血と夜の饗宴/山田正紀
1990年発表 廣済堂ブルーブックス(廣済堂出版)
夜に生きることを選んだ人間たちが、速やかに栄養を補給するために吸血を行うようになったという、ヴァンパイアの起源に関するアイデアは、『氷河民族』にも匹敵する、よくできたものではないかと思います。そしてヴァンパイアとコンピュータを結びつけたところも斬新です。が、この結びつけがかなり強引なものに感じられますし、生体情報をコンピュータに“ダウンロード”(正しくは“アップロード”ではないでしょうか?)するというアイデア自体は、SFではかなり以前から知られているもので、やや拍子抜けの感があります。
また、ラストで荊蒼産は死んでしまいますが、彼自身は“ダウンロード”を行っていなかったのでしょうか。そうだとすれば、コンピュータが登場する以前のヴァンパイアとそれ以後のヴァンパイアの、種族としての連続性はどうなるのでしょうか。このあたりがあいまいにされているところが残念です。
2000.09.10読了