SECTION 4: Questions about Saturn hardware

サターン本体に関する質問全般はこちら。


Q4.1 サターンのスペックを教えて下さい。
Q4.2 スペックで使われてる用語がわからないよ〜。
Q4.3 サターンはどんなアーキテクチャになっているの?
Q4.4 本体のバックアップRAMの容量は?
Q4.5 サターン上部のスロットは何に使うの?
Q4.6 サターンの性能を上げるボードって出るの?
Q4.7 サターン本体の横に冷却ファン用の穴みたいのがあるけど?
Q4.8 サターンのクロックアップはできますか?
Q4.9 サターンから VGA モニタ対応の RGB 信号が出せるって聞いたけど?
Q4.10 買った時期によって本体のバージョンが違うみたいだけど?
[表紙] [目次] [先頭]

Q4.1 サターンのスペックを教えて下さい。

説明書に記載されているスペックを、以下に示します。 より詳しいスペックについては、8.1節をご覧下さい。 なお、これは初期のサターンのスペックです。その後の仕様変更により、 最近のサターンでは消費電力が少なくなっていたりするそうです。

        定格
                型名            HST-0001
                使用電源        AC 100V用±10% 50/60Hz
                消費電力        約15W
                使用環境        温度5〜35℃
                                湿度10〜80%RH(結露なきこと)
                外形寸法        260mm(幅)*230mm(奥行き)*83mm(長さ)

        仕様
                CPU             メイン           SH2(28.7MHz, 25MIPS)*2
                                サウンド         68EC000 (11.3MHz)
                メモリ          ワークRAM         16Mビット
                                ビデオRAM         12Mビット
                                サウンドRAM        4Mビット
                                CDバッファRAM      4Mビット
                                IPL ROM            4Mビット
                                バックアップRAM  256Kビット
                グラフィック    解像度           320x224ドット他
                                同時発色         1677万色以上
                                パレット発色     2048色/1024色
                                スプライト       拡大縮小、回転、変形スプライト
                                スクロール       最大5面
                                                 XYスクロール4面
                                                 回転スクロール面2面
                                                 拡大縮小2面
                                                 ウィンドウ2面
                                                 特殊機能
                                                 横ラインスクロール
                                                 縦セルスクロール
                                                 拡大縮小
                CG性能          ポリゴン         専用ハードウェア搭載
                                特殊機能         フラットシェーディング
                                                 グーロシェーディング
                                                 テクスチャーマッピング
                サウンド        PCM音源または    32CH(量子化数16ビット、
                                FM音源           サンプリング周波数MAX44.1KHz)
                                                 オーディオDSP搭載
                その他          CDドライブ       インテリジェント倍速CDROMドライブ

[表紙] [目次] [先頭]

Q4.2 スペックで使われてる用語がわからないよ〜。


Q4.2.1 IPL ROM
Q4.2.2 インターレス、ノンインターレス
Q4.2.3 バックグラウンド(BG)面
Q4.2.4 変形スプライト
Q4.2.5 半透明機能
Q4.2.6 フラットシェーディング、グーローシェーディング
Q4.2.7 テクスチャーマッピング
Q4.2.8 CD-DA
Q4.2.9 インテリジェント倍速CD-ROM

[表紙] [目次] [先頭]

Q4.2.1 IPL ROM

IPL とは Initial Program Loader の略で、 電源を入れたときのシステム起動を行うプログラムです。 IPL ROM は、IPL が記録されている ROM で、 IPL 以外にも、CDプレイヤー等のプログラムが記録されています。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.2 インターレス、ノンインターレス

テレビ画面への画像の表示方法の事です。 日本やアメリカのTVの規格であるNTSC規格において、 TVの画面は”走査線”と呼ばれる約525本の横線を縦に並べて画像を表示していますが、 実際には一回の走査で全体を一度に描画するのではなく、人間の目の残像効果を利用し、 奇数番目と偶数番目の走査線を交互に書き換えることによって 毎秒60回の描画と垂直解像度525本を疑似的に実現しており、 この描画方法をインターレスと呼んでいます。 インターレスでは高い垂直解像度が得られますが、多少画面がちらついてしまいます。

