幻象機械/山田正紀
1986年発表 中公文庫 や24-1(中央公論社)
日本人の脳の情報処理の特殊性自体、非常にユニークだと思いますが、それを人為的なものとした大胆なアイデアは秀逸です。さらに、それを補強する装置としての石川啄木という存在に至っては脱帽です。
終盤、谷口にとって悪夢のような世界が描かれていますが、世界自体が変容したのではなく、谷口の認識が変化した結果であるところがユニークです。そして、このゲシュタルト崩壊のような認識の変化が緻密に描かれているため、谷口の感じる違和感、そして嫌悪が、迫力をもって伝わってきます。
啄木と同じような運命をたどらされることを知ってしまった谷口の絶望は、察するに余りあるものですが、逆に、絶望してしまったために同じ運命をたどらざるを得ないようにも思われます。
2000.09.22再読了