叙述トリック分類・補遺〈人物の隠匿〉 |
| 2010.02.27 by SAKATAM (以下、随時追記修正) |
ご注意!
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| はじめに |
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このページは、「叙述トリック分類#[A-3]人物の隠匿」で説明した、作中に存在する登場人物を“その場に存在しない”と見せかける叙述トリックについて、それが使われている作品をリストアップする(ただし作品名は伏せてあります)とともに、具体的な作例に基づいてトリックを比較検討してみようとするものです。 叙述トリックの中で特に〈人物の隠匿〉を取り上げたのは、現時点でも作例がさほど多すぎない(*1)ということもありますが、他の叙述トリックよりもやや複雑な機構――場合によっては作中でのトリック(≠叙述トリック)も含む――を要し、同じ現象を生じるための手法にバリエーションが存在するからで、叙述トリックの中でも例外的にいわゆる“密室講義”(*2)のような手法による分類が可能だと考えられます。
以下、「叙述トリック分類#[A-3]人物の隠匿」にしたがい、〈視点人物の隠匿〉・〈聴き手の隠匿〉・〈第三者の隠匿〉の三つに分けて、それぞれ作例を挙げてトリックを検討していきます。
*1: 登場人物を一人隠してしまうという現象や、場合によっては物語全体にわたる仕掛けとなることなどから、メイン(に近い位置づけ)のネタとして扱わざるを得ないという事情もあるかと思われます。
*2: J.D.カー『三つの棺』など。必要であれば、拙文「私的「密室講義」」をご参照下さい。 |
| 〈視点人物の隠匿〉 |
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〈概略〉 「叙述トリック分類#[A-3-1]視点人物の隠匿」に記したように、物語の“語り手”や“記述者”などの役割が与えられた視点人物の存在を隠すトリックです。 叙述トリックとしての手法は、いわば視点人物の“気配を消す”もの(【作品1-A】の系列)と、視点人物を(一応伏せ字)“枠外へ追いやる”(ここまで)もの(【作品1-C】の系列)とに大別できます。 また、叙述トリックを支える補助的な要素としての、視点人物と他の登場人物との関係についての作中での仕掛けに関して、〈物理的に隔離〉・〈感覚的に隔離〉・〈心理的に隔離〉・〈隔離されない〉の四通りに分けることができます。
〈作品リスト〉
以下、〈視点人物の隠匿〉トリックが使われている作品を、知っている限り年代順に挙げていきますが、当然ながら“漏れ”があるかと思われますので、その点はご了承下さい。
*1: 他の登場人物がその場にいる視点人物を認識しながら、話しかけたりすることなく“無視”した状態を続けるのは、一般的には不自然きわまりない状態といわざるを得ません(ただし心理的に隔離されている場合を除く)。
*2: “本書で○○が採用した視点のトリックは、フランスのヌーヴォー・ロマンの代表的作家、アラン・ロブ=グリエが『嫉妬』(一九五七年)で試みた実験的な小説作法に酷似しているということを指摘しておかなければなりません。ただし、ロブ=グリエの小説に意外性の演出は皆無です”という具合に、“前例”としてはミステリらしくない作品のみに言及されています。 *3: 実際には、一人称を三人称に偽装して視点人物の存在を隠すという手法自体は、少なくとも1991年に発表された国内作家“Y”の長編(〈第三者の隠匿〉の【作品3-B】)の中で披露されており、アイデアとしては以前から知られていたもののようです。 *4: ただしこの【作品1-C】では、ややトリッキーな手法で最後に視点人物が出現しています。 *5: 奥付を確認してみると、【作品1-D】と【作品1-E】は同年同月(数日違い)の発行となっています。 *6: 特に、記述が若干怪しい箇所もあるので。 (【作品1-A】〜【作品1-J】 2010.02.27)
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| 〈聴き手の隠匿〉 |
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〈概略〉 「叙述トリック分類#[A-3-2]聴き手の隠匿」に記したように、語り手に対する聴き手の存在を隠すトリックです。 一人称の語り手が読者に向けて語っているように見せかけるため、作中での聴き手となり得る登場人物が存在しないと思われる状況での“語り”が基本となります。 他のトリックと違ってメインのネタとはなりにくく、またバリエーションが生じにくいこともあり、正直なところさほど面白味があるとはいえませんし、リストアップできるほどの例も思い浮かびません。
〈作品リスト〉
以下、〈聴き手の隠匿〉が使われている作品のうち、特殊な例を一つ挙げておきます。
(【作品2-A】 2010.02.27)
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| 〈第三者の隠匿〉 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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〈概略〉 「叙述トリック分類#[A-3-3]第三者の隠匿」に記したように、語り手でも聴き手でもない第三者――三人称で記述される人物の存在を隠すトリックです。 叙述トリックとしての手法は人物の誤認――隠される人物Xに関する描写などを別の“人物Y”に関するものと見せかける――が中心となりますが、人物の誤認と隠匿のどちらに重きが置かれているかによって、〈誤認のための隠匿〉と〈隠匿のための誤認〉とに分けることができます。 まず、〈隠匿のための誤認〉は人物Xの存在を隠すこと自体を主目的とするもので、作中での人物Xについての描写を、作中に登場していたことを読者に対して保証するための必要最少限にとどめておき、さらにそれを“人物Y”と誤認させることで人物Xの存在を“消す”ものです。一方、〈誤認のための隠匿〉では人物Xを別の人物Yの“身代わり”とすることが主目的であり、そのために人物Xについて登場人物としての存在感を出せる程度の描写をした上で、それを丸ごと別人(“人物Y”)のものだと誤認させる――結果として人物Xが“存在しない”状態となるものです。 隠された人物Xが作中に登場していたということを読者に納得させる必要もあって、その名前が作中に示されている――さすがにフルネームというわけにはいきませんが――例が多くなっており(*1)、トリックを成立させるために“隠された人物の名前をどのように扱うか”というのも、この種の作品の見どころといえるでしょう。
〈作品リスト〉
以下、〈第三者の隠匿〉トリックが使われている作品を、知っている限り年代順に挙げていきますが、当然ながら“漏れ”があるかと思われますので、その点はご了承下さい。
(【作品3-A】〜【作品3-D】 2010.02.27)
(【作品3-E】 2010.10.12) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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