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密室への招待/E.D.ホック

Hoch's Locked Room/E.D.Hoch

1981年発表 木村二郎訳 ハヤカワ・ミステリ1378(早川書房)

 ネタバレなしの感想と同様、サム・ホーソーン博士ものについては割愛します。

「不可能な“不可能犯罪”」
 状況から考えて、チャーリーの自爆という真相は見当がついてしまうと思います。が、彼がそのような回りくどい手段をとった理由が秀逸です。

「レオポルド警部の密室」
 密室トリック自体はシンプルな犯行時刻の錯誤によるものですが、この作品のポイントはあくまでも、レオポルド警部に罪を着せるためという『ユダの窓』的な目的(密室の使い方)にあるといえるでしょう。その意味で、拳銃のすり替えというトリックが密室トリック以上に効果的であると思います。

「人間消失」
 消失トリックは“見えない人”の応用ですが、残念ながら見え見えです。そして、それが見えてしまうと全体の構図も予想できてしまうのが辛いところ。

「壁を通り抜けたスパイ」
 放射性スプレーとガイガー・カウンターという、一見万全と思える対策の裏をかいて、堂々と書類を持ち出すトリックが見事です。また、最後の二段オチも印象的です。

「過去のない男」
 トリックはいわゆる“早業殺人”そのままで、何のひねりもありません。

「魔法使いの日」
 砂嵐で姿が見えない状況でのリマの声と、砂嵐が止んだ後の変装によって、鮮やかな消失を演出しているところはうまいと思います。しかし、リマがわざわざウィザードに変装したのは、説得力を欠いた不自然な行動といわざるを得ないでしょう。

「メデューサ殺し」
 中途半端な位置に置かれた凶器というトリックがよくできています。また、密室目的ではなくアリバイ目的だったという真相には納得させられます。

「魔法の弾丸」
 凶器の侵入と被害者自身による閉鎖というシンプルな原理がうまく組み合わされ、鮮やかな状況を生みだしています。

2004.01.14読了

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