商店の基本です。しかし、これは小規模の交易ということで、普通の旅人も交易利益を得るチャンスになります。旅慣れた者は、旅先の産地で安く品物を手に入れ、それが珍しく希少な土地で高く売るのです。商店の買い入れ値段が売値の半分だったとしても、これが利益をあげる機会は決して少なくありません。

□寺院□

 聖職者の力が弱まっているとはいえ、その奇跡の効果は今だ絶大です。毒や麻痺、石化や死に至ったとき、寺院に運び込んで手当てしてもらうことだけが唯一の希望です。たいていの寺院では異教徒や犯罪者も黙って治療してくれます。しかし、それは代償となる寄付金の獲得が切実な問題として存在しているゆえであり、博愛的意識によるものではなさそうです。

□学院□

 魔法を教えているのが、各種の学院です。霊能者の魔法に関しては僧院と呼ぶべきでしょうか。どちらにせよ、そこは知識の宝庫であり、充分に親しんでおけば頼りになる相談相手となるでしょう。もっとも大きな都市には学院が独立した建物として存在していますが、中小都市においては、城内お抱えの魔法使いの部屋がこれに代わります。
 もっとも学院が狭き門であることはいつの時代も変わらないようです。魔法を教えることは学問を教えるにも増して難しいことですし、権力者は大衆が知識を持つことに否定的ですから、お抱えの魔法使いはあくまでも主君の利益のためだけにその知識を使うだけでしょう。

□番所□

 街に設けられている治安組織です。ここには武装した兵士たちが駐留し、犯罪者に目を光らせています。通常、500人の住人に対して一人の兵士の割合で、治安のための番所が設けられています。多いと見るか少ないと見るかは状況次第なのですが、番所が決して住民の良い友人ではないことは共通しています。
 忙しい番所とはつまり犯罪が多く起こる状況であり、困りものです。一方、暇な方は暇な方で住人にいちゃもんをつけては賄賂を受け取る、などという状況が見られます。

□城郭□

 城にもさまざまなものがあります。5千人もの官吏僚や兵士を抱える巨大な城から、有事に立て篭もる砦として用いるための城まで、場所や用途によって多種多様です。
 ごく一般的な地方領主の城は、居住と防御をバランス良く備えたものです。だいたい3mほどの高さの城壁が築かれた内側に、四階建ての建物がそびえています。常時は十人程度の貴族と30人ほどの使用人が暮らすだけですが、有事には5百人の兵士と共に三ヶ月くらい立て篭もることが可能です。
 城は武器庫であり、食料庫でもあります。飢饉のときに備えた貯蔵が常にあり、飢えた農民が種籾まで食べてしまった時に備えています。敷地内に食用の家畜を飼う施設も備えていますが、普段は悪臭を避けるために馬も入れないことが多かったようです。
 高い見張り台は軍用のものであると同時に、権力の象徴でもありました。立派な城郭を備えることが、民衆を安泰だと感じさせ、忠誠心を高めることでもあったのです。しかし、富を蓄えるためには民衆を苦しめる……支配とは難しいものです。
 そしてもちろん、地下にはダンジョン……地下牢や秘密の隠し部屋、逃げ道、貯蔵庫、井戸などを配した施設が存在しています。廃城の地下迷宮は宝物探しの期待を裏切りませんが、複雑な構造はそれそのものが極めて危険な罠でもあるのです。

□市場□

 この未開の世界においては、どこでも便利に品物が売り買いできるというわけではありません。商店という形態自体が稀であり、ほとんどの場所では日常品は行商によって販売され、そうでない物は注文があって初めて作られます。農民や漁民、職人や錬金術師が自ら物を作り、自ら売るのです。
 このような取引は、早朝に行なわれるのが普通です。朝の五時くらいから街の広場には露店が並べられ、食料や惣菜の店が賑わいます。昼を待たずして市は売りきれた順に閉じられてしまい、買いそびれると次の日まで機会はありません。
 雑貨や家畜が売り買いされるのは、日曜日の朝市です。ナイフやフォークといった小物から家具のような大きな物まで運び込まれ、あちらこちらで賑やかな売買交渉がおこなわれるのです。

 


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