WIZARDRY RPG

− OutLaws Edition −

■ワールドガイドセクション■


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◇著名な組織◇

 『WIZ OE』の世界に存在する著名な組織の一例です。冒険の最中で、あるときは心強い味方として助力を得る、あるいは手強い敵として対峙することもあるかもしれません。

■傭兵団 (戦士、狂戦士の組織)

□ライスロイファー (Reislaufer)

 王国群中部の山岳地域ヘルヴェティア出身の戦士によって編成された傭兵団であり、王国群で最も精強で知られる傭兵団である。
 ヘルヴェティアは国土の大半が山地で、農作物があまり採れず、めぼしい産業もないことから、多くの若者が外貨を稼ぐ手段として傭兵に志願している。多くの男たちが傭兵を経験していることもあり、強大な軍事力を有することから、隣接する他国にとって侵略が困難であり、侵略したとしてもそれに見合う利益が得られない国として認識され、国の安全保障にも貢献している。

□ランツクネヒト (Landsknecht)

 王国群のアルマーニュ王マクシミリアンによってライスロイファーを模範として編成された傭兵団。主に長槍と鉾槍、両手剣を愛用することで知られる。また独特の派手な服装――左右で縞模様や色の違った生地で、縦に切れ目を入れて下地の色が見えるような異相の装束を好んでまとい戦場に赴いた。
 ライスロイファーとは師弟関係にあたるが、同時に商売敵でもあり、戦場で両者が対面したときは特に凄惨な戦闘が繰り広げられることとなる。

□聖マルコ兄弟団 (Marxbruder)

 アルマーニュ地方西部の都市フランクフルトを拠点とする剣客集団。著名な剣術家ハンス・タールホファーが設立に関わっていたとされる。長剣や騎兵刀、刺突剣などの剣術だけではなく、短剣を用いた格闘術、槍術や棒術なども含む総合武術を教えていた。それらを極めた者には「長剣の達人(Meister des langen schwerts)」の称号を授けていた。この称号はランツクネヒトにとって非常に重要であった。というのも、「長剣の達人」の認定を受けた両手剣の剣士は、敵陣の槍衾に先陣として斬り込む役割を負う「二倍の報酬を得る兵士(Doppelsoldner)」の資格を得られたからである。

□ヨームヴァイキング (Jomsvikings)

 ヨーム戦士団。北方出身のドワーフ族の戦士によって編成された傭兵団。戦時においては傭兵として戦い、平時には海賊を行って生計を立てている。ロングシップと呼ばれる喫水の浅く細長い船に乗り込み、沿岸の街に攻め込み、略奪を行うことで知られる。
 武神オーディンを信仰する異教徒から成るが、王国群の領主に雇われて戦うことも多い。特に王国群の東大王家に親衛隊として仕えたヴァラング隊(Varangias)が有名である。

□マムルーク (Mamelukes)

 東部教国の奴隷身分出身者からなる軍団。幼少期から身体の健康な少年奴隷を選び、乗馬、弓射、槍術など徹底した戦闘訓練を受け、騎乗弓射を得意とする戦士を育成した。
 当初は、教主に仕える総督たちが所有する私兵だったが、やがて藩王子飼いの主力騎兵団となり、一人前のマムルークとなった者は奴隷身分から解放され、新たな少年奴隷を育てて精強な部下としていく一種の軍人徒弟制度となっていった。
 ミスルやシリア地方を支配した東部教国においては、聖都ヒエロソリマ征服を目指して侵攻してきた王国群の十字軍を撃破し、後に西進してきた東方蛮国の侵攻をも食い止めた実績によって、東部教国の守護者としての地位を確立することになった。

□イェニチェリ (Janissaries)