それに対してゲーム機の画像は通常縦200ドット程度の解像度で済む事が多いため、 縦方向の解像度を半分に減らして一回の走査で全画面を描き換える ノンインターレース方式がもっぱら使われてます。

ノンインターレス方式では垂直解像度は低くなりますが、 画面がちらつくことはなくなります。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.3 バックグラウンド(BG)面

ファミコンなどのこれまでにあった家庭用ゲーム機や、 一部のポリゴン基板を除くアーケードゲーム用の基板では一般に、 画面を表示する際に「バックグラウンド面」と呼ばれる一枚絵 (実際には最近のゲーム機などでは2枚以上のバックグラウンド面を持っています) を用意してそこに背景を書き、その上にスプライト、もしくはオブジェクトと呼ばれる 「動く物体」を合成することにより画面を構成していました 。演劇で言えば舞台やセットがバックグラウンド面、 俳優や小道具がスプライトにあたるわけです。

一般に、バックグラウンドはスクロールさせたり、 回転拡大縮小などの特殊効果をかけることができたりします。 サターンはこういった家庭用ゲーム機の進化の上にあるハードで、 強力なバックグラウンド機能を持っています。

プレイステーションはこのバックグラウンド面を持たず、 その強力なビットマップ描画機能を活かして、 画面全体をポリゴン(スプライト)で描画する事で有名です。( -> Q.8.1)


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.4 変形スプライト

前節でも触れた通り、これまでの家庭用ゲーム機や テーブルゲーム用アーケードゲーム基板では一般に、 BG面とスプライトを合成することで画面を構成しています。

ファミコンなど初期のゲーム機のスプライト機能には、 扱えるサイズや数などに様々な制約がありましたが、 ハードウェアの高性能化に伴い より大きなスプライトを大量に表示させることが可能になり、 アーケード基板では回転・拡大縮小などの特殊効果を ハードウェア的にかけることができるものも現れました。

サターンのスプライト機能は非常に強力で、サイズや数の制限がなくなり (もちろん、ハードウェア上の限界は存在します)、 また、スプライトの各頂点の座標を任意に設定し、 それに合わせて絵柄を自由に変形させて貼り付けることで回転・拡大縮小をはじめとする 様々な特殊効果をスプライトにかけることができます。 この機能を変形スプライト機能と呼んでいます。

サターンは変形スプライトをポリゴンとして用いているようです。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.5 半透明機能

手前に半透明の物体が存在し、向こう側が空けて見えるような状態 (色セロハンを透かして物を見るような状態をイメージしてください) を表現する機能です。

サターンは BG 面とスプライト(ポリゴン)の間の重ね合わせについては 強力な機能を備えていますが、 スプライト間の半透明重ね合わせには様々な制約があるために使い方が難しいようで、 代わりにメッシュ(網目状の模様)が用いられていることが良くあります。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.6 フラットシェーディング、グーローシェーディング

シェーディング(shading)"とは、 コンピューター内部の仮想3次元空間中に仮想的な光源を配置して、 仮想空間中の物体に陰影を付ける処理の事です。 シェーディングを行うことにより、立体感のある3次元空間の表現が可能になります。

フラットシェーディング(flat shading)と グーローシェーディング(Gouraud shading)は、 それぞれ陰影を付ける手法の名称です。

フラットシェーディングは物体を構成する面の中心点における法線ベクトルと 光線のなす角を計算して各面の明度を設定する (つまり、同じ平面の”暗さ”は同じになる)手法で、 計算量が比較的小さい代わりに、曲面を近似している多角形の形がはっきりと現れてしまい、 カクカクした画像になってしまいます。

バーチャファイター(Remix ではない方)が、フラットシェーディングの良い例です。

グーローシェーディングはこの欠点を解消するための手法の一つで、 各頂点における法線ベクトルを元に各頂点における明度を設定し、 平面の内部の点の明度をそれらを1次補間 (間をとって平均するようなもの、と思ってください) して求めることにより滑らかな陰影の付き方を表現する手法で、 一般により美しい画像を得る事ができます。

