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    占者の街    
       
第五幕 占者の街 占者の場合(3)

   

 まず、ミムサ・ノスで起こった奇妙な窃盗事件の話をしよう、とシュアラスタは言った。

「結果を先に言うのなら、それは『窃盗』事件でなく、「連続持ち出し事件」と呼ぶべきだろうよ。ここ数ヶ月で露見したのはこの館からのものも含めて十七件だが、実際は、数年前から、下手すりゃ百件を下らないかもしれない。が、それは過ぎちまった事だし、今更調べる手も…ないからな、一番最近の十七件についてだけ話す」

 まさかそんな突拍子もない事を言われると思っていなかったからか、レディ・ポーラ・フィルマは思わずシュアラスタの顔を凝視してしまった。

 何かを問いかけようと唇を開きかけ、しかし、手で制されて黙る。

「被害は金貨と、宝石を含む宝飾品。一件ごとはそう多くないが、件数は多いから被害額の合計はちょっとした数字になるだろう。

 被害者は一様に、妖しい人物も見ていなければ、実は、いつそれが盗まれたのかも明確には答えられない。確かに、外部から進入した何者かが犯人だとすればおかしな事件かもしれないが、例えば、「母親の大切な宝石を持ち出したのは、家族」だとしたら、お話は別だ」

 腕を組んでじっとレディ・ポーラ・フィルマを見つめたまま、シュアラスタは続ける。

「それなら犯人が目撃されていないもの頷けるし、退路が確保出来なくても何も問題は無い。宝石や金貨を忍ばせた「あるもの」を持って、いつものようにいってきますと家を出ればいいんだからな」

 シュアラスタが淡々と告げる声を聞きながら、チェスはゆっくり前庭を見回した。

「その「あるもの」の前に、なんでそんな予想をしたのか話しておこうか? レディ。

 この館の被害品は別として、外の被害品にはある共通点があった。それはつまり、「家の中で一番高価なもの」でなく、「一番、その家にとって価値のあると思われるもの」らしかったって事だ」

 チェスと同じように、控えたヌッフやルイード、それより背後のシャオリーとカーライルも、さりげなく前庭を見回している。

「家族なら知りうる価値、ってヤツだな」

 灰色がかった緑の瞳だけは、レディ・ポーラ・フィルマから離れない。

「ではなぜ、そんな事がこの町で起こったのかってのが、今度は問題になる。例えば内情の混乱した金持ちだとか、そういう家庭が舞台なら理由はなんだってあるだろうが、被害を被ったのはいわゆる一般的な庶民だ」

 それに、一番後続のネルが微かに頷く。彼だけは、じっとシュアラスタの背中を睨んでいた。

「この町の一般家庭だから起こったのさ、この………」

「集団暗示よ」

 シュアラスタの言葉を継いでぴしゃりと言い切ったのは、レディ・ポーラ・フィルマを前庭まで案内して来た、あの黒衣の女だった。

「簡単に言っちゃえば、催眠術よね、つまり。あなたはだんだん眠くなるー、ってアレ」

 言いながら、女は邪魔なベールを地面に投げ捨て、ついでにローブも払いながら、つかつかとシュアラスタの方へ歩き始めた。

「暗示ってのは、理解する方の意識が大幅に出やすいの。例えば、かける人間が「家で一番金目の物」って言ったとしても、受け取る方の脳が勝手に「お金」イコール「価値のあるもの」イコール「家で一番大切なもの」って変換しちゃうのよね。それで、高価なもの、でなく、その家にとって価値のあるもの、がターゲットに選ばれる、ってワケ」

 女は、漆黒の瞳のぱっちりした、なかなかかわいらしい顔立ちをしていた。濡れたような艶の黒髪をショートカットにしているのが余計に子供っぽい印象を与えるのに、唇にべったり塗られた真紅のルージュと露出の多い黒いレザーの上下のせいで、全体がひどくアンバランスに見える。