 東部教国の火器で武装した最精鋭の歩兵軍団。中東語で“新しい兵隊”を意味する。教国の版図が拡大する過程で藩王の直属兵力として創設された。当初は王国群の戦争捕虜からなる奴隷軍だったが、やがて領内の異教徒の子弟から優秀な青少年を徴収し、東部教会に改宗させて兵士として採用する制度となった。最新の兵器であるマスケット銃を採用し、主兵装として運用していることで知られる。

□レッドコート (Corps of Red Cort)

 勅許会社銃士隊。王国群の大王家の特別許可状を受けた勅許会社(東方との貿易を独占している交易商会)の編成した私兵軍団の通称。兵士に支給されている目の覚めるように赤く染め抜かれた軍服からそう呼ばれる。
 豊富な資金力から精度の高い高品質なマスケット銃が支給されており、実弾を用いた十分な訓練を行っていることから練度、士気が高く、非常に統制の取れた精強な軍隊として知られている。

■盗賊団 (盗賊の組織)

□マヒアス (Ma Hias)

 王国群南部の内海に面した港湾都市を中心に勢力をもつ広域犯罪集団。もとは港湾の日雇い労働者の互助組織だったが、恐喝や暴力によって勢力を拡大してきた。
 主な活動内容は殺人や暗殺、密輸、密造、麻薬密売、人身売買、恐喝、誘拐、縄張り地域の店舗からの用心棒代の徴収、高利貸し、売春、賭博、密航など多岐に及ぶ。
 マヒアスは徹底した秘密組織で、構成員には服従と沈黙を厳しく命じる“血の掟”が存在する。掟を破った者は他の構成員に対する見せしめとして凄惨な制裁がなされる。人知れず拉致され、拷問を受けた痣のある惨殺体となって用水路に浮かぶこととなる。

□黒幇 (Hei−bang)

 東方の港湾都市を中心に勢力を広げている犯罪組織が起源だが、流民を通じて各地に勢力を拡大している。元は異民族王朝による支配に対抗する秘密結社であり、義を重んじる義賊であったが、代を重ねるごとに匪賊――凶悪な犯罪組織に変質していった。秘密結社であった頃の名残か、構成員は位階、儀式、暗号、掟を用いて独特の価値観をもつ。
 主な活動内容は殺人や暗殺、密輸、密造、麻薬密売、人身売買、恐喝、誘拐、縄張り地域の店舗からの用心棒代の徴収、高利貸し、売春、賭博、密航など多岐に及ぶ。

■魔法学院/錬金術協会 (魔術師、錬金術師、探究者、全能者の組織)

□ヘルマンティケ大学 (Universitas Helmantike)

 ヒスパニア地方の都市ヘルマンティケに在る大学。闘争期に設立されたヒスパニア地方最古の歴史をもつ大学。「知識を欲する者はヘルマンティケへ行け」とも言わしめた。
 ヒスパニア王国の庇護を受けて建てられた酸化鉄を含んだ赤い石造りの壮麗な建物をもつ。司教府から高等教育機関として認定を受けており、多くの魔術師、僧侶が集い、魔法学のみならず、神学、哲学、法学、天文学などの研究が進められている。

□ヴィンドボナ大学 (Universitas Vindobona)

 王国群北部の大都市ヴィンドボナに在る大学。アルマーニュ地方最古、最大の大学である。
 闘争期の時代からこの地は、ダーヌビウス河に沿って王国群を東西に横切る街道と、スエビクム海とアペニン半島を結ぶ南北の街道の交差する要衝であり、多彩な民族性を集約する都市として栄えていた。
 黄金期の失われた魔法の研究が進められている。また魔法学のみならず人文科学分野に強く、王国群各地から優秀な魔術師が集まっている。

□モンペリエ大学 (Universitas Montpellier)

 フランク地方南部の都市モンペリエに在る大学。フランク地方の大学としては屈指の歴史を誇り、特に医学部は王国群最古の歴史を有する。かつてヒスパニア地方を制圧していた東部教国の医学校で学んだノーム族の医師たちが当時のモンペリエ領主の要請を受けて移り住み、講義を行った医学校が前身とされる。
 闘争期に散逸した古典医学の研究だけでなく、先進的な東部教国の現代医学を積極的に取り込み、組織的なプロフェッショナル医学が再興されている。王国群各地から優秀な錬金術師が集い、診察や実験など実証研究に基づいた医学や薬学の研究が進められている。

