螺旋/山田正紀
1997年発表 幻冬舎ノベルス(幻冬舎)
全長6.5キロの“密室”からの死体消失ですが、サイホン現象による水の逆流で、唯一の開口部である上流側へと流れてしまったという真相はよくできていると思います。島田荘司ばりの豪快なトリックだといえるでしょう。
しかし、このサイホン現象を含めたほぼすべての怪現象に地下の石灰層洞穴が関わっていると説明されていますが、これには無理があると思います。なぜかといえば、作者が石灰岩(炭酸カルシウム)と生石灰(酸化カルシウム)を混同してしまっていると思われるからです。生石灰は水に触れると熱を発しますが、石灰岩にはそのような性質はありません。したがって、燃え上がるイバラやUFOのような怪しい光はおろか、肝心のサイホン現象までが現実には起こり得ないのです。
2000.12.26再読了