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11.ホリデー モード      

   
         
(15)

  

 場所は、広間へ移る。

 薄墨色に蒼で模様の描かれたテーブルクロスは、落ち着いた色合いのふんだんに使われた広間を控えめな華やかさで飾る絶好の小道具で、天井から吊られたクリスタルのシャンデリアと、壁に幾つも飾られているランプが放つ穏やかな橙色の灯かりに照らされると、織り込まれたシルクの光沢がとても印象的に見えた。絨毯も基調がブルーグレーという一風変わったものだったが、決して薄暗さを感じさせない明度に保たれている全体の配色が、この「青灰色」という「ミラキ家」を象徴する色の持つ誇りと歴史を今も当主が守り通しているのだと思わせた。

 広間の中央に置かれているのは、長テーブルではなく大きな円卓。貴賓(一応…)である陛下の左隣りはミラキ家当主であるドレイクの席で、ウォルの右から、ウィド、エンデルス、フォランチェスカ、グラン、スーシェ、デリラ、アン、イルシュ、ヒュー。ウォルの正面がミナミ、さらに右に進んで、ハルヴァイト、ギイル、ローエンス、クラバイン、レジーナ、マーリィ、アリスで、ドレイクに戻る。

 執事たちが恭しく食事を運び込んで来るのをなんとなく見遣りつつ、ドレイクはちょっと…困っていた。

 つまり。この晩餐の意図が、未だに判らないままなのだ。

 いい加減食前酒もないだろう、という事になって、さっそく乾杯用のシャンパンを手にテーブルの周囲を歩き回る給仕たち。唯一事情を知っているらしい執事長のリインを捕まえて「こりゃなんなんだ?」と今すぐ問いただしたいが、そのリインの姿は今も見えない。

「…ドレイク」

「あん?」

「一体何を企んで、こんな顔ぶれを選んだんだ? お前」

 隣りにいるウィドに聞かれないようになのか、ウォルがそっとドレイクに寄り添い、小声で問い掛けて来る。という事は、この晩餐を仕組んだのはウォルではなく、陛下でないなら……。

「誰なんだ?」

「ん?」

 思わず漏れた呟きに、ウォルが妙な顔で首を傾げる。

「……いや、こっちの話だって…。別に何か企んでる訳じゃねぇけどよ、結局、事後処理じゃフランツやハスマ卿らも騒がしちまったしな。それに、予定通り編成を変えるとなれば、嫌でもよ、みんながみんな多少は顔見知りになってて貰った方が……? なんだ?」

 ウォルに顔さえ向けず答えていたドレイクが、ふと、頬に突き刺さる視線に気付いて目だけを動かす。

 艶めくような黒い瞳と、目が合う。

「なんでもない…」

 なぜかそれが不安げに逸らされると、ドレイクは手を伸ばし、膝の上で握られていたウォルの真白い繊手を握り締めた。

 何を言うでもないけれど。

 細くか弱く頼りなさげながら、ファイランという都市を護り続けようとする手を。

「…最後まで機嫌よくしててくれよ…。俺のためにな」

 囁いてドレイクは、同じ台詞を自分にも呟いた。

      

      

 乾杯(スコール)は陛下の美しく華やかな笑顔と、先日の騒ぎにおいて駆け回った軍規違反ども、それから、今日この場に参じる事を快諾してくれたレジーナ、その後の四日間殆ど寝ずに仕事をこなしたクラバインとヒュー、同じく事後承諾で様々な無茶を通させられたフランチェスカ、貴族院再編で実は今も忙しいのだろうウィドとエンデルスに対する少ない言葉で飾られ、最後にウォルは、いつもながらの無表情を貫くミナミに視線を据え、短く会釈し、手の中の細いグラスを差し上げた。

 ウォルがミナミに対して言葉を掛けなかったのが、何を言っても終わった事だから。という訳ではないと、誰もが判っている。

 冷ややかなほど綺麗な青年は、多分あの日全てを投げ出す覚悟で、傷付いた。しかし、ミナミは唯一彼の「赦されたいと願った」ひとにだけ許され、その手を取ってくちづけを交わし、ウォルの不安さえなかった事にしてくれたのだから。

