チョウたちの時間/山田正紀
1979年発表 角川文庫 緑446-7(角川書店)
ストーリーの流れからみて、ボーアとハイゼンベルクの会談は重要なエピソードとなっていますが、会談の行われた場所についての二人の主張の食い違い(ボーアは研究室の自室と、ハイゼンベルクは暗い路上だと主張した)を、歴史のぶれ、すなわち時間を修正する任務の失敗に絡めてあるところは、実にうまいと思います。
“遺伝子は“時間粒子”によって賦活され、“空間化”する物質”
(角川文庫版257頁)という表現にはうならされました。が、個人的にはこのあたりはもっとじっくり書いてほしかったと思います。