ネタバレ感想 : 未読の方はお戻りください
  1. 黄金の羊毛亭  > 
  2. 山田正紀ガイド > 
  3. 山田正紀作品感想vol.5 > 
  4. 天動説

天動説/山田正紀

1988~1989年発表 カドカワノベルズ86-3,4(角川書店)/『天動説(全)』(戎光祥出版)

 主人公・小森鉄太郎と“さたん”の戦いは「蝦夷トランシルヴァニア」で決着し、普通であればそこで物語が終わってもおかしくないところですが、その後に最終話「旅順招魂祭」が用意されていることで、より印象深いものになっています。鉄太郎らの“その後”が示されているのもさることながら、玉子屋仙三の再登場と、堅太郎を鉄太郎に重ねながら――鉄太郎との再会を果たしたかのように、心安らかに死んでいくその姿が胸を打ちます。

 一方、鉄太郎が倒したはずの“さたん”――ヴァンパイヤが復活を遂げていることで、再びヴァンパイヤを倒した堅太郎の胸に疑念が残り、『天動説』という題名に絡めたそれでもヴァンパイヤは生きているという、鮮烈な印象を残す一言につながっているのが秀逸。そしてそれでもなお、強大なヴァンパイヤに対して果敢に戦いを挑む人々の登場を“予言”し、山田正紀らしいテーマを改めて強調してあるのが実に見事です。

2000.11.02 / 2000.11.03 『天動説(一)(二)』再読了
2015.03.26 『天動説(全)』読了 (2015.04.25改稿)