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夜明けのロボット(上下)/I.アシモフ

The Robots of Dawn/I.Asimov

1983年発表 小尾芙佐訳 ハヤカワ文庫SF1063,1064(早川書房)

 “ロボット殺し”の真相は、ロボットではあり得ない(と考えられる)特殊な機能によるもので、若干アンフェア気味に感じられないこともないのですが、何といってもかつてアシモフ自身がテレパシー能力を持ったロボットの物語を書いているわけですし、作中でもそれがファストルフ博士の口から紹介されている*ので、一応はフェアといわざるを得ないのではないでしょうか。いずれにせよ、ファストルフ博士の構想する“心理歴史学”(→『ファウンデーション』などとともに単なるファンサービスかとも思えたスーザン・キャルヴィンのエピソードが、真相へとつながる伏線となっているところが非常に巧妙です。

 “彼がまっさきにあそこにやってきた”(259頁)という手がかりは面白いと思いますし、注意深く読めばジスカルドの行動の裏にテレパシー能力が存在する可能性を見出すのは不可能ではないでしょう。また一方で、ベイリが何度も真相の近くまで迫りながらなかなかたどり着けないという、見方によってはあざといともいえる展開に対しても、合理的な説明が準備されているのがよくできていると思います。

 真相が公にされることなく、ベイリが用意したダミーの真相によって事件が表面的に決着するという展開は、前作『はだかの太陽』と同様ではありますが、本書のそれはなかなか絶妙な落としどころというか、前作よりも遥かにうまい決着となっています。ファストルフ博士以外に容疑者がいない以上、(著しく確率の低い)予期せぬ事故という形に持っていかざるを得ないのはもちろんですが、アマディロ博士の企みと結びつけることでその“真相”の説得力を高めつつ、ファストルフ博士の(ひいては地球にとっての)政敵を葬り去るという一石二鳥の幕引きが実に鮮やかです。

*: もっとも、本書ではファストルフ博士はあくまでも“伝説”として語っているわけですが、「うそつき」で描かれたエピソードがアシモフの未来史における事実の一つ(と考えるべき)であることは明らかでしょう。

2006.11.03 / 11.05再読了

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