そう言えば急に思い出した。
このらんぷ亭が田町の会社の近くに出来たばかりの頃、同期のやつらと3人で食べに行った。
食べ終わってレジで金を払っていたら、いきなりレジの女の子が私の手を握ってきたので驚いた。
大人しそうで結構可愛い娘なのに何と大胆な! っと思っていたら、何のことは無い。彼女はお釣りを渡そうとしたのだった。
それにしてもあそこまでしっかり手を握らなくても。
彼女は左手で私の差し出した右手を下からしっかりと包み込み、更に彼女の右手を上からかぶせてきた。
何としてもお釣りを落とさせないということらしい。端から見ると幸せをお祈りされているみたいだ。
店を出てみると、もう一人の同期の奴が手をジッと見つめていたので
「握られた?」 と聞いてみると 「お前も?」 と言ってきた。
もう一人の奴が我々の話を不思議そうに聞いているのでレジの娘の話をすると、奴は非常に悔しがった。
奴は小銭を持っていたので料金をキッカリ払ってしまったのだ。
「可愛かったよなぁ」 「柔らかい手だったなぁ」 と2人でさんざんいじめたのを覚えている。
この話には後日談がある。
我々にさんざんいじめられた彼は、早速次の日、 「今日こそは必ずあの娘に手を握られよう」
と意気込んで、全く小銭を持たず、千円札だけ持って店を訪れたのだ。
外から見て、確かに彼女がレジをやっているのを確認した後に入店。
彼は食べるものを食べ、それではいよいよ …
と思ってレジを見ると、レジにいたのは中年のおっさん!!
こいつに手を握られたらたまらないと思った彼は、出る前に必死に小銭をあさったらしい。
しかしいくら探しても金は千円札1枚のみ。結局彼は諦めてレジへと向かった。
当然そのオジサンは手を握ったりはしなかったが、奴はかなりドキドキしたらしい。 これは実に笑える話だった。
我々のいじめが更にエスカレートしたのは言うまでもない。