第10回日本生活科・総合的学習学会神奈川大会 参加記録 |
1日目 6月23日(土) |
1 提案授業(相模原市立宮上小学校) 2 授業研究会(相模原市立宮上小学校) 3 課題別分科会(相模原市立旭小学校) 4 自由研究発表 * 懇親会 |
2日目 6月24日(日) |
1 パネルディスカッション(神奈川県立相原高校) 2 講演会(神奈川県立相原高校) |
1日目 | |
提案授業 宮上小学校 |
○ 5年2組「地域の人に弟子入りしよう」(75分授業) 地域のボランティア活動家に弟子入りして,実際に体験しようという実践。本時は「弟子入り体験で感じたことを話し合い,これからの活動を考えよう」がねらい。弟子入り先は「ごみ拾いボランティア活動家」「福祉を考える会」「境川を愛する会」など6団体(個人)。 それぞれの子がそれぞれの思いを自由に発表しあい,とぎれることがなかった。中には「やってもやってもごみはでる。一体どうなっているんだ」とか,「やったって仕方ない」という見解に達する子さえいた。教師はそれを分かりやすくウエビング法で板書していた。 ○ 5年3組「宮上弁当をつくってみよう オー!!」(45分授業) 地域の名産物を使って名物弁当をつくろうという実践。本時は「試食してもらい,宮上弁当にふさわしい一品かどうか見直そう」がねらい。採用された名産物は「鮎」「井上しょう油」「Kさんが作った米」「大和芋」「高座豚」など,多種多様。 それぞれの子がそれぞれの生産者を取材し,よさを身をもって認識している。それを献立に取り入れて弁当をつくる。そして弁当屋へ売り込みに行ったり,給食に取り入れてもらったりという学習へ向かう。何とすばらしい実践であろうか。地域の素晴らしさを体験し,それを自信を持って発信する。弁当屋さんや給食に採用されたときの子どもたちの顔が目に浮かぶ。 * 感 想 総合的な学習の時間で福祉やボランティアを実践した場合,学習の終末はどうなるのであろうか。自分の生き方を見直し,「ぼくたちも町をきれいにしよう」とか「お年寄りに親切にしよう」といった終末でよいのだろうