抱きしめられて眠る。そんなことあるわけないと、諦めていた。
瞼を開けば、目の前にあるのは刺青のあるローの胸。はじめの頃は恥ずかしくて、すぐに背中を向けていたけれど、それに気づいてから、彼はを腕の中に囲うようになった。
今も違わず、ローの両腕に囲われたまま、は額をその温かい胸へ押し付ける。
「起きたか。……まだ朝早いから寝てろ」
「ん」
あまり眠くはないが、この腕の中が心地よく離れたくないから、は小さく頷く。
『次に着く島でお前の服と本を買いに行く。人が多い島だから、俺と2人の時は絶対に名前で呼べ』
『絶対に?』
『あぁ。船に乗っている間も出来るだけ名前で呼べ。呼び捨てでいい。その方が自然と出るようになるだろうしな』
『キャプテン、じゃダメなんですか?』
『ダメだ、自分をオレと言うのもやめておけ。賞金首のだとわからないようにする』
『つまり、オレを女に変身させる、と?』
『お前は元から女だろ』
『いや、それはそうなんですけど』
そんな会話を、この島に着く前日にしたことを思い出す。
「今日はどうするんです?」
ローにひっついたままの状態を維持したまま、は問いかける。目を閉じたままの問いかけに、彼は緩やかに彼女の髪を撫でた。
「明日の昼には出航だ、普通に食材の買い出しだな」
「あの格好で?」
「不満か?」
「自分の船に、自分の『女』が乗ってるって見せびらかせていいんですか? ――今更ですけど」
の言葉に、ローは「本当に今更だ」と笑う。
「と同一人物だとわからなきゃいい。……俺はわかってもいいが、お前が困るだろ。それに、お前を心配する輩がこれ以上増えても困る」
――心配する輩?
意味がわからず顔をあげると、ローは呆れたようにため息を一つついた。
「お前が女だとわかれば、手のひら返すヤツがいるだろうが」
「あぁ……確かに」
サンジは女性に優しい。確かに、彼にバレれば事は大げさになるかもしれない。
「それは面倒ですね」
「鬱陶しいから、アイツにだけは知られるなよ」
心底嫌そうなローの声に、はふふ、と笑って。
「やっぱり、食材の買い出しはいつも通りがいいです。なんか、調子が狂っちゃいそうで。それに、万が一、麦わら海賊団に遭遇なんてしちゃったら、目も当てられないですよ」
「あー……それもそうか」
ナミはこの船がどこにいるのか知っている。そして、彼女が『面白そう』と判断して、方向が一緒であったなら、ルフィをこの島へ誘導しかねない。
「仕方ねぇな、買い出しだけは許してやる」
「その間、キャプテンはどうします?」
「決まってるだろ、お前についていく」
「過保護が過ぎますよ」
は苦い口調で言いつつも、その表情は穏やかだった。
腰に閃雷を携えて、は食材のある商店街を歩いている。隣には当然、ローの姿。長い刀を右手に持って、左手はポケットに。
何を喋るでもなく、無言のままは食材を見て回る。その後ろにローは控えているだけだ。それでも、その沈黙が怖いとは思わなかった。
珍しい食材があると言って引き留める店主を軽く会話することで避け、あの店では買い物するのをやめようと思いつつ、その先を目指す。
とりあえずの目的は肉類で、男がほどんどの海賊団は、質より量が必要だ。精肉店へ入ると、船の冷蔵庫や食糧庫にある量を思い出しつつ、あれこれと購入する。お金は、船長であるローから受け取ったもので、その受け取った金額内でやりくりする。
「兄ちゃん、いい目をしてるね!」
一般人に交じってあれこれと購入して支払いをしていると、会計を受け持った店主からそんな声がかかった。
「そう言って貰えると自信がつくよ、ありがとう」
支払いをしつつそう答えれば、店主はにやりと笑った。
「海賊船のコックにゃもったいない」
「キャプテンに聞こえたらそっちが困るんじゃないのか?」
