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16.全ての人よ うらむなかれ

   
         
(14)独白―A

  

 なぜなのか、どうしてなのか。

 どうも俺は、ずっとそればかりを考えているような気がしてならねぇ。

 なぜなのか、どうしてなのか。

 なぜハルヴァイトは消えたのか。

 どうしてミナミは話さないのか。

 なぜ班長は気付いたのか。

 どうしてあのやかましい女医が知っているのか。

 本当なら。

 俺が最初に気付かなくちゃならねぇんじゃないだろうか。

 俺が最初に言わなくちゃならねぇんじゃないだろうか。

 それなのに。

 俺はずっと答えのない質問ばかりを繰り返してる。

 情けねぇ。

        

        

 忘れた頃にようやく電脳班執務室にドレイクが戻った時、そこには、デリラだけが居残っていた。アリスとアンは一旦自宅へ戻り明日の朝一番で登城すると告げられたドレイクが、顔を上げた砲撃手に軽く頷いてみせる。

 その様子がどこかおかしいと思ったが、デリラは微かに眉を寄せただけで何も問わず、また、何かを調べていたのだろうモニターに視線を戻した。

      

     

 なんだか酷く疲れていた。当然か…。

 今日一日何があったのかとか、何をしたのかとか、そういうものを確かめるのも面倒になった。

 まぁ、ミナミの病状? は、結局、あの恐ろしいまでに強情な性格の引き起こした一種のボイコットらしいし、どうやら班長は、詳しく言いはしねぇがまだまだ色々と判ってる? 気付いてる? ようだし、アンとアリスもちったぁ落ち着いたみてぇだし…。

 となりゃ、少しくれぇ休んでもいいだろ? 俺も。

 そう思ったら急に、身体中がぎちぎち言いやがるから、人間てのは正直なもんだよな。

 留守番のデリにちょっと休むと言って、奥の仮眠室に入る。

 脱いだ上着をベッドの端っこに載せて靴を放り出し、仰向けに倒れる。

 暗い天井に吐き付けた重い溜め息。

 息苦しさに思わず苦笑を漏らしてから、ネクタイを外して床に投げつける。

 ああ。疲れた…。

 目を閉じて、少し眠ろう。

         

 それなのに、閉じた瞼に浮かんだのは、今にも泣きそうに睨んで来る、…落胆した…、あの……………黒い瞳だった。

       

     

 ああ。

 もう。

 全部。

      

       

 忘れてぇ…。

  

   
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