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仮面/山田正紀

1998年発表 幻冬舎ノベルス(幻冬舎)

 この作品の冒頭で明かされる“真相”はダミーの真相だったわけですが、犯人が探偵に対して仕掛けるのではなく、探偵役自らが仕掛けたという点がユニークです。その目的は真犯人の意図を知ることにあったわけですが、それが火那子自身も予想しなかった、手記の改竄という展開につながっています。

 “手記”に仕掛けられたトリックは秀逸です。文章を挿入することによってまるっきり別の意味に変えてしまうというのは電子データならではですが、なかなか容易なことではないでしょう(挿入された箇所がわかりやすく表示されているのがもったいなく感じられますが、解決場面のことを考えると仕方のないところでしょう)。そして、この“手記”によって提示されているのは、火那子による“真相”を補う瑠璃子による“真相”です。つまり、この作品では犯人と探偵がそれぞれにダミーの解決を提示し合っているのです。

 マリリン・モンローの仮装が、ブロンドの鬘を外すだけで白雪姫になってしまうというのは実に意外でした。しかもこれが隠された動機につながっていたわけで、非常に面白いと思います。また、魔女と小人(=小鬼)や果物かごの林檎など、伏線もよくできています。

 他にも、ユキが漢字が苦手だという伏線を生かしたダイイングメッセージや、火那子の“デッドボトル”という言い違え(誤植かと思いました)など、細かいネタがたっぷりと盛り込まれた見事な作品です。

2001.07.14再読了