見えない風景/山田正紀
1994年発表 (出版芸術社)
- 「新築一年改築三回」
- 事件が一段落した後、路上探偵の解決で反転する構図が鮮やかです。実際には、駒木と恭助を対決させるときに、改築の真相がばれてしまいそうな気もしますが。
- 「脅迫者はバットマン」
- 助けるための脅迫状という真相がユニークです。が、ガス・ストーブのトリックがよくわかりません。不完全燃焼を起こして一酸化炭素が発生するのはわかりますが、途中で発生しなくなるものでしょうか?
最後のオチ(バットマンのレターセット)は今ひとつ、というところです。
- 「二十六日のイブ」
- 車で家まで送ってもらうために大量のケーキを買ったという真相は、かなり意表を突いたものです。本来無理がある真相ですが、タクシー会社絡みの背任とやくざの見張りという設定で、うまく説得力が出ています。
一つ気になるのは、二十四日ならともかく二十五日の夜に、バスがなくなるほどの遅い時間までケーキ屋が営業しているかどうかです。
- 「見えない風景」
- “見えない風景”が存在したために不可能犯罪と誤解してしまったという真相は、皮肉でよくできていると思います。
ただ、最後は余計ではないでしょうか。呪師霊太郎(→『人喰いの時代』など)がそれほど無名だとも思えませんし、単行本に書き下ろしという形であれば、あとがきにでも書いておけばすむことだと思います。
- 「スーパーは嫌い」
- 犯人たちの計画が次々と破綻していく様子が面白いと思います。また、商店街の面々の意外なしたたかさが印象的です。