小さく問えば、店主は表情を変えずに言った。
「そんなことを気にしちゃ、店なんかやってられねぇよ。……というのは建前で、あの人は前からこの島に寄ったときは買ってくれてるからな、大丈夫だと知ってるんだ」
なるほど、とは胸中で呟く。何度か足を運んだことのある島だからこそ、今回のような『目立つこと』をしようと思ったのだろう。
ちらりとローを見やれば、彼は何とはなしに道行く人を眺めているようだ。
会計を済ませると、は両手に荷物を持ってローの隣に立った。
「お待たせしました、帰りましょう」
そう言った彼女へ視線を向け見下ろすと、その片手から荷物を奪い取る。
今日は荷物がそれほど多くないから、能力は使わず、そのまま帰船するようだ。
ローはに背中を向け、船に向かって歩き出した。
船に戻り冷蔵庫や貯蔵庫に食材を入れると、ローと約束したとおり、昨日彼が買った服を手に取る。昨日はニットのミニ丈のワンピースにロングブーツだったが、今日は袖がシースルーになっている白いブラウスとデニムのショートパンツ、ストッキングをはいている。当然これも、ローからの指示だ。
ウイッグをつけてメイクを施す。メイクの仕方は、女性船員に教えてもらった。
「……どう、ですか」
こんな露出の多い服は恥ずかしいと思ったその気持ちが、ローに問いかける口調に表れてしまう。
ローは無言で下から上へと視線を流したあと、ジーンズのポケットから無造作に取り出したものをの左の薬指に押し込んだ。
「えっ!?」
何の飾りもないシルバーリング。
――よりにもよって何故に左の薬指!?
説明もないまま押し込まれたそれを眺めて、はローの意図が読めなくて困る。
「そのまましてろ」
「説明ぐらいしてくださいよ!」
「今日は外すなよ」
何も説明しないローに、追求するのを諦める。
「コレも一応、作戦のうちなんですね?」
「そうだ」
――ここまで徹底する必要はあるのだろうか。
隣を歩くを見下ろし、ローは目を細める。
理由を言わずに押し付けたシルバーリングは、宝石一つついていない、海賊からすれば何の魅力もないものだ。だからこそ、に持たせるにはちょうどいいと、彼は胸中で呟く。
物欲のないにロー本位の指輪を渡せば、それは突き返されていただろう。そうされないための、安物。
自分のものだとわかるように、いつもならば耳にピアスがある。けれど、今は変装の身、自分のものだと行動で示すほかない。一人にするつもりはないが、それでも何があるかわからない。左の薬指に指輪があれば、とりあえず、余計な虫はつかないはずだ。寄ってきたとしても、が対処するに、十分なアイテムになる。
……というのは、建前でもある。
ローは自分のものだと主張したい。自分の女であると、知らしめたい。素顔のはもっと可愛く、男であると認識されているのが不思議なくらいではあるが、外に出るときはうまく表情を使いわけているらしい。
惚れた欲目かと思うが、それでも、ローにとっては大切な存在だ。
大通りを一本入ったその細道の先に、今日の酒場はあった。昨夜の店は大通り沿いにあり、前から海賊を招き入れては、女性に客を取らせることをしていたらしい。小さな海賊団だとそれで機嫌を取るのは十分だったようで、今までそれで儲けていたようだ。
今夜の店は隠れ家のような場所。外観だけ見れば朽ちているのではないかと思わせるものだが、室内は綺麗に整頓され、そして何より、既にいた仲間たちは、店主らしき人物と話をしながら笑いあっていた。
「やあ、船長さん」
店主はローのことをそう言って、名前を呼ぶことはしなかった。店の入り口の扉には貸し切りの文字があり、本日閉店との文字があった。
「呑んでいいぞ」
カウンターに座ったローは、隣に座らせたに言った。
「いいんですか? この恰好ですよ?」
