阿弥陀/山田正紀
1997年発表 幻冬舎ノベルス(幻冬舎)
この作品では何といっても次々に構築される仮説が圧巻ですが、推理の材料の提示もよく考えられていると思います。例えば、“何を忘れたのか?”という謎に関して“たまごっち”(今となっては懐かしいですね)を持ち出してみたり、エレベーターに落ちていたゴミや、監視カメラの映像に映っていたワゴン車など、いずれもうまい手がかりだと思います。
監視カメラの映像が隣のビルと切り替わっていたというのは若干無理があるかとも思いますが、比較的うまく説明されているとはいえるでしょう。
最後の真相については、エレベーター内のゴミと、戸川がボタンを押してもなかなかエレベーターが来なかったということが、見事な伏線になっています。
中井芳子が自発的に姿を消したということは早くから可能性の一つとして検討されていますし、交際相手の今村や不倫相手の横井の言動をみても、心情的に納得できるところです。しかし、和服を着るのが恥ずかしいというのは今ひとつピンときませんが、そういうものなのでしょうか。
2001.01.01再読了