「邪魔よ、アンタ」

 ぴっちりボディにフィットしたショートパンツから伸びた足が、シュアラスタの傍らに立つチェスの太腿を狙って跳ね上がった。しかし件のチェスは慣れているのか予想していたのか、軽く一歩後退してその爪先を躱す。

「で? 危険な潜入捜査から生還した恋人に、キスのひとつくらい振舞ってくれないワケ? シュアラスタ」

「あほか。俺はまだ仕事中だ」

 しなだれかかってくる女…バスター・ミディア・ミディをぞんざいに振り払って、シュアラスタはげんなりと溜め息をついた。

「さて…、一体お前は何を言ってるのかって気分だろ、レディ・ポーラ・フィルマ。本題はこっからだ」

 一度髪を掻き揚げて気分を換え、吸い差しを吐き捨てたシュアラスタがまた新しい紙巻を唇に乗せる。くわえ煙草を落とさずあれだけぺらぺら喋れるなんて、器用ね。などと暢気にチェスは思ったが、レディ・ポーラ・フィルマはさも不快げに眉根を寄せていた。

「ミディアはなんて言った? 集団暗示だって言わなかったか? 俺はなんて言った? この町の一般家庭だから起こったと言わなかったか?」

 薄笑みで吐きつけられた問いかけに、答えようとする者は一人もいない。

「足繁く通う町の住民にそんなバカげた暗示をかけて小金を稼いでた小悪人は、あんたのお膝元にいるんだよ」

「!」

 前庭の空気が一気に緊張する。しかし控える悪党どもは身じろぎひとつせず、じっと、その異様な集団を凝視していた。

「相談事を抱えてやって来た町の住人は、簡単な催眠術で二つの暗示をかけられる。ひとつは、悩みに対して適切なアドバイスを「貰ったが、他言すると運気が下がる」ってのと、「誰にも見られず、金目の物を持ち出して返礼しろ」ってモンだ。ちなみに前者の証言は、被害を受けたうちの十五件全てで裏が取れた。ネル・アフ・ロー保安官見習いの働きに感謝しな、お前ら」

 シュアラスタは、自身が一番感謝していないようなどうでもいい口調で言い捨てて、微かに口元を綻ばせた。

「さて、後者の暗示がいつ出るか、それは個人差もあるだろうし、定かでない。だが、そう間を置かず何かのタイミングで、相談者は「占い師の言った通り運気が向いた」と錯覚を起こす。そこでそいつは、占い師に返礼に行こうと思い立つワケだ」

 その言葉が終わるのを待って、シャオリーだけがゆっくりと動き出した。

「小麦や豆の入った麻袋に、無意識に、金貨や銀貨を混ぜ、真っ赤な木の実の器に入れた菓子に、ドライフルーツと宝石を、無意識に、入れて固める。返礼品の菓子となれば、ガキどもだってつまみ食いしないんだろ? 何せ、崇高な占い師様のお口に入るモンだからな」

 朝の空気よりも冷え切った中を、てけてけと気楽に歩くシャオリー。

「それでまんまとニセ占い師どのは小金を掌中に収める、って寸法だ。さっきから小金小金と言っといてなんだがな、レディ。三月(みつき)で十七件として、一年なら六十八件、一件当たりの被害額を金貨四十枚と均せば、二年で金貨五四四〇枚分の資産がこの町から消えてた事になるんだぜ?」

 なぜ、二年なのか。

「そんな…悪事が、悪事がそんな風に巧く行く訳はありません、この…わたしの!」

 それまで呆けたようにシュアラスタを見つめていたレディ・ポーラ・フィルマが、急に顔を真っ赤にして叫び出した。

「ところがそれが、巧い事行ってたのさ。あんたらだって、少しは恩恵に与っただろう?」

 悲鳴にならないざわめきが、館の住人から沸き起こる。一般的な衣装を身に着けているのは、使用人として雇われている町の住人。それから、少々アクの強い奇妙な衣装を着込んでいるのは、占い師とその側近。と百人を下らない前庭に溢れた不安な顔を見回して、選定を始める悪党ども。

