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ふしぎの国の犯罪者たち/山田正紀

1980年発表 文春文庫284-4(文芸春秋)
「襲撃」
 奇術のミスディレクションの原理を応用した計画は、見事なものです。しかし、“兎さん”の子供を巻き込んでしまったことは、心情的にやや納得がいきません。犯罪をゲームと割り切って個人の責任で実行するのはかまわないかもしれませんが、子供をだまして参加させるのはいきすぎでしょう。

「誘拐」
 身代金受け渡しの最初から最後までフェイクだったという真相には、感心させられました。

「博打」
 前半の“帽子屋さん”が水野と握手をする場面が、こういう形で生かされるとは思ってもみませんでした。

「逆転」
 例によって計画は見事ですが、最後に明かされる真相は、あまりにも苦いものです。すべての真相を知らないまま死んでしまった“眠りくん”はまだ幸せだったのかもしれません。遊びが終わっても、帰る場所がないまま一人とり残されてしまった“兎さん”の孤独は、はかり知れません。
2000.09.28再読了