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継ぐのは誰か?/小松左京

1970年発表 角川文庫 緑308-13(角川書店)

 「継ぐのは誰か?」という題名や、殺人予告を送る手段、そしてデータの消去などから、人類に代わる人工知能というSFではありがちなテーマではないかと考えていたのですが、すっかり騙されてしまいました。

 ちなみに、ネタバレなしの感想で“ミステリとしての弱点を抱えたSFミステリ”と書きましたが、要はミステリとしてはアンフェアではないか、ということです。
 L.ニーヴン『不完全な死体』の巻末に付されたあとがき「決定版SF探偵論」では、“すべてのルールが珍奇なものであるとしたら、読者はいったいどのようにして著者の先を読むのだろうか? SFがもしいかなる限界も認めないとしたら、そうしたら……”と指摘されていますが、SFの場合は“現実”という暗黙のうちに了解されている“限界”が存在しないため、意識的に“限界”を設定し、それを読者に対して明示しない限り、ミステリとしてのフェアプレイという条件を満たすことができなくなってしまう傾向があるといえます。
 本書の場合、“電波を情報として使う生命体”が誕生する可能性はかろうじて示唆されているといってもいいかもしれませんが(62頁あたり)、これはあくまでも方向性が示されているにすぎず、“限界”が設けられていないために、ミステリとしてアンフェアになっているように感じられます。

2004.10.04読了

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