「わたくしたちが悪事の片棒を担いでいたとでも言いたいのですかっ!」

「結果的にはそうなるんだろうが、それ以前に、あんた、自分があまりにも「信用され過ぎてる」と思った事、ないか?」

 唐突な質問だった。

 あまりの事に咄嗟に答えられなかったのか、レディ・ポーラ・フィルマは薄紅の唇を固く結んで、握り締めた拳をぶるぶる震わせているだけだ。

「だとしたらあんた、余程自分の占いってヤツに自信があったのか、さもなきゃただのあほだな。町を良くしたいんだかなんだか知らないが、そのワリに町を少しも判ってなかったと見える」

 平然と、でも痛烈に言い足してから、シュアラスタは何かを促すように傍らのミディアに視線を流した。

「で、何かって言うと、コレよ。あんたたちも見た事あんでしょ? コレ」

 言いながら、ミディアが軽く手を挙げる。その広げた掌に向って放り投げられたりんごよりも一回り小さな真っ赤な木の実に、占い師の一団はざわめきを漏らした。

「返礼のお菓子を入れて固める、木の実の器。シュアラスタの話じゃ、宝石なんかの宝飾品を回収するのにも使われてたみたいだよね、コレ。で、誰かコレのホントの正体、知ってるヒトいないの?」

 空中で危なげなくそれを受け取って顔の前に翳してから、ミディアは、レディ・ポーラ・フィルマを含む悪党以外の全員に真っ赤な木の器を見せつけるよう突き出した。

 不安げに顔を見合わせ、しきりに首を傾げる占い師ども。

 ミディアは、面白くなさそうに「ふん」と鼻を鳴らしてから、振り返りもせず赤い実をルイードに投げ返した。

「通称「風船花」。正式名「サバナサ」って、砂漠に生える低木の実。ご覧の通り被子は硬くて、くり貫くと中から…そうねぇ、せいぜいどんぐりくらいの大きさの種が出てくんの。で、問題は、その被子と種の間に目一杯詰まってて、種を護ってるワタなのよね」

 腰に手を当てる横柄な態度で、ミディアは占い師連中の顔を見回した。

「そのワタを乾燥させて粉に引き、何かに混ぜて火を点ける。と、無臭で淡い紫色の煙が出るんだけど、その煙がさぁ」

 あっはっは、となぜか彼女は笑い出した。

「吸ったら気分良くなるワケよ、これが」

 つまり…。

「麻薬だと…言うのですか」

 怪訝そうなレディ・ポーラ・フィルマに、でもミディアは「ちょっと違う」と手を振りながら答えた。

「マヤクってほど高級な名前貰って、天国見せてくれるようないいモンじゃないよ。常習性はないし匂いもないから、麻薬効果があったら大陸中で栽培され兼ねないじゃん? 確かに、大陸倫理委員会が出した禁止薬物条例では「準禁止薬物」に指定されてるけど、実際使ってるバカはいない」

 肩を竦めたミディアが、ふとシュアラスタに視線だけを向けた。

 不愉快そうな顔で紙巻きをふかす、シュアラスタに…。

「強烈なお人好しになるとか言ったら判りやすい? 難しく言ってもいいなら、思考能力を低下させて脳に一時的な空域を作り催眠状態に入りやすくする、って感じなんだけど?」

「意思及び意識低下を促す、即効性の高い薬物です。眠りに落ちる直前の、あのふわふわした状態を強制的に作り上げ、でも、眠りには落ちない。催眠術や…洗脳なんかを専門に行う人間になら、馴染みの深いモノですね」