「そのかわり、俺のそばから離れるなよ」
貸し切りにしているからだろうか、ローは店主に向かって注文している。
昨夜の店との待遇の違いをが考えていると、ローはそれがわかったのか、の前にグラスを置きながら言った。
「昨日の店でああいうことが起こるのは想定内だった」
「予想済みってことですか。だったら、そうならないようにすべきだったんじゃ……」
「あぁ、それはね、僕が頼んでいたんだ。あの店には困っていたんだ。だから、船長さんに頼んで懲らしめてもらったのさ」
カウンターから声が聞こえてそちらへ視線を向けると、店主がローの前にグラスを置くところだった。
「それにしても、よく覚えていたね、船長さん」
ローは眉を寄せただけで答えない。は店主とローを交互に見やった。
――なんだか仲が良さそうだけど……。
少し小首を傾げてローを見やると、横目でを見ていた彼の視線とぶつかった。質問をしたら答えてくれるだろうかと、が少しだけ口を開いたとき、その隙間にローの指に摘まれたチーズが押し込まれた。
「ん!?」
びっくりして落ちそうになったチーズを慌てて手に取ると、はそれを仕方なくきちんと口の中に入れて咀嚼する。
食べ物を粗末にするのが嫌いな彼女が、きっとこうするのは予想していたのだろう。
――答えたくないっていう意思表示? ……無理に聞き出す必要はないけど、気になる。
ゆっくりと咀嚼して飲み込んだそれは、クセのないあっさりしたものだった。
いつの間にか目の前にあるチーズの乗った皿を見やり、小さく息を吐くとそれを手に取った。
船の中で生活するため、食べる速度は随分と早くなったが、ゆっくり食べられるときはそうするようにしている。
はグラスを両手で持つと、そっと口をつけた。強めの炭酸が、アルコールを感じさせない。炭酸の泡がのぼっていくのを眺めていると、目の前に皿が置かれた。
「じゃがいものパイユと、ブロッコリーとゆで卵のサラダだよ」
「ありがとうございます」
グラスを置くと、フォークを手に取った。仲間たちのところにあるパイユは大きく、みんな噛り付いている。とローの前にあるものは、一口サイズになっていた。
さっくりとした歯ざわりに溶けて少し焦げたチーズが美味しい。ゆっくりと咀嚼して飲み込んだところに、声がかかる。
「可愛いね」
店主はそう言ってにっこり笑う。
金色の髪は後ろ髪が背中まであって、無造作にくくられている。手は大きく、指は細い。年齢はローと同じくらいだろうか。
「そうですか?」
「うん、船長さんの趣味が出てるよね、その服」
「え?」
「うん? あぁ、そっか」
店主はにっこり笑顔のまま、さらりと言った。
「その服、触り放題でしょ? 船長さんはムッツリさんだから、撫でまわしたいんじゃないかなって」
――ムッツリさんと言うよりかは、いつもは表に出さないようにしているだけなのでは……。ん? それってムッツリスケベってことかも……?
「余計なことを言うな」
不機嫌な声音で言ったローは、声と同じで、纏う雰囲気も不機嫌だ。
「突っこまれるのがわかってるのに着せる、船長さんが悪いんでしょ」
「五月蠅い」
「君も大変だね、独占欲の強い男に好かれると」
――独占欲?
店主はを見やってから、次にローへと視線を移す。
「船長さんも大変だ」
何が、と言われなくてもわかってしまう自分に、ローは嘆息する。
に自分の思いは通じている。それはわかっているが、どれほど深く愛情を持っているか、それを彼女は理解していない。独占欲を表に出して、まわりを威嚇するほどには余裕がないのが実情だ。
「……わかったなら言うな」
「はいはい、そうするよ。昨夜のこともあるしね、これ以上の詮索はしないよ」
――なんだかんだ文句を言いつつ、無視をしないのは仲がいいからかな?