PSの闘神伝2が、グーローシェーディングの良い例です。

では、なぜ全てのポリゴンゲームが グーローシェーディングを用いないのかと言うと、 グーローシェーディングはフラットシェーディングの数倍の計算パワーを必要とするため、 使い所が難しくなってしまうためなのです。

あと、「サターンは光源計算ができない」などと良く言われていますが、それは嘘です。 NiGHTSやファイティングバイパーズの画面写真を見ると、綺麗にシェーディングされていますよね。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.7 テクスチャーマッピング

ポリゴンの表面に模様を貼り付けて、物体の質感を表現する技術です。 また、テクスチャーが貼られているポリゴンの事を テクスチャーマップドポリゴンと言います。

テクスチャーマッピングを効率的に利用する事によって、 少ないポリゴン数で美しい画面を構成する事が可能になります。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.8 CD-DA

通常の CD の音声トラックを CD-DA (Compact Disc - Digital Audio) と呼びます。 要するに、普通の音楽CDと一緒ですね。

一部のゲームでは本体の音源を使用せずに、 直接 CD の音声を BGM や声として使用しています。 利点は、普通の CD と同じなので音質がよい事が挙げられます。

何故、最近、CDではなく、CD-DAと呼ばれるようになったか少し紹介します。 最初のCDは、デジタル音声を収める為に考え出されて、商品化されました。 しかし、時代が流れ、音楽専用だったCDが色々に使われるようになりました。 そこで、混乱を避けるために音楽専用のCDをCD-DAと区別するようになったのです。 また、CD-ROMとは、コンピュータ用記憶メディアに使われるCDを表します。

CDファミリーには、

  • CD-DA
  • CD-V
  • CD-ROM
  • CD-I
  • CD-I Ready
  • CD-ROM XA
  • CD-R
  • CD Bridge
  • Photo CD
  • Video CD
  • MD

など多くの種類があります。 これらは、主に Philips社と SONY社により定められた規格です( -> APPENDIX I)


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.2.9 インテリジェント倍速CD-ROM

制御用に専用のCPU(SH1)やドライブ制御チップ(H8)を持ち、 「あのデータを読み出しておいてね」 と頼むだけでそのデータを勝手に読み出しておいてくれるという、 賢いCD-ROMドライブなのです。

もう少し詳しくお話すると、 CD-ROMドライブの機能分担は以下のようになっているようです。

        役割分担)                        → DAC   CD-DAな再生
                                         ↑
         CD → 光学系 → CD-DAデコーダ →○→ CD-ROMデコーダ CD-ROMなRead
                                         ↑
                                  CD-DA/CD-ROMの切り換え

         <---------------------------><--------------------->
                   H8の分担                    SH1の分担

この構成から考えると メインCPU(SH2)のアクセス要求を SH1がインテリジェントに処理しているようです。 従って、ある程度、処理の負荷が分散されており、 CD-ROMの読み込み処理と並行して、ゲームの処理を行なわせることが可能だろうと思われます。 サターン内部に512KB塔載されているCD-ROMキャッシュは、 そのような用途のためにも用いられていると思われます。

「倍速」というのは、音楽CDの再生速度(150kB/sec)と比べて、 2倍のスピードでデータを読み出せるということですね。 このように一定の速度でデータを読み出すために、 CD-ROMではCLV (Constant Linear Velocity,線速度一定) での回転数制御を行っており、それがCD-ROMのアクセスの遅さの一因となっています。

ちなみに、1倍速では、内側で 1秒間に8回転ぐらい、 外側で1秒間に4回転ぐらいの速さで回転していますから、 2倍速その倍の速さで回っているわけです。

そんな速さで回りながら精密な制御を行うわけですから、 CDドライブはくれぐれも大事に扱いましょう。 回転しているドライブを手で押さえて止めるなんてもってのほかなのです。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.2]

Q4.3 サターンはどんなアーキテクチャになっているの?