 ミディアの言葉を攫って付け足したルイードが、手の中の実を空中に放った。

 シャァン…。

 微かな、金属の擦れ合う音。何が起こったのかと目を白黒させた占い師たちの眼前で、放物線を描いていた赤い木の実が、真っ二つに割れて別々に地面を叩いた。

「濃度によっちゃ、意識剥奪効果を極力低くすることも出来んのよ、これ。そう言う場合吸引したヤツがどうなるかっていうと」

「意思も意識もある。普通に振舞う。だが、相手の命令や…そう、例えば「占い」みたいな正体のない「言葉」を、これっぽっちも疑わずに信じ込んじまう」

 いつ誰が抜き木の実を割ったのか、占い師たちには見えなかった。しかも続くミディアとシュアラスタの言葉の意味がおぼろげに脳に浸透して来て、全身が強張る。

「その状態で催眠術なんかかけられたら、一発よ、ホント」

「はっ…はっきり、…おっしゃってください…。この館でいつから何が行われていたのか、はっきりとおっしゃってください!」

 からからに乾燥した喉で悲鳴を上げたレディ・ポーラ・フィルマを冷ややかに見つめ、シュアラスタは微かに笑いを貼り付けた唇で囁いた。

「あんたがここの筆頭になった頃から、待合室でこの薬物混じりの香が焚かれ始めた。と言いたい。そして、今回の持ち出し事件も、同じ頃に始まっていたはずだ」

 小さな声だった。なのに、最後尾で震える占い師の耳にまで、その声ははっきりと聞こえた。

(カンのいいコなんだねー、シュアちゃんて。それとも…)

 実は、とんでもなく頭がいいんだろうか? と今にもその場に蹲りそうな占い師たちの間を飄々と歩きながら、シャオリーは思った。

「OK? レディ。判らないならもっとはっきり言ってやろうか?」

 その含み笑いの声に、レディ・ポーラ・フィルマがぎくしゃくと顔を上げる。

 悪党どもは、占い師たちを冷ややかに感情の死んだ瞳で見下したバスターたちは、誰も彼も、いや、黒服の男一人を除いて、蔑んだように嘲笑(わら)っていた。

「当たるも八卦当たらぬも八卦、だよ。それがどんな結果で、どんな言葉で紡がれたとしても、依頼者は無条件でここの連中の言葉を「信じ切った」のさ」

「……………思い込んだんでしょう? レディ・ポーラ・フィルマの言葉は、絶対だってね」

 真冬の湖面を渡る凍えた風のような声が、チェスの美しい唇から滑り出す。

 一瞬で耳の後ろから全部の血液が蒸発してしまったような錯覚を起こしたレディ・ポーラ・フィルマが、がくりとその場に膝を突く。しかし、驚愕に顔をひきつらせた占い師たちは、誰も彼女に駆け寄ろうとしなかった。

「…質問をひとついいですか? バスター…」

 硬直した空気の中、そう掠れた声で呟きながらふらふらとレディ・ポーラ・フィルマに歩み寄り、震える彼女の肩を抱いてシュアラスタを見上げたのは、ネルだった。

「そろそろ佳境なんで、手短に頼む」

 紙巻を吐き捨てまた次の紙巻を唇に載せたシュアラスタの手元で、朱色の炎が燃え上がる。

「ではなぜ、二年も露見しなかった事が、今になってバレたんです?」

「バレるように仕組まれてたからさ、三月(みつき)前からな」

 答えて、シュアラスタはミディアに視線を送った。

「そ。三月(みつき)前、ってつまり、アタシがこの館に駆け込んだ頃なのよね。どこぞの赤屋根から逃げて来ました。そこではずっと違法な麻薬の調合をしてました。でも、アシがついて消されそうになりました。何でもしますから……助けてくださいってさ」