知らない人間が同じように言ってきたら、さすがのローも怒るだろうと思う。
グラスに口をつけながら、そんなことを思う。
仲間の方へと視線を向けると、みんな笑顔だ。
仲間になった当初、この笑顔の中に自分がいることが信じられなかった。素性を隠している自分が、にっこりと笑えるわけがない。
笑うことも泣く事も、当然、寝ることも出来ずに。更に、ONLY ALIVEの手配書付き。お荷物にしかならないだろう自分を、ローは気に入ったからだと仲間にした。
赤髪のシャンクスは、に護身術と、ナイフと銃の使い方を教えた。そして、見聞色の覇気の使い方を教えた。コントロールするのは難しく、左目の力と一緒に、闇に葬ってしまいたかった。
好きなものを好きだと主張できなくなり、次第に、人前では喋らなくなった。自分以外のものが信用できなくなり、やがて、笑うことも、泣くことも出来なくなった。
はつらつらと今までのことを思い起こしながら、グラスに口をつける。アルコールの熱を喉の奥で感じる。
ずっと泣きたかったのだと気づいたのは、ローに泣かされたときで、自分の気持ちにすら、蓋をしていたのだ。泣いて、泣いて。髪を撫でられ抱きしめられて、今のままでいいのだと肯定されて、更に泣いた。
「ちゃんと食えよ」
飲み物ばかり喉に入れていたのを見ていたのか、ローがちらりとへと視線を向けて言う。
彼女はそれに頷いて、サラダを食べる。
――粒マスタードとマヨネーズ、かな。
「余計なことは考えるな。おまえは俺についてくればいいんだ」
ローは手を伸ばしての髪を撫でる。
「へーえ。ふーん」
店主はそう言って、何か言いたげな顔をする。それを見た彼は、ふい、と顔を背けてグラスを煽った。
「こんなキャラだったっけ? 船長さん」
鋭い視線を投げたローはチッ、と小さな舌打ちをした。
「おまえは余計なことばかりを言う」
「僕が言うのわかってるのに連れてきたのは君でしょ? それに、君がメロメロになってる姿を見せてくれて嬉しいんだよ、これでもね」
「め……メロメロ?」
思わず呟いてがローを見れば、彼は明後日の方を向いて、こちらを向こうとはしない。
「僕はね、北の海出身で小さいころはローとよく喧嘩したよ。酒場を経営しはじめてから、時々様子を見に来てくれるんだ。それに、僕は病気で少しだけ手足に麻痺が残っててね、それを診てくれてる」
「へぇ……、ちゃんと医者もしてるんですね」
――海賊で、億越えの賞金首で、死の外科医なんて言われているのに。
「余計なことは考えるなって言っただろうが」
長い指でローにデコピンを食らったは、額をおさえてふくれっ面をする。
「あははっ、いいね。さっきも言ったけど、可愛い。船長さんには勿体ない。どう? 僕もそこそこお買い得だよ?」
その言葉に、はそっと首を振って俯く。
羨ましい、と思う。
子供の自分を知る人は、赤髪海賊団以外、この世にいないかもしれない。
ローの過去を端的に聞いたけれど、それでもこうやって再会する機会がある。だからこそ、彼も、この店主に会いに来るのだろう。
『泣いていいんだ。俺に巻き込まれて、俺に強引に連れてこられたって、詰っていいんだぞ?』
本の内容を急に思い出して、目を開けた。このまま目を閉じていたら、その場面を鮮明に思い出して、泣いてしまいそうだ。
何を見るともなく視線を彷徨わせていると、小さく息を吐いてローが腰をあげた。
「裏の部屋を使っていいよ」
「悪いな」
店主とローの会話が理解できなくて、すぐそばで立つ彼を無言で見上げると、ふわりと体が浮いた。
「え? あ? やだっ! おろしてください!!」
「俺がいいと言うまで口を開くな」
「…………ッ!」
――気づいたのかな、オレが泣いてしまいそうなこと。
唇を噛み締めて、は固く目を閉じる。
担ぎ上げた彼女をそのままに、店内から裏の調理室へ抜け、迷いなくその先にある扉を開いた。
扉を閉めた音がして目を開けると、ローはソファに腰をおろしたところだった。
ソファに腰を下ろしたローの体の上に自分が乗っている状況に、どうしていいのかわからず、口を開くなと言われたために問いかけることもできずに困惑する。
「おまえは色々と考えすぎだ」
大きな手が彼女の頭にのびて、緩い力で引き寄せる。抱き寄せられるがまま、も体を寄せる。
「色々と考えすぎて、簡単なことを忘れる。――お前を船に乗せたのは俺だ。八つ当たりでもなんでもいい、俺を詰って泣いて怒ればいい」
ローの首に縋りついて、彼女は何度も首を横に振る。
――ただ、羨ましいと思っただけだ。ローには何の罪もない。……羨ましいと、泣きたくなるのはどうしてだろう?
