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ジュークボックス/山田正紀

1990年発表 (徳間書店)

 この作品は単なる連作短編ではなく、ある種のミステリのような仕掛けが施されています。

 まず、「小さい悪魔」のラストで物語が“針飛び”を起こし、冒頭の、アキラだけが死んで戻ってくるという謎めいた場面につながるところは、なかなかトリッキーで面白いと思います。アキラのジャンクに情報が残されていたことには、よく考えるとおかしなところがあるようにも思えますし、そもそも“ランガーの秘密に触れたために時間を戻された”というのも強引ではありますが、何となく納得させられてしまいます。

 また、「星へのきざはし」で明らかにされた、語り手=“トランスレーター”という構造には、ミステリにおける叙述トリックのような面白さが感じられます。“トランスレーター”が突然登場することによって、それまで並行して別々に語られていた“現実”の物語と“太陽系融合惑星”の物語とをつなぎ合わせる新たな視点が出現し、メタフィクション的な要素が導入されることで世界観に広がりが出ています。

 また、「電話でキッス」から「小さい悪魔」までのエピソードが、いずれもジャンクのメモリ・コアに残された記録だったことが明らかになり、ジュークボックスのメタファーが補強されているところもよくできているといえるでしょう。

 しかしながら、全体を眺めてみると、「カレンダー・ガール」が浮いているのが気になります。もちろん舞台設定が特殊なものであることもありますが、最大の問題は、このエピソードのラストでユリが戦死してしまっていることです。これでは、前述の仕掛けと矛盾が生じることになってしまいます。他の部分がよくできているだけに、この点が非常に残念です。

2000.10.28再読了