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占者の街 | |||
第一章 保安官・ネル・アフ・ローの場合(4) | |||
「これは確かに事件だ。しかし犯人はいない。 いや、事件だから犯人はいる。 しかし犯人はその正体を絶対に見せない。当然、犯人だって馬鹿じゃない。 だからその……窃盗団とおぼしき連中は、まったく仕事の痕跡も残さず、もしかしたら、仕事の幾つかは露見せずにいるかもしれない…。 ってトコでどうだい? 見習い保安官とその上司」 粗末な部屋の中央に置かれたソファに小さくなって恐縮していたダーグ保安官主事とネル保安官見習いは、にやにやしながらいきなり切り出したシュアラスタの端正な顔をぎょっとして見つめ、ぽかんと口を開けた。 その見事に間の抜けた表情を小さく笑い、チェスは、この中でもっともシュアラスタ・ジェイフォードという男に「慣れている」相棒は、誰にともなく口の中で呟いていた。 「……うちの相棒が「いい」のは、別に、顔だけじゃないわよ」 でしょ? と小首を傾げた美女の髪を掌で掬ってさらりと流したシュアラスタが、意味ありげな薄笑みを皮肉な口元に載せる。 「顔だけよくても、バスターじゃ食ってけねぇんだよ」
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