ネタバレ感想 : 未読の方はお戻りください
  1. 黄金の羊毛亭  > 
  2. 山田正紀ガイド > 
  3. 山田正紀作品感想vol.3 > 
  4. 神獣聖戦II 時間牢に繋がれて

神獣聖戦II 時間牢に繋がれて/山田正紀

1984年発表 徳間文庫210-12(徳間書店)
「渚の恋人」
 航宙刺激ホルモン{FISH}を分泌する“脳”の持ち主であれば、自らが生理的な宇宙旅行を体験することも可能でしょう。ただこの場合、孝二は背面世界を経由して火星の風景を見ている(現実世界へ戻ってきている)わけですから、例えば精神のみが移動するということなのでしょうか(孝二は完全に鏡人=狂人{M・M}化しているわけではないので)。

「円空大奔走」
 真理の語る言葉を完全には理解しきれない円空の焦燥、そして最後の円空の言葉が印象的です。

「時間牢に繋がれて」
 SFミステリかと思いきや、ローズマリー自身が死後に密室を作り上げたという、皮肉な真相が印象的です。また、“あい”が現想者であることが、運転手{ショーファー}殺しの伏線になっているのはよくできていると思います。
 ところで、〈蛸{オクトパシー}〉を鏡面弾で砲撃したのは何者だったのでしょうか。鏡人=狂人{M・M}の大使にはそんなことをするメリットはないように思えますし、そもそも「円空大奔走」によれば、鏡面弾は悪魔憑き{デモノマニア}の武器だったはずです。さて、真相はどうなのでしょう?

「鶫(つぐみ)
 特になし。

「硫黄の底」
 「真実はない」という真実は、逆説的でもあります。が、やはり、この力強い断言の後に残る虚無感には、打ちのめされそうになってしまいます。
2000.05.31再読了