□薔薇十字団 (Rosenkreuzer)

 王国群北部を中心に影響力を拡大している秘密結社。錬金術師クリスチャン・ローゼンクロイツが創設したとされるが、実のところアルマーニュ地方の都市ディーベンガに設立されたディーベンガ大学を拠点とした魔術と錬金術を研究する学徒たちの結社である。
 人類を死や病といった苦しみから永遠に解放する、つまり不老不死の霊薬を研究し、魔術や錬金術を駆使して人知れず世の人々を救うといった高い理想を掲げている。
 やがて、腐敗した権威主義の司教府に反抗した福音主義派と結びつき、後に世界規模の秘密結社フリーメーソンの基礎となっていくのである。

□啓明結社 (Illuminati)

 アルマーニュ地方南部の都市バヴァリアで設立された秘密結社。自由、平等、友愛、寛容、人道を基礎理念とする組織で、世界の秘密の収集を行い、社会に平等と公正をもたらすことを目的としている。強大な力を有する領主、指導者、組織、政府を監視し、力の乱用によって社会的な弱者が蹂躙されることを阻止しようとしている。
 急進的な啓蒙主義に賛同する知識階層の人々が秘密裏に参画しており、各地に広がる広域なネットワークを形成している。多くの吟遊詩人や全能者がその執行者として、世界の脅威となる事象を防ぐべく、日々情報収集に明け暮れている。

■教会、寺院 (僧侶、司教の組織)

□パリシイ大学 (Universitas Parisii)

 フランク地方の中心的な大都市パリシイに在る大学。闘争期に設立された王国群最古の大学のひとつで、最も権威のある神学研究の拠点として知られる。シテ島に在るノートルダム大聖堂付属の神学校が母体となり設立された。フランク王聖ルイに仕えた司祭ロベール・ド・ソルボンが、神学部の貧しい学生のためにソルボンヌ学寮を設立して以来、通称「ソルボンヌ大学」とも呼ばれる。多くの高名な僧侶、司教を輩出している。

□説教者兄弟会 (Ordo Fratrum Praedicatorum)

 闘争期の聖人ドミニコによって設立された修道会で「ドミニコ会」とも呼ばれる。当時フランク地方南部で勢力を持っていた異端カタリ派の改宗のため、教皇イノケンティウスによってドミニコが派遣され、異端からの改宗の実績を挙げたこともあり、以来、異端の改宗と取り締まりの先頭に立って活動している。神学の研究に励み、高名な神学者を多数輩出しており、異端審問官に任命されることも多いことから、「ドミニコ会士(Dominicanis)」をもじって「主の狗(Domini canis)」とも呼ばれ、対立する者たちから怖れられている。

□福音主義派 (Evangelical Church)

 聖典に記された福音のみを信仰の拠り所とする神学派を指す。元は、若き神学者が金策のために贖宥状を盛んに販売するようになった司教府の方針に疑問を感じ、95か条からなる論題を提起したことから始まった。この出来事がきっかけとなり、公の神学論争に発展し、教会だけでなく王国群全土を巻き込む大問題となった。
 司教府は論議を取り下げない神学者を破門したが、その周囲には賛同者たちが集うようになった。やがて重税を負わされて苦しい生活を送っていた農民たちが、「聖典のみに従う」その姿勢に賛同し、農民一揆の旗印となっていった。こうして王国群を揺るがす大戦乱のきっかけとなるのである。

□救世主修道会 (Societas Jesuit)

