篠婆 骨の街の殺人/山田正紀
2001年発表 講談社ノベルス(講談社)
まず進藤隆義殺しですが、木箱と壷という小道具を使うことで、落語の「粗忽長屋」ばりの“自分が死んだことにも気づかない”という珍妙な現象を演出しているところが秀逸です。また、「駅を間違えた」という“時刻表トリック”もユニークだと思います。これらはひとえに進藤隆義の粗忽ぶりに起因するものですが、それが勇作との出会いの場面で十分に印象づけられているため、納得せざるを得ないところでしょう。
篠福鉄道車内の死体の隠し方もよくできていると思いますが、勇作が発見したときに血がポタポタと滴り落ちるような状態であれば、座席の間にも血痕が残っていると思われます。そうなると警察もトリックに気づいてしまうのではないでしょうか。
窯の中から発見された人骨については、内部にカメラまで設けられていることで不可能性が増している反面、解決はこれしかないかな、という風にも感じられます。ただ、そこから過去の隠された事件につながっていくところはうまいと思いますし、さらには犬のゴローの死とのかかわりもよくできていると思います。
“骨の街”自体の謎についてはやや物足りない部分も感じられますが、これは次作以降を待つべきでしょう。勇作がいつの間にか“壁抜け”している場面なども同様で、どのような解決を持ってくるのかが見どころです。
2001.10.06読了