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裏切りの果実/山田正紀

1983年発表 文春文庫 284-6(文芸春秋)

 終盤は相次ぐ裏切りで、息をもつかせぬ展開となっていますが、その中で“志郎”が偽者であることが明かされます。さほど衝撃的なものには感じられませんが、この真相があることで、“志郎”と伊波名がお互いに裏切りを仕掛けることに説得力が出ているのではないでしょうか。

 この作品は、山田正紀の長編にしては珍しく、部分的にはハッピーエンドといえなくもないでしょう。何しろ、主人公はまんまと10億円を奪い去っているのですから。しかし、伊波名の裏切りは計算に入っていたとはいえ、完全に信じていた桃に裏切られたのは、主人公にとって大きな痛手でした。やはり完全なハッピーエンドとはいえず、苦さを残す作品となっています。

 ラストで主人公らしき人物が首相にかけた、「おれの共犯者」という言葉が、何ともいえない印象を残しています。

2000.10.10再読了