サターンの基板構成などから そのアーキテクチャを予想したものをまとめたテキストを掲載します。 必ずしもサターンで遊ぶ際に必要となるわけではありませんが、 読んでみると知識として非常に興味深いものです。

なお、ブロック図を lha+uuencode で固めたものを APPENDIX に付けておきます。 (thanks: 朝生@名工大さん)


初期のSEGA SATURNの基板は メインシステム基板 と CDサブシステム基板 とに分けられました。 ただし、現在のSATURNでは、1枚にまとめられています。 CDサブシステムは文字通り CD-ROMドライブ関連部 及び 外付けのムービーカード からなり、それ以外がメインシステムになります。

メインシステム

★演算部

主にシミュレーションの思考ルーチンや3Dの座標変換、周辺の制御といった演算を行なう部分です。 周知の通りSH2のツインCPU構成で、ワークとして1MBのSDRAM のみがぶら下がった 32bitのデータバス一本を共有していると思われます。 SH2のキャッシュはライトスルーですからストアの競合が懸念されます。 しかしSDRAMのピン数(50ピン)からいってアドレスを1クロックで与え、 次のクロックからは連続してデータを読み書きできるのでしょうから、 非常に優秀なメモリシステムではあります。

ワークのSDRAMは多チャンネルDMAであるSCU(System Control Unit)にも共有されます。 SCUは分散したプロセッサにコマンドやデータを効率良く転送するために多く (多分5本)のバスを管理するASICで その1つにメインメモリの残りであるバッファとしての1MBのDRAM、ROM、 バックアップ用SRAMをぶら下げた16bitバスがあります。 ただし1MBのDRAMを16bitでアクセスするのは考えにくいので、 間違っているかも知れませんが後述するASICのピン数から考えるとこうなってしまいます。 このバスにはCPUバスも継っていますがASIC(100ピン)を間に挟んでいるため、 CPUがワークをアクセス中ならSCUが独立してバッファ等をアクセスできると考えられます。 開発者の言う「バスは何本もある」とは主に、2MBのメインメモリの内、 ワーク1MBをCPUがバッファ1MBをSCUが独立してアクセス可能である事を指しているのでしょう。 またプログラムにおける基本的なメモリ配置は頻繁にアクセスする領域をワークに当て、 それ以外はバッファにという事になります。

それにしても1MBのワークにバーストアクセスできるという点はやはり特記すべき点だと思われます。 Play Stationではバーストリードは出来てもライトは数ウェイト入るそうで (ストアキューにより軽減しているそうですが)、 独自ルーチンによるムービーの展開などはSEGA SATURNに分がありそうです。

またCPUであるSH2の演算能力はソフトを見る限りでは意外に高いように思われます。 この理由としてSH2が基本演算ユニット、積和演算ユニット、除算ユニット、 メモリユニットが依存性以外ではなるべくパイプラインが止まらないような設計になっているから という点が挙げられると思います。

★描画部

CPUによる演算とは並列に描画をする部分です。 ポリゴン・スプライト用のVDP1とBG用のVDP2で構成され、 VDP1は32bitバス接続のスプライトパターン(テクスチャ)メモリ0.5MBと 16bitのフレームバッファ0.5MBを、VDP2は32bitのBGパターンメモリ0.5MBと おそらくチップ内に2KB(704×24bit)前後のラインバッファと4KB (1024×32bit or 2048×16bit)程度の統合パレットをそれぞれ専有すると考えられ、 チップ外のメモリは皆SDRAMによる実装です。 この根拠はVDP1とVDP2に共通するパターンメモリ0.5MBが2Mbit(×16bit)×2であることによります。 パターンメモリにはパターンのみでなくプログラムも格納するとの事で、 Play Station がワークにパケットとして置くのとは好対象といえます。 パターンの転送はSCUからの16bitバスによって行われ、 その帯域幅は50MB/S(16bit×28.7MHzで57.4MB/Sだと思われるが…)とされ、 多少物足りなさを感じます。

大まかな挙動は、VDP1はパターンを読み出しながら並列にフレームバッファへ書き込み、 一定期間毎に前フレームのラスタデータをVDP2に送出します。 VDP2は読みだしたパターンデータによりラスタ単位に描画するBGと、 VDP1からのラスタデータ、そして後述するムービーカード等からの ラスタデータを優先度に応じて合成しビデオ出力に送ります。

