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16.全ての人よ うらむなかれ

   
         
(20)独白―B

  

 言われてしまえば、そんなモンかもな、って気持ちではある、俺だって。

 ああも明らかなフラグがそんなトコにあるなんて、反則だろ?

 確かにさ、このファイラン中で基底言語を解読する「ソフト」を臨界で持ってる魔導師ってのは、多くない。つうか…、あの人と、エスト卿とタマリにしかそれは持てねぇのか。

 でもさ。

 タマリは、基底言語を描けねぇ。多分、エスト卿も。

 意味不明の言語を意味不明の記号で返してくれるソフトはあるだろうけど、ハード=魔導師がそれを理解出来るかつったら、また別の問題だろ?

 とそこまで考えて、俺は気付いた。

 というか。

 もしあんたが最初から「それ」を狙ってたんだとしたら、とりあえず、後で蹴飛ばしてやろうくらいは思う。

 あんたは多分、凄く酷い、凄く冷たい人間だ。

 ヒントはもう出てたんだよな。

 ずっと前から。

 そして俺だけが、その殆どを知ってたんだよな。

 あの赤いマントとタマリの受け取ったディスクは、最初のフラグじゃなく、最後のフラグだった。

 俺は突然気付いた。

 殆ど全部が揃っている事に。

 そして俺はやっと気付いた。

             

 あんた全然優しくねぇし、まるで我侭だし、辺りの迷惑とかも考えてねぇけど。

           

 俺が、アンタの、恋人でよかった。

        

 俺は生まれて始めて、もう何度目なのか判らない「始めて」、俺に生まれてよかったと、そう思った。

  

   
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