唇を噛んだままは縋りつく力を強めるが、ローが少し力をこめて両手で体を離すと、抵抗せずに離れた。俯いたままのの頬に両手をあてて自分と真正面に見るようにあげさせると、彼女の鼻先が少し赤くなっていた。
「こんなに泣き虫で、よく俺に会うまで泣かずにいられたな。……?」
眉をぎゅっと寄せたまま、は彼から視線をはずす。
無言のままの彼女の行動に、ローは「あぁ、さっき口を開くなって言ったな」と苦く呟く。
「声に出して泣いてくれ。――黙って心の内に溜め込んだりしないでくれ」
――せめて、俺の前では。
ローの願いが届いたのか、彼女は瞳から涙をこぼす。
「ローは、ずっと傍にいてくれますか」
「それは俺のセリフだ。――俺の傍にいてくれ。結婚なんて大げさなことをすりゃ海軍が黙っちゃいないから今はしないが……危険を冒してでも、お前を俺に縛り付けたい」
涙をこぼす瞳が大きく見開かれて。
「――はい」
ぎゅ、と抱き着いたの背をゆったりとローが撫でていると、次第にその力が解け始める。
「……眠ったか……」
かちゃり、と小さな音と共に、店主が顔を覗かせる。
「眠った……みたいだね」
「あぁ」
店主の声は小さく、それに応えるローもまた、小さく返答する。
「船員のみんなも、部屋に行ったよ。ウチに泊まる予定にしててよかったね」
「あぁ……、そうだな」
「この娘が、あの手配書の?」
「……そうだ。父親を海賊に殺され、海軍が島民を海賊の餌にして島一つを壊滅させた。赤髪にそこから助けられてから、ずっと逃げ続けていた」
店主は眠る彼女を見て、そっと息を吐く。
「こいつはいまだ、俺の前でしか泣かない。――悪夢はまだ、続いている。あぁ、それ以上近づくなよ? せっかく眠ったのに、お前の気配で起きてしまう」
「そんなに?」
「あぁ。俺とお前が大声で喋っても起きねぇが、お前が近づくと起きる」
「難儀だねぇ」
店主は両肩をすくめる。
「そうやってると、恋人っていうより、親子だな」
「親子だったらこんな格好させねぇ」
「あはは、確かにね。僕だって大好きな奥さんじゃなきゃ、こんなエロい格好させないよ。それに、ローがこんなに甘くなるのも、彼女限定でしょ?」
「………あぁ」
「この部屋はそのまま使っていいよ。僕は上の部屋で寝るから」
「悪いな」
「構わないよ。困ったことがあったら言って。……子供ができちゃったら、匿ってあげるから連れておいで。医者なんだから、そんなヘマはしないと思うけど」
ひらりと手を振ると、店主は部屋を出ていった。
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