ここで特に言及しておきたいのは、VDP2はラインバッファに毎ラスタ描画する性質上、 処理落ちはしてもコマ落ちはしない事です。 これはラインバッファのみからなるスーファミがちらつきはあっても コマ落ちはしないことから分かると思います。 よってSEGA SATURNにやたらとフレームレートの低いソフトが多い理由は フレームバッファ方式のVDP1に求めるべきでしょう。 VDP1ではパターンは32bitバスにより読み出され、 しかもフレームバッファへの書き込みと並列に (少なくともある程度オーバーラップして) 行われるため、処理のボトルネックは16bitバスのフレームバッファへの書き込みと断じて良いでしょう。 なお開発者の言う 「テクスチャを貼ろうが貼るまいが変わらない」 のは上記の並列処理によると思われます。

ボトルネックの要因は、バスが16bitであるため クロック当り1ピクセルしか転送できない画面モードがあること、 VDP2へのラスタデータ転送のためにピクセルフィルレートが 一画面×60コマ分だけ低下することが挙げられます。 試算してみると、1ピクセル/クロックで解像度が320×240として、

1ピクセル×28.7MHz―320×240×60
=25486131 ピクセル/S
≒424768.9 ピクセル/フレーム

が得られ、開発者の言う 「純粋なピーク値でフレーム当り40万ピクセル」 に近い値であることが分かります (参考までにPlay Stationは67Mピクセル/S)。 またこの発言から、ピクセルフィルレートは8bitピクセルの画面モードにおいても倍にはならず、 この値が上限であることが伺えます。(つまりこの場合1バイト単位で書き込むのだろうか?)

ここで0.5MBのダブルフレームバッファの画面モードを考えてみると、 横320や352は16bitで640や704では8bitのピクセルサイズになることが分かります。 おそらく16bitの場合は256個を超えるパレットかハイカラー(65536色)を、 8bitの場合は256個までのパレットを指定するのでしょう。 よってハードウェアで用意されたシェーディング、 特にグーロは16bitのハイカラーでなければ困難であると思われます。

VDP1ではパターンメモリは読み出すもの、 フレームバッファは書き込むものとして扱われるため、 フレームバッファからの読み出しを必要とするスプライト・ポリゴン間の半透明は実現できません。 また同様に全フレームの画像をテクスチャにするような (実況中継のような)表現も出来ません。 よって半透明などの特殊効果はVDP2においての合成時にしか出来ないのでしょう。 (注:その後得た情報によると、 スプライト・ポリゴン間の半透明重ね合わせも厳しい制約があるものの、 一応可能なようです)

★音源部

音楽関連の処理を担う部分です。 SCUからの16bitバスに継る音源チップSCSP (Sega Custom Sound Processor)と、 それにぶら下がる形で制御用の68000とサウンドバッファ0.5MBがあります。 SEGAのハードウェアの伝統により68000を音源制御専用のCPUとして用意したそうですが、 音源制御が68000を必要とする程重い処理とは思えません。 音楽が処理落ちしないとはいえ、専用のプログラムも組まねばならない事でしょう。 またSCSPが扱うデータはPCMなので0.5MBのサウンドバッファは非常に狭いものと思われます。

また、最大32音のPCM音源、最大8音のFM音源というのは 両方が載っているということではなく、 例えばPCM音源のうち4音を使って4オペレータのFM音源とすることもできるという意味で、 その気になれば両方を混在させることや、32オペレータのFM音源として使うことも出来る、 ということです。

★拡張部

SEGA SATURNの特徴でもある拡張スロットです。 非常に多くの端子数(67×2)があり、その配線は良く分かりません。 一見するとスロットの端子が左36、右31の間で分かれており、 意味有りげではあります。 想像ではSCUと16bitのバスで接続され(右側か?)、 パワーメモリなどが利用するのでしょう。 また将来登場するかも知れないグレートなアクセラレータの映像出力を VDP2に送るための24bitの単方向バスが接続されているように思えます。 これはムービーカードのフルカラー出力にも利用されると考えられ、 共に未接続であれば使用されないはずのバスです。 端子数から考えればまだ接続箇所があるかも知れません。