 それを見守って、これから先もただ見守って、微笑んで、それ以上何を言っていいのか? 安っぽい言葉で目の前の「幸せ」をつまらない感傷にするくらいなら何も言わない方がいい。とは、今ウォルの思う最良であり、ハルヴァイトの常套手段でもある。

 以前とは…ミナミと出会う前のハルヴァイトを知る者ならば、彼がそれまでと全く違う意味で言葉少なになった意味を、快く受け取れるだろう。

 世界という曖昧な「ファイラン」を無機質の集合だとでも言いたげに冷たく見つめていた鉛色の瞳が、今は、穏やかに微笑んでいる。

 傍らの青年が居て、それでやっとこの「世界」は意味と色と形を取り戻した。

 乾杯の最後にウォルの選んだ言葉は、このささやかな晩餐を彩っただけではない…。

「……創世神話の時代から、浮遊する都市を守る天使と悪魔に」

 スコール。

 艶やかな漆黒の衣装を纏い、朗らかすぎるほど朗らかな笑みを賓客に向けた国王陛下は、本当に、この時代、自らの統べるこの都市に、神話に違わぬ天使と悪魔が居る事を喜んでいるように見えた。

 淵に小さく飾りの描かれた白滋の皿が持ち込まれ、食欲をそそる柔らかい湯気の立ち上るスープがいくつも取り分けられていく。食器の触れ合う微かな音と密やかに交わされる会話。途中、「こういうのはなぁ、どうも居心地悪くて背中がかゆいんだよねぇ」と本気で顔を顰めたギイルの溜め息に、円卓がいっとき笑いに包まれる。

「まぁ、堅苦しい事ぁ抜き、つってもな、まさか貴族院議員殿に警備部のいっとうお偉いさんまで列席となっちゃぁ、そうもいかねぇか」

「…つか、陛下はいいのか?」

 貴族院議員が居て堅苦しい。では、陛下は居ても堅苦しくないのか?

「一応おれもさー、直属の上官フランチェスカ総司令の前で、あんまバカな事言えねぇでしょ。でも陛下なら、勤務地遠いしな」

「距離じゃねぇだろ、距離じゃ」

 今日はもう突っ込まない、と言った割にぽんぽん突っ込むミナミを、グランがにこにこと見つめている。それに気付いて「しまった」と言いたそうに視線を泳がせたミナミを、傍らのハルヴァイトが笑った。

「なんでアンタが笑ってんだよ…」

「あ…いえ」

 ミナミに睨まれたハルヴァイトが、顔の横で手を振る。

「ガリュー、どうせだから正直に言ったらどう? どうせ、アイリーに「黙ってる」なんて出来っこないんだから無理するな、とか、なんとか」

 おおよそ「堅苦しい」に当てはまらないウォルが行儀悪くもテーブルに片肘を突いてそんな事を言い、また、円卓は笑いに包まれた。

「…それにしても、グラン、ローエンス。お前達はこうも賑やかで気安い部下に囲まれて楽しそうだというのに、わたしやエンデはなんて貧乏籤を引いてしまったんだろうか。魔導師隊に居た頃はどうも思わなかったが、実際自分が貴族院になど身を置いてみると、これがまぁ、言語に絶する利権争いが水面下で繰り広げられていて、胸くそ悪い事この上ない」

