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ホッグ連続殺人/W.L.デアンドリア

The HOG Murders/W.L.DeAndrea

1979年発表 真崎義博訳 ハヤカワ文庫HM76-1(早川書房)

 “HOG”事件の真相は、A.クリスティの某作品にも通じるような、本命の殺人をカムフラージュするというものでしたが、“HOG”が実際には連続殺人犯ではない、つまり殺人事件とも見える犠牲者たちの死に方自体がミッシング・リンクとなっている点が非常にユニークです。

 ただ、殺人にしては特殊な状況が多いため、核心部分がわかりやすくなってしまっているのが残念です。例えば最初の車の事故などは、未必の故意とはいえあまりにも偶然に頼りすぎですし、デイヴィ・リードの事件ではつららというあまりにも特殊な凶器で、しかも首を切り裂くという不自然な犯行になってしまうわけで、殺人ではなく単なる事故であるという可能性が頭に浮かんでしまうのもやむを得ないところでしょう。

 事件をセンセーショナルなものに仕立て上げる必要があったとはいえ、もう少し“HOGの犯行”を減らした方がよかったのではないかと思います。


 中盤、“HOG”の署名の意味に関して様々な仮説が展開されていますが、ラストの“HOG”=“神の手(Hand Of God)”という説明は、美しいだけでなく十分な説得力も備えた見事なものです。そして、“神の手”という妄執に取り憑かれてしまったビューアルの運命が、何ともいえない余韻を残しています。


 ところで、テリー・ウィルバーが山小屋に潜んでいるということを、ベイネデイッティ教授はどうやって知ったのでしょうか? 特に説明はなかったように思いますが。

2001.03.13読了

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