50億ドルの遺産/山田正紀
1979年発表 徳間文庫 210-7(徳間書店)
エピローグで明らかにされる陰謀の本当の真相は、手玉にとったつもりが実は手玉にとられていたというもので、兵器商人の恐ろしさを感じさせるものです。いつかジョワン党首や継村総裁が真相を察する日が訪れるのかもしれませんが、その時にはすでに手遅れとなっていることでしょう。山田正紀らしく(?)暗澹たる運命を暗示しています。
ラストについて。
マザーグースの“日曜日に結婚”という一節をぎりぎりまで明らかにせず、終章でアジス大佐に命を狙われながら、辛くも危険を逃れた二人の姿を描いて読者を安心させておき、最後にオチをつけるひねった手法はうまいと思います。が、どうしても後味の悪さを感じてしまいます。山田正紀らしいといえばそれまでですが、やや残念ではあります。