 救世主修道会。元騎士の修道士イグナティウス・ロヨラによって混迷期に入ってから設立された修道会。“教皇の精鋭”とも呼ばれ、最も戦闘的な性格の修道会である。会員は神学だけではなく古典や科学も修め、意欲的に僻地への宣教活動を行っている。それだけでなく腐敗した教会の改革を進め、教会の復興をも担っている。強い信念と深い教養をもった会員は、各地の領主に招聘され、強い影響力を及ぼすようになってきた。そのため「より大いなる善」のためならば、どんなこともするのではないかとの噂が流布し、密かに怖れられている。

■剣術道場 (侍の組織)

□鹿島神流 (Kashima−Shinryu)

 東方の武神、武御雷神を祀った鹿島神宮に古くから伝わった「鹿島の太刀」を元とした武術の流派。剣術と柔術を中心に、抜刀術、薙刀術、懐剣術、杖術、槍術、棒術なども含む総合武術である。
 東方から伝わったこの武術は王国群にも伝播しており、多くの侍がこの武術を修めている。

□神道流 (Shinto−Ryu)

 天真正伝香取神道流。飯篠家直によって創始された武術の流派。家直は武神、布津主神を祀る香取神宮の奥宮に近い梅木山にて修行し悟りを得たとされる。剣術、抜刀術、柔術、棒術、槍術、薙刀術、手裏剣術なども含む総合武術である。戦乱の時代に即した刀法であり、甲冑を着用しての戦闘を想定した形が多く、斬突において甲冑の弱点である首、脇、小手の裏などの急所を狙う技がある。
 東方から伝わったこの武術は王国群にも伝播しており、多くの侍がこの武術を修めている。

□京八流 (Kyouhachi−Ryu)

 東方の伝説的な兵法家、鬼一法眼が鞍馬山で八人の武僧に伝授した剣術を元とした武術の流派。定寸より短い刀身の小太刀を用いる剣術を中心に、定寸の打刀や三尺を越える大太刀を用いる剣術、柔術、棒術、槍術、薙刀術などを含む総合武術である。
 東方から伝わったこの武術は王国群にも伝播しており、多くの侍がこの武術を修めている。

■僧院 (霊能者、聖、修道僧の組織)

□嵩山少林寺 (Songshan−Shaolin−Si)

 河南郡鄭州に在る嵩山の中の少室山の北麓にある寺院。シャンバラ亜大陸から渡来した達磨大師によって禅を伝えられた地と伝えられ、禅宗の名刹である。伝承では、達磨が禅宗の教えを授ける際に、僧たちの体力がなく精神を鍛えることができないことを嘆き、体力を鍛える秘法、易筋行を授けた。その後、易筋行を元にして少林寺で十八羅漢手という武術が発達したとされる。
 中央山岳ではこの少林寺の流れを汲む僧院が幾つかあり、多くの修道僧が武術を通じて心身を鍛えている。

□修験者 (Shugenja)

 東方の伝説的な霊能者、役小角を開祖とする、各地の霊山と呼ばれる山々を踏破し、厳しい苦行を行って、心身を鍛え自然の霊力を身に付けることを目的とした修行者の集団。先達と呼ばれる師について修行を重ねている。
 また修行の傍らで、勧進と呼ばれる橋や道路の整備や、僧院の建設や修造などの寄付を募る活動を行っている。

■騎士団 (君主、闇騎士、戦乙女の組織)

□紅十字騎士団 (Red Croos Crusaders)

 十字軍の時代に創設された騎士修道会。正式名称は「聖地ヒエロソリマの救世主騎士修道会(Fratres Militie Christi de Hierosoyma)」である。聖地の防衛と巡礼者の保護を目的として創設された。制服は紅の十字紋の染め抜かれた白い長衣で、その士気と練度の高さ、質の高い装備から、紅十字をまとった騎士たちは十字軍最強の軍団として異教徒たちに恐れられた。聖地が東部教国によって奪回された後は、本国に帰還して司教府の騎士団として活動している。標語は「正義を行うべし、たとえ世界が滅ぶとも」(Fiat eu stita et piriat mundus)で、勲章にもその文字が刻印されている。

