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髑髏島の惨劇/M.スレイド

Ripper/M.Slade

1994年発表 夏来健次訳 文春文庫ス8-1(文藝春秋)

 残念ながら、最後のオチはさほど意外に感じられませんでした。なぜならば、他に容疑者がいないからです。

 チャンドラーの視点だけならばいざしらず、孤島のパートと本土のパートのすべてを考え合わせると、犯人が〈スカル〉と〈クロスボーンズ〉(アンガス・クレイグ三世とサムソン・コイ)の二人組であるということになります。そしてまた、528頁〜531頁の記述からコイが〈スカルボーンズ〉であり、また車椅子に乗っていることからクァークであることがわかります。一方、もう一人の犯人が参加者たちの中にいることは、ロイサード殺害がクァークには不可能だったことから明らかです。

 そうなると、キャットがさらわれた時点で、それを追いかけるチャンドラーとメルバーンを除けば、死体が確認されていない男性の参加者はクァークとホーリオーク(一応)のみ。そして、年齢の問題でホーリオークはクレイグではあり得ないのですから、キャットをさらったのはクァークしかいないということになります。

  “ちゃんと自分の脚で立ちなさい”(584頁)というのはやや微妙ですが、“〈王〉とは彼の第二の自我だった”(653頁)“コイのほうは、クレイグと出会う前からすでに人格分裂にみまわれていた”(660頁)といった伏線は露骨ですし、 “おまえは心身症だ”(529頁)という台詞の意味も考えてみると、真相を見抜くのはさほど難しいことではないのではないでしょうか。

 なお、作中にも記述されているように、エルヴァイラ・フランクレンは『ヘッドハンター』に続いての再登場です。『ヘッドハンター』を既読の方のみこちらをご覧下さい。

2004.08.19読了
おまけ:フクロウに関心を持った方へ
・ニシアメリカフクロウ(Strix occidentalis caurina)→こちらこちら
・オウル・ペリットの例(画質はよくないですが)→こちら

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