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フラッシュフォワード/R.J.ソウヤー

Flashforward/R.J.Sawyer

1999年発表 内田昌之訳 ハヤカワ文庫SF1342(早川書房)

 この作品で描かれている時間理論は、J.P.ホーガン『未来からのホットライン』と共通するところがあるかと思います(こちらは過去へ情報を送る、すなわち情報の送り手が主体となっていますが)。しかし、ホーガンが正面から時間理論に挑戦しているのに対し、ソウヤーはこの作品で、未来の情報を得た人々のありようを描くことに専念しているようです。

 テオの弟ディミトリオスは、未来の姿を見た――すなわち二十一年後まで生きていることになっていたにもかかわらず、未来の姿に絶望して自殺してしまいます。未来が固定されたものであれば自殺は不可能、逆に自殺が成功すれば未来は改変可能だったということになるわけで、非常に逆説的な状況になっています。未来が改変可能であれば自殺する理由もなくなってしまうようにも思えますが、彼にとっては夢が実現しなかった姿を目の当たりにしたこと自体が、絶望に値するものだったのでしょう。

 “リングで(in the ring)”という言葉が、“ボクシングで”になってしまうところは、まるでダイイングメッセージのようで面白いと思います。その、意味の取り違えにも説得力があります。

 この作品は、ソウヤーにしてはストレートな作品だったので、違った意味で予想を裏切られてしまいました。

 余談ですが、ニュースダイジェストで“デイル・ライス役を演じていた俳優”の死が報じられます。この“デイル・ライス”とは、『イリーガル・エイリアン』で重要な役割を果たしたあの人のことでしょうか。ニヤリとさせられてしまいました。

2000.01.07-2000.01.15読了
2001.01.28読了(日本語版)