□ダイヤモンド騎士団 (Order of the Diamonds)

 王国群の大王家が創設した騎士団であり、その名称はかつて闘争期の時代、リルガミン王家に伝来した“ダイヤモンドの騎士”の伝説に由来する。標語は「困難を克服し、栄光へ」(Per Asprera ad Astra)。正装時にはベルベット地の純白のマント、鮮やかな緑色のフード、羽付き帽子を着用する。ダイヤモンド騎士団は王国群で最古の歴史を誇る伝統ある騎士団である。しかし、現在では大王家の威信が低下しており、勲位の価値もまた低下している。

□強盗騎士団 (Robber Knights)

 騎士の身分を持ちながら強盗や野盗を行っているならず者の集団。戦時においては傭兵として戦い、平時には強盗を行って生計を立てている。旧い習慣法に有る自力救済の法を悪用し、決闘と称して身代金や略奪を目的として、街道を通る交易商などに言いがかりをつけて襲撃する蛮行を行っているのである。
 教会や王国群の大王は幾度となく強盗騎士を取り締まるため法令を発布しているが、この混迷期においては効力を発揮していない。

□有翼騎士団 (Winged Hussar)

 王国群東部辺境ポルスカ王国の精鋭騎士団。真紅のベルベット製の制服の上に、見事に彫金された胸甲を着用し、巨大な羽飾りを背負い、鮮やかな白と紅の軍旗を掲げる美麗ないで立ちの長槍騎兵である。騎乗する軍馬は、東部教国から鹵獲したアラブ馬を繁殖、品種改良したものを使用した。敵歩兵の用いる長柄槍よりさらに長大な騎兵槍を主武装としており、自陣の従者に替えの槍を準備させ、突撃で槍が折れると自陣に戻り、替えの槍を受け取ると編隊を組んで再突撃し、これを繰り返して敵陣を粉砕した。この独特な突撃戦術は、敵軍の長槍隊や銃兵隊に対して非常に有効で、平原における合戦では無敗を誇った。

□赤枝の騎士団 (Order of Red Branch)

 伝説的なエルフ族の騎士団。北海に浮かぶブリストル島の霧の玉座に君臨する“永遠の女王”に忠誠を誓ったエルフ族の騎士によって編成されているとされる。騎士団の団員はいずれも魔法に長けた精強な騎士であり、必殺の槍術を修めているとされる。ブリストル島南部の人間の王国による侵略を幾度となく撃退していることで知られる。

□ドラゴン騎士団 (Societas Draconistrarum)

 王国群の東部辺境マジャロルサーグで設立された騎士団。東部教国の侵略から国土と聖印を守護することを誓いに掲げていた。マジャロルサーグの貴族や豪族を中心に編成されていた。
 東部教国の攻撃が深度を増すなか、小竜公とも呼ばれた王は力を求めて魔物に魂を売り渡し、吸血鬼になり果てた。配下の騎士たちもことごとくそれに追随し、呪われた闇騎士の集団となったという。
 不死の魔物となった王とその騎士団は東部教国の大軍からなる侵攻を夜戦にて撃破し、多くの兵士を血祭りに上げて、その侵略を断念させた。そして今なお王国群の黒貴族として、マジャロルサーグの地を支配し続けている。

□楯の乙女 (Skjaldmaer)

 王国群北部を中心に勢力を広げつつある武神教団における戦乙女の呼称。武神オーディンを信仰する戦士からなる軍団を率いている。
 混迷期の時代に入ってから出現した武神崇拝は王国群北部を中心に瞬く間に広がり、いまや戦乙女たちと肩を並べて戦うために、王国群各地から多くの戦士たちが武神教団に加入しようと志願するようになってきている。
 一方で、この武神崇拝の流行の兆しに危機感を募らせた教会は、修道女たちにも騎士の権利を与え、戦場に立つことを認めるようになった。それが教会の戦乙女“アイアンメイデン”である。