CDサブシステム

★CD-ROMドライブ制御部

CD-ROMドライブ、SH1、0.5MBのCDバッファ、ASICから構成されます。 CD-ROMドライブの制御やデータの読み出し、 バッファ管理をサブCPUであるSH1が与えられたコマンドに従って行ないます。 制御プログラムはSH1の内部ROMに格納され、 コマンド一つでインテリジェントな制御を行なえるのでしょう。 ただしチップ内のROMで動くのだとすると、SH1用のプログラムを書くことで、 例えばADPCMデータをPCMデータに変換して転送させるなどということは出来ないかもしれません。 CD-ROMドライブからのデータは内蔵DMAのチャネルから受けとり、 通常のバスでバッファに格納するように思われます。 バッファの0.5MBという容量はかなり大きく (Play Stationは32KB)データの先読みなどに威力を発揮することでしょう。 レイヤーセクションのローディングを感じさせない点はこの御蔭かも知れません。 メインシステムのSCUとのコマンドやデータのやりとりのためのASICは16bitのバスを有します。

★ムービーカード部

オプションで接続するMPEGデータを展開する部分です。 インタフェースとしてはCDバッファからデータを読み出すための16bitバスと フルカラーの画像を送り出す24bitの単方向バスがあるように思われます。 これらは共にASICに接続され、24bitのバスはそのままASICを通って拡張スロットのバスと合流し VDP2に直接入ります。 カードは1MBのデュアルポートのVRAMとMPEGデコーダ (Photo CDデコーダなどもあるそうです)、 及びROMから構成され、352×240のムービーならダブルバッファ方式で 秒間30コマで展開しつつ1/60秒毎にVDP2に送り出せるのでしょう。 704×480でフルカラーの場合1MBのVRAMをほぼ専有してしまうのでダブルバッファ構成を採れないため 静止画のみの表示となります。 また特殊機能としてムービーの画像の背景を透明化して VDP2でBGやスプライトと合成するといったことが可能です。 更にSCUを経由する場合は VDP1やVDP2のパターンメモリに転送することで ムービーの変形や拡大縮小といった効果も実現可能です。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.4 本体のバックアップRAMの容量は?

バックアップRAMの容量は32kバイトで、それを461個のブロックに分けています。 アクションゲームのハイスコアや、RPGのデータをセーブする分にはあまり困ることはありませんが、 シミュレーションゲームなどでは使用メモリ量が大きく1か所しかセーブできないことがあり、 また、複数のゲームを並行して遊んでいると足りなくなってしまうこともあるので、 別売りのパワーメモリを用意した方が良さそうです。 パワーメモリーの容量は本体のバックアップラムの16倍の512kバイトで、 それを約8000のブロックに分けています。

パワーメモリに保存したデータと本体内に保存したデータは、互いにコピーすることが可能ですから、 本体内のバックアップ容量が不足したときの事を考えると、できれば買っておいたほうが良いでしょう。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.5 サターン上部のスロットは何に使うの?

このスロットはROMカートリッジでゲームを供給する目的の他、 アドレスバスとデータバスに直結できる構造になっているので、 将来的にはこのスロットを使って様々な拡張をすることも出来ます。

また、CD-ROMとマスクROMを組み合わせて使う、 ツインアドバンスドROMシステム にも用いられます( -> Q4.5.1)

周辺機器としてはパワーメモリとモデムは このスロットに差しこむ形になっています。

アクションリプレイ等のセガ未公認の周辺機器にも このスロットを使用するものがありますね。


Q4.5.1 ツインアドバンスドROMシステムって何?

[表紙] [目次] [先頭]

Q4.5.1 ツインアドバンスドROMシステムって何?

サターンではROMカートリッジとCD-ROMを併用して、 例えば格闘ゲームの背景データや音声データをROMで供給して その分本体内のRAMに大量のキャラクタパターンを入れるような事が可能になっています。

セガはこのシステムを「ツインアドバンスドROMシステム」と呼んでおり、 SNKから発売されている「キングオブファイターズ'95」と、 バンダイから発売されている「ウルトラマン 光の巨人伝説」にこのシステムが用いられています。

今後発売予定のゲームでは、同じくSNKから発売される「サムライスピリッツ斬紅郎無双剣」 がツインアドバンスドROMシステムを採用する予定です。


[表紙] [目次] [先頭] [Q4.5]

Q4.6 サターンの性能を上げるボードって出るの?

