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七人の鬼ごっこ/三津田信三

2011年発表 (光文社)

 “だるまさんがころんだ”がクローズアップされていくことで、自然に関係者=容疑者が限定されてしまうのがうまいところで、ただでさえ関係の薄そうな真犯人が完全に“枠外”へ追いやられています。速水晃一の推理によって“枠内”の容疑者がすべて“消去”された後、読者が想定していない“枠外”から取り出される真犯人は、意外性十分といえるでしょう。

 真犯人と“だるまさんがころんだ”との隠されたつながり*1としての、“ヨシコの母親”という真相――それ自体は納得しやすいものですが、その根拠とされているのが“だれまさんがころした”の歌声であり、つまりは怪異が手がかりとなっているという豪腕がものすごいところ。もちろん根拠はそれだけではないのですが、刀城言耶ばりの“迷走推理”の末にこれを持ってくることで説得力を高めつつ、インパクトを生み出しているのが巧妙です。

 沼田八重が命を落とし、事件の原因を作った円覚警部が生き残るというのもさることながら、「終章」で語られるその後の顛末が輪を掛けて(心情的に)釈然としないものになっており、三津田作品の結末としては異色の味わい*2といえますが、それを吹き飛ばすような最後の一文が秀逸。そこに記された“母子二人に対する鎮魂の書であると同時に、ひとりの殺人者に対する告発の書”(394頁)が、“主人公・速水晃一が『七人の鬼ごっこ』を書こうとしている”という(三津田信三らしい)メタ趣向と組み合わされて、本書『七人の鬼ごっこ』に新たな意味をもたらしているといえるでしょう。

*1: 一般的な意味とは違いますが、“ミッシング・リンク探し”の一種といっていいのかもしれません。
*2: 『十三の呪』に始まる〈死相学探偵シリーズ〉には多少近いところがありますが、そちらは続刊が予定されるシリーズであるがゆえのものと考えられます。

2011.04.16読了