 けらけら笑いながら、ミディアは震えるレディ・ポーラ・フィルマを見下ろした。

「そこの筆頭様には、かるーく紹介されただけだけど」

「? それが…」

「アンタばかでしょ? ガキだしね。そっちのレディは判ったみたいだけどさ。その日からのアタシの仕事は、待合室の香を絶やさないように見回る事と、新しい香を調合する事。アタシをそこに潜り込ませてくれたどちらさんかの目的は、最初にアタシが見せてやった即効性の高いクスリを作らせて、もうちょい大き目の仕事を仕掛ける準備をする事だったみたいだけど、まさか仕事でも悪事の片棒担ぐワケには行かないでしょ? ほら、立場上さぁ。当然アタシは、誰にもバレないように待合室のクスリの濃度を落として、家から金貨なんかを持ち出してる連中に、「何かがおかしい」と気付くように仕向けてたってワケ。わかった? ボウヤ」

 呆れたように肩を竦めてから、ミディアはまたけらけら笑った。

「そんな事…?」

「出来るのか、なんて質問は受け付けないよ。毒液で産湯使ったミディア様に扱えないクスリは、この世に無いんだからね」

 出自は定かでない。しかしミディアには、「薬師(くすし)」という変わった肩書きがあるのだ。

「悪党の踏み込めないこの場所に逃げ込んで、二年もかけて地味に活動資金を溜め込んだトコ悪いがな、お前らの計画は見事に失敗したぜ」

 誰に向けて、なのか、シュアラスタは面倒そうにそう吐き捨てた。

「怨むなら自分にしなねー。間違っても、捨てた男からアシがついたー、なんて言い訳しないほうがいいよ。ね? マジシャン・ギャレイ」

 にこにこ顔のシャオリーが漆黒のベールで顔を覆った不気味な一団の前で足を止めると、もう一度「ね?」と小首を傾げた。

 ほぼ前庭の中央付近に固まっていた三十人ばかりの黒い集団から、周りの占い師どもが悲鳴を上げつつ遠ざかる。

「やぁだぁ! シャオの事忘れちゃったの? 何年も前だからしょーがないけどさぁ、まだアンタがカエルだんちょーとラブラブん時に会ってるじゃーん、シャオとぉ」

 先頭に立つ小柄な女…ではなく、その後ろに控えた巨漢の使用人の前で、シャオリーはさも愕いたような悲鳴を上げ、それから「えーん」と泣く真似をした。

「ぐすっ。シャオはさー、あれからずーーーーーーーっと探してたんだよ」

 黄色いツインテールが揺れる。小さ過ぎる肩と、華奢過ぎる手足と、まるで少女のような姿。いくら彼女が童顔だといえども、それは……何かおかしくないだろうか…。

 シュアラスタたちに「ルイード」という前例があるにしても、それは、異常だ。ルイードの真相を知るからこそ、そう思えるのか?

「……だってさぁ、シャオ、そのとき散々いろいろされちゃったのが原因で…」

 ぐす。とさも子供っぽ仕草で涙を拭う振りをしたシャオリーの腕が、瞬時に真下から衝き上がった。

「悪党になってまでてめーら追っかけてたんだよ、えぇ? このクソ魔女が!」

 小柄なシャオリーの背中が何倍にも膨れ上がったような錯覚。高速で胸を強打された巨漢はしかし、よろめいただけで倒れなかった。

「ハン! 全くしくじったね、このあたしもさ! 悪党どもに見つからずに稼げるいい場所見つけたと思って、いい気になり過ぎた。万一どこかで一件や二件見つかっても、こんなショボイ事件に首突っ込んでくるようなバカはいないと踏んでたが、いかんせん運が悪かったよ!」

 巨漢の女…マジシャン・ギャレイが怒号を発し漆黒のベールをかなぐり捨てた刹那、三十人からの黒服どもも同じようにベールとローブを投げ捨てた。

「しょうがないからねぇ、てめーら全員ぶっ殺して逃げ切ってみせるさ!」

「……そりゃ無理でしょ」

 逃げ惑う占い師たちの流れを見送り、最後に未だ愕然と地面に座り込んだままのレディ・ポーラ・フィルマに視線を据えて、シュアラスタは紙巻を地面に吐き捨てた。

「俺ちゃぁ、化けモン並に強いぜ?」

 その言葉を合図に、悪党どもも飛び出した。

  

   
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