□退魔騎士団 (Witch Hunters)

 退魔騎士団は、悪魔の勢力を根絶やしにすることに一命を捧げ、王国群の国家や教会のために活動する騎士の集団である。その目的は、王国群を密かに侵食しつつある悪魔による侵略の阻止である。
 彼らは王国群各地の都市で、潜伏する悪魔の信奉者や、異端者を狩り出すことを主な仕事としているが、邪悪な勢力に有効打を与えられると判断したなら、どんな遠方であろうがはるばる赴くことだろう。
 退魔騎士たちは、一般的に無愛想で疑り深い連中で、罪ある敵を斃すことができるのなら、巻き添えで無実の民が死ぬこととなろうがまったくためらうことはない。そのため退魔騎士を目にした民衆は、惨事が起きることを予期して恐怖に震え上がる。

■野伏団 (弓使いの組織)

□ハイランダー (Highlander)

 北海に浮かぶブリストル島北部のハイランド地方出身のエルフ族の弓使いによって編成された連隊。タータンチェックのキルトを着て、バグパイプ演奏を好むことで知られる。熟練の弓使い揃いで、その技量と士気の高さは並ぶものがなく、ブリストル島南部の人間の王国による侵略を幾度となく撃退して、“霧の玉座”を死守している。

□ヨーマンアーチャーズ (Yeomen Archers)

 北海に浮かぶブリストル島の独立自営農民ヨーマンからなる長弓兵の連隊。ロングボウと呼ばれる長さ4〜6フィート(120〜180cm)程もある長大な弓を使うことで知られる。長射程かつ連射のできるこの長弓は、戦場で猛威を振るい、目覚ましい戦果を挙げた。
 ノッティンガムに在るシャーウッドの森を本拠として王国の徴税隊を撃退した著名な義賊の一団は、このヨーマンアーチャーズが母体とされる。

□コサック (Cossack)

 王国群北東部の高原地域に住み着いた遊牧民の集団。特定の民族を示すものではなく、様々な民族の出自の人々が東方蛮国による侵略の脅威から身を護るために軍事共同体として集約した集団である。
 東方蛮国の民のように半遊牧生活を送り、時には周辺の街や村落に対して略奪行為を行った。やがて、その軍事力に目を付けた王国群東部辺境の領主たちに傭兵として雇われるようになった。

■楽団 (吟遊詩人の組織)

□ピュイ (Puy)

 王国群中西部アルトワ地方の都市アラスで結成された吟遊詩人たちの楽団。アラスは古くから羊毛産業が盛んで、王家から商業特権を認められ貿易の中心地として隆盛した。やがて、貿易によって財力を蓄えた商人たちをパトロンとして、歌謡や器楽演奏、舞踏などの芸人の組合が結成され、文化の中心としても栄えるようになった。既存の武勲詩、ファブリオ、教訓的説教譚、田園牧歌詩などをもとにした演劇も上演されている。

□マイスタージンガー (Meistersinger)

 南アルマーニュ地方の都市ニュルンベルクを始めとする諸都市を中心に、都市に定住して手工業の親方となった吟遊詩人たちから成る楽団。主に恋愛を主題とした抒情詩ミンネザングや聖母崇敬を主題とした祝詞歌を、作詞、作曲して伴奏付きで歌った。
 祝祭日の午後、礼拝の後に教会を借りて「歌学校(Singschule)」が開催され、歌唱コンクールやマイスター(親方)による徒弟の昇格審査が行われている。

■天文台 (陰陽師の組織)

□知恵の館 (Bayt al−Hikmah)

 東部教国の古都のひとつバグダッドに在る天文台を併設した図書館。医学、天文学、数学、哲学などの文献の収集および古典語の書籍の中東語への翻訳を行っている。
 また併設されている天文台で長期間に及ぶ天体観測を行い、精緻な観測データの集積を行うとともに陰陽師の育成を行っている。