「文句を言うな、ウィド。それがお前らとわたしらの、才能の違いだ」

 などと、くそ真面目な顔でグランが言い返せば、

「それに、今丁度謹慎処分中で不在だから言うが、某第七小隊など何かしでかしてみろ、胸くそ悪いのを通り越して、いっそ清々しいほどだ」

 絶妙のタイミングでローエンスが付け足す。

「おや、それじゃぁまるで、その某第七小隊が何かしでかすのを歓迎しているみたいじゃないか、ローエンス」

「エンデ…お前しばらく会わないうちに勘が鈍くなったのか? それとも貴族院とやらに毒されて、わたしの本質を忘れてしまったとでも?」

 にやにやと笑うローエンスに、エンデルスが朗らかな笑みで言い返した。

「まさか。お前の性格が見事なまでに歪み切っていて、実は気に入りの部下に限って顔を見れば嫌味の一つも言わないと気が済まない、というのくらい、忘れてないけれど?」

 ロゼのワインを口に運びながら、エンデルスがそっぽを向く。と、その隣りで笑いを込み殺していたフランチェスカに、グランがわざとみんなに聞こえるような声で、こう言った。

「エンデもいい勝負だろうに。お前も気苦労が絶えなそうだな、フランツ」

「年上で、しかも階級上位の伴侶を持った者の趣味だとでも思ってくれ……グラン…」

「…………………だってさ、ミラキ卿」

「つうか! いきなりそれを俺に振るか! ミナミ!」

 当然だろ…、それ。と、円卓のあちこちから判を押したような突っ込みがドレイクに集中…。

「…黙ってるんじゃなかったんですか? ミナミ…」

「? いや。今のは見逃せないトコだし」

 見逃せよ! と悲鳴を上げたドレイクを無視して、ミナミは必要以上に素っ気無く言い、肩を竦めた。

「ということはぁ、ゴッヘル卿はデリさんよりお年が下なの?」

 それまで行儀よく食事を口に運んでいたイルシュが、ふと顔を上げる。

「殆ど一緒だよ、ぼくのほうが三ヶ月年下」

「へー」

「…なんだね、ぼく。その…へーってのは」

 食事よりもアルコールの消費量が多そうなデリラが、わざとのようにイルシュを睨む。

「いや。デリさんて、時々おっさん臭い事言ったりするけど、その割りに年齢不祥だなーーーと思って。ゴッヘル卿は落着いてて、大人、って感じが…す……」

 と、そこまで言って、イルシュは急に黙り込み…。

「あ。カモ肉のパイだ。おれ、これ好き」

 今にも丸めたナプキンを投げつけて来そうなデリラを無視して、無邪気に食事に戻った。

……かなり、青ざめた顔で…。

「そういうところが、つまり君………微妙にガキっぽいって思われてるんじゃないのかい? デリ」

「いつまでも若々しくて何より、とか言えないモンかね。せめてスゥくらいは」

 そんなやり取りを、マーリィがふかふかと笑う。その声は本当に可憐で柔らかく、それだけで、円卓に並べられた食事が倍は美味にさえ感じられた。

 真珠のように光沢のある真白い髪と、真紅の瞳。

 着飾ったウォルやミナミが居ても、尚色褪せない鮮やかな白。

 長い睫に飾られた赤い瞳がふと持ち上がり、少女は、髪の色だけなら似通った印象のヒューにそれを向けた。

 目が合って、反射的に、笑顔を浮べるヒュー。

「ひとつ質問をよろしいですか? ヒューさん」

 ふかふかの…少女。

「どうぞ」

 柔らかく、可憐な印象の…。

 受け取るのは、ハルヴァイト並に端正な顔立ちの、ヒュー・スレイサー衛視。

「ヒューさん、恋人はいらっしゃいませんの?」

 が、聞かれた途端に、その笑顔を引き攣らせた。

「…………………………」

「あ、それ、ぼくも一回訊いてみたいと思ってたんですよね」

「でしょう! アンくん。実はわたし、一目見た時からそれが気になって気になって仕方なかったの」

「この機会にきっぱり白状して貰ってすっきりしたいですよね」

「ねー」

 などとやけに盛り上がっている少年少女に、アリスが苦笑いしながら「はしたないわよ」と言うものの、いわゆる控えめながら押しは強いと評判のアン、可憐な外見の割にお転婆で何にでも興味を示すマーリィ相手に迂闊な事を言ってはとばっちりを食らいそうだと思ったのか、謹んでヒューは見捨てられた。