将来的にはサターンの本体上部のスロットに差すような形の拡張ボードが出る可能性はありますが、 今の所その様な予定は発表されていません。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.7 サターン本体の横に冷却ファン用の穴みたいのがあるけど?

初期のサターン本体の左側面にある丸い穴は、冷却ファン用の穴です。 当初、サターンには冷却ファンが付く予定でしたが、 コストの問題や、冷却ファン無しでも支障がないと判断された等の理由で、 結局ファンは付かないことになりました。本体横の穴はその名残です。

ちなみに、Hiサターンや、現在売られているセガサターンやVサターンにはこの穴は付いていません。

新しいサターンではこれらの通気孔がなくなったとはいえ、 基板が小さくなったことなどからサターン本体の消費電力量が少なくなったのに伴い、 熱の発生が押さえられています。 また本体裏にはちゃんと通気孔がありますので、通常の使用で熱暴走するなどといった心配はいらないようです。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.8 サターンのクロックアップはできますか?

可能です。 ただし、ドットクロックにまで影響を及ぼすためにビデオモニタ(15kHz)では映らなくなりますので、 24kHzのモニタが必要になります。 一般に流通している24kHz対応モニタはRGB入力のためRGBケーブルが、 場合によっては更に同期信号の分離回路が必要です。

方法はメイン基盤に取り付けられている14.318MHzのクリスタルオシレータを もっと高い周波数のものに取り替えるだけです。 後述の本では16MHzに交換していました。交換後は放熱に注意して下さい。

詳しくは三才ブックス発行の「ゲームラボ '95 6月号」を参照して下さい。

さらに、力技としてCPUをSH2の上位チップであるSH3に換装するという手段がある(SH2とSH3は命令セット互換)そうです。 ただし、コストなどを考えるとあまり現実的ではありませんね(^^;

もちろん、一度改造を加えてしまったらセガの保証はきかなくなってしまいます。 もし改造を行うとしても、個人の責任において行ってください。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.9 サターンから VGA モニタ対応の RGB 信号が出せるって聞いたけど?

サターンのスペック上は最大 720x576 ドットの解像度をもち、 ハードウェア的には VGA および Hi-Vision の信号を出すことが可能になっています。 しかし、ソフトが VGA 出力に対応している必要があり、現在の所対応ソフトはありません。 将来インターネットに接続し、マルチメディア端末として利用する際に用いられるのではないか、と言われています。

ちなみに、一般のゲーム等を VGA モニタに映すことは、 電波新聞社等から発売されている XRGB-1 などの 15.75kHz -> 31.5kHz のスキャンコンバータを利用すれば可能です。


[表紙] [目次] [先頭]

Q4.10 買った時期によって本体のバージョンが違うみたいだけど、何が違うの?

サターンは発売されてからも、コストダウン等のために様々な変更が加えられています。 たとえば、最初は内部がメイン基板とCD制御部の2枚に分かれていましたが、 その後高集積化や基板の再設計により、現在生産されているサターンでは基板が1枚になっています。

その他にも本体左側面の冷却ファン用の穴が新しいバージョンでは無くなっていたり、 本体上面のパワーランプとアクセスランプの形状が変わっていたりなど、 細かい変更点が至る所にあります。 このような涙ぐましいコストダウンのための努力のおかげで、2万円サターンが実現されたわけですね。

2万円の新型サターン、通称白サターンは過去の灰色のサターンと比べると、

などの変更点がありますが、機能的にはこれまでのサターンとまったく同じものですから、 過去のソフトが遊べないようなことはありません。

なお、さらにCPUのSH2*2個を1つのパッケージにまとめたチップを開発するなど、 コストダウンの努力はまだ続いているようです。

また、起動時の画面で左下に出ているバージョン表示の違いですが、 これは BIOS(IPL ROM)のバージョンと思われます。 恐らく、目立たないバグをこっそりと直したりしたのでしょう(^^;


[表紙] [目次] [先頭]