□北斗降臨院 (Hokutokourinin)

 東方に起源をもつ中央山岳に設けられた陰陽師の拠点。天体を観測する天文台、および東方の占星術である宿曜道を学ぶ学舎でもあり、多くの陰陽師が天文学の研究を行っている。天文台では精密な天球儀やアストロラーベを用いた太陽、月およびその他の天体の観測が行われており、精度の高い天体図や暦が編纂されている。

■魔道結社 (召喚師、魔女、妖術師の組織)

□黄昏の教団 (Hermetic Order of the Twilight)

 降霊術を行う魔道結社。死の神秘を解き明かし、不老不死の存在となること探究しているとされる。同時に不死属の魔物を操り、使役することから恐れられている。
 疫病の流行や戦乱によって死の危険が身近に迫っている混乱の時代ゆえに、死の恐怖から逃れるためにこの教団を頼り、不滅を願う入信者が後を絶たないとされる。不浄の魔物である不死者を操る魔道として忌避され、教会からは異端として激しく弾圧されている。

□内三部経流 (Naisanbukyouryu)

 東方に起源をもつ両性具有の鬼神アンドロジナスを本尊とし、髑髏を用いた性的儀式を行う魔道結社。男女交合の性的儀式を行い、性愛と死の衝動によって、鬼神を召喚し、その加護を得ると云う。かつてこの魔道結社の指導者であった妖術師は、東方の大君に護持僧として仕え、性的呪術によって大君を操り、世を乱したともされる。その淫靡で背徳的な教義を危険視する教会からは淫祀邪教として激しく弾圧されているが、性的な行法によって即身成仏に至るという魅惑的なこの邪教は、密やかに勢力を拡大しつつある。

■忍軍 (忍者の組織)

□伊賀衆/甲賀衆 (Iga/Kouga Ningun)

 東方の伊賀国、あるいは近江国甲賀に起源をもつ忍軍。いずれも山岳が多い地方で農耕に適さない土地柄から、傭兵として各地に出稼ぎするようになり、ゲリラ戦の技を磨くうちに忍者の集団となったとされる。特に伊賀衆は組織が強固であることで知られ、上忍の受けた依頼によって下忍はどのような依頼主の元にも派遣され、ことによっては敵味方に分かれることすらあったと云われる。それ故に裏切りや脱走は厳しく追跡され「抜忍成敗」されることとなる。一方、甲賀衆は特定の領主に長期間に渡って雇われ、忠義を尽くすことが多い。また、忍者の流派でもっとも薬の扱いに長け、女の忍者が存在しないことで知られる。

□雑賀衆 (Saika Ningun)

 東方に起源をもつ鉄砲傭兵の集団。東方の紀伊国北西部の雑賀荘を中心とする地域の地侍から成る忍軍。もともとは海運と交易を生業としていたが、この地に伝来した鉄砲(火縄銃)をいち早く導入し、生産体制を整えるとともに優れた射手を養成し、練度の高い鉄砲傭兵となっていった。

□アサシン (Assassin)

 東部教国に伝わる伝説的な忍軍。エルブルズ山脈西端に位置するアラムート渓谷のいずれかに在る隠れ城砦を拠点とし、“山の老人”と呼ばれる頭領に率いられているとされる。かつて東部教国に征服された聖都ヒエロソリマの解放のため、王国群で結成された十字軍を迎え撃ち、その指揮官たちを次々と暗殺したことが伝説として今なお語り継がれている。

□マスターサマー (Master Summer)

 “真夏の達人”と称される司教府が抱える密偵の伝説的な頭領。通常は緋色の法衣をまとう枢機卿のひとりとして聖務に就いているが、司教府の存亡に関わる事態となった場合、自ら密偵を指揮してその障害となるものを除き、教会の秩序を維持していると、まことしやかに噂されている。むろん、司教府はその存在を一切認めてはいない。

 


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