「「で? どうなんですか?」」

「…どうして気にする…そんな…どうでもいい事…」

 あからさまにそんな話題からさっさと離れて欲しいという顔つきのヒューなど無視して、アンとマーリィは「「どうでもよくない!」」と見事なタイミングで言い放った。

 これは意外なコンビだな。と無表情にミナミは思う。ちょっと、面白かった。

 というか。

 正直、ヒューがここでその話題に触れたくなかったのは、ウォルとレジーナとクラバインが居たからなのだが…。

「スレイサー」

「……何か?」

 にやにや笑いながら、ウォルが口を挟んで来た。

 予想通り。

「耳を塞いでいてやろうか?」

「お気遣い恐縮です」

 笑顔で会釈し、でも、まだウォルがヒューを見つめてにやにや笑っているのに、彼は心底諦めの溜め息を吐いた。

「居ました」とヒューが白状すると、

「……過去形ね」 難しい顔でマーリィが呟き、

「過去形ですね」 複雑そうにアンが繰り返し、

「はー。いつまでの話なのかね」 デリラは暢気にスーシェに問い掛け、

「あからさまな過去形よね」 アリスがダメ押しする。

「相手がどこの誰かは伏せっけどなー、二ヶ月程前に思いっきりひっぱたかれて、別れられたんだよねー、そちらの男前はさ」

「というか、お前がバラすな! キース!」

 にしし、と何やら含みたっぷりの嫌な笑いを浮かべるギイルを睨み返したヒュー。その、微妙にひきつった横顔をいつもの瞳で観察するように見つめていたミナミが、「二ヶ月?」と……思いっきりヒューに迷惑な呟きを漏らした。

「ミナミ…俺に何か怨みでもあるのか?」

「ん? あぁ、ないといえばないけど?」

 じゃぁ実はあるのか?! と内心突っ込むも、誰もそれを口に上らせるような愚行は犯さない。

 何せ今、ちょっと面白い事になっているのだ。衛視という職業柄だけでなく、基本的にヒュー・スレイサーというのもハルヴァイトタイプの横柄な二枚目で、しかし、片やハルヴァイトはミナミに対して以外ほとんど弱みらしい弱みを持っていないし見せないし、となればつまり、普段スカした色男が言葉に詰まってうろたえる姿、というのは、なかなかお目にかかれる状況ではない。

 ちなみに、ハルヴァイトは開き直るのと飽きて投げ出すのが早いので、ふて腐れている姿ならいつでも拝める。

「二ヶ月程前っていったら、ちょうどミナミさんが特務室詰めになった頃ですよね?」

 無邪気なアン少年の追い討ちに、ヒューががっくり肩を落とす。

「あー。つまりだぁねぇ」

「だから、お前が言うな…キース」

「じゃ自分で言いな、スレイサー」

「このままこのネタがフェイドアウトする選択肢は無いのか?」

 というヒューの苦しい抗議に、その場にいた全員が顔の前で手を横に振った。

「下世話だ」

 ヒューの疲れ切った呟きを、ミナミが微かに笑う。

「いろんな意味で気になるってのは判るけどな。だってヒューはさ、多分…クラバインさんの陰に隠れてよく判んねぇんだけど、実はクラバインさん並に忙しいんだろうし」

 恋人がどうこうではない。いや、それも大いに興味あるが。

「判った…。じゃぁこうしよう。レジー」

「? なに?」

 何やら自分の中で覚悟が決まったのか、ヒューはエメラルド色の瞳でレジーナを見つめ、横柄に腕を組んだ。

「お前は耳を塞げ」

「……なんて酷い友達なんだ」

 にこりともせずに言い放たれたレジーナが、苦笑いしながら耳を塞ぐ真似をする。それを傍らでじっと見つめている、クラバイン。

 じっと。微笑んで…。

 その視線がゆっくりと旋廻し、ヒューに据わった。

「逆だよ、レジー。ヒューには感謝すべきだ」

 クラバインの笑顔とヒューのばつ悪そうな顔。その間で視線を往復させていたミナミが、なるほど、と内心頷く。

「だから、二ヶ月前なんだ」

「ああ、その通りだよ、アイリー次長」

 どうやら特務室詰めの衛視にはその意味が判ったらしく、しかし、ここに集う大半が衛視でない事を考慮して、ついに、ヒューが重い口を開く。

「ミナミが特務室に来るまでの三年間、次長のポストは空席だった。だが、まさか何から何までクラバインひとりで捌ける訳でもない。でも、……レジーが特務室に戻って来る時の事を考えれば、そこは空席のままがいいと俺は思ったんだよ。だから、普通細かい事務仕事のない警護班の俺が、次長代理で幾つかの仕事をこなしていた。

 となると、当然俺は他の連中よりも休日を細かく割り振るようになるし、クラバイン不在の際にはいつでも呼び出しが入ったし、つまり、名目上の「恋人」はいたが、事実上俺はいつも城に居るか、やっと部屋に戻って何日かぶりに寝ているか、とにかく…」

「そんなのは恋人が居た、とか言っていいレベルじゃありません、ヒューさん!」

 で。思いっきりアン少年が突っ込んだ。

「小隊長より非常識です!」

「…わたしは非常識なんですか? ミナミ」

「ごめん、慣れてるから判んねぇ」

 などとかなり的外れなハルヴァイトとミナミの会話を経て、ヒューが苦笑いする。

「だから、ひっぱたかれて捨てられるんだよ」

 そのどうでもいいような言い方が可笑しくて、切実で、マーリィとアリスが複雑そうな笑みを零す。

「? でも、ねぇ、ミナミさん? どうして「だから二ヶ月前」なんですか?」

 ふとそこで、傍らで困ったようにしているクラバインから相変わらずのミナミに視線を移したマーリィに問い掛けられ、当のミナミが「うん」と頷いた。

「俺が特務室に入って、ヒューは少し暇になったんだよ。それだけ」

「しかも、下城後の緊急呼び出しも減ったでしょうしね」

 と、今度はハルヴァイトがちょっと面白くなさそうな顔で付け足し、ミナミに見つめられた。

 そう。今にして思えばミナミが特務室詰めになったのには理由があったのだが、まさかその明かされていない理由を全ての衛視が知っている訳もなく、というか、誰も知らず、日勤でハルヴァイトの帰宅時には家に居るはずのミナミが、飛び込みの仕事や呼び出しで自宅に戻っていない、というのも、そう珍しい事ではなくなっていたのだ。

 いつの間にか。

 ミナミは、それ以上何を言うでもない恋人の横顔を見つめ、少し反省する。もっとちゃんと傍に居て、それだけでよかったのに、それさえ出来ていなかった事を今更ながら思い出す。

 だから…。

「なるほどね。レジーを移送して自分だけが働き過ぎだと思っていたクラバインも実は、スレイサーには目いっぱい迷惑をかけてた訳か」

 溜め息のようなウォルのセリフに、傍らのドレイクも小さく頷いた。結局、その原因を作ったのは自分達で、ほんの一握りの共犯者だけを巻き込んだ、と思っていたのに、まったく事情も知らされていないその他大勢さえ降り回されていたのか、と。

 一瞬、テーブルに沈鬱な空気が降り…そうになる。

「でもよ。いや、すげぇいい話の腰折って申し訳ねぇんだがな? 「ボクと仕事とどっちが大切なの?」ってぇ涙ながらに訴えられてよ、「お前は俺の仕事と自分が同列にあると本気で思ってるのか?」って言い返してひっぱたかれたってのは、自分の責任だと思わん?」

…………。ヒュー・スレイサー、責任感が強いのか…、…それとも…。

「もしかしてヒューがその辺言い渋ってたのって、そっちが原因だろ」

 とりあえずミナミは、ここは役割として突っ込むべき、と冷静勝つ沈着、さらには冷ややかに、きっぱりと突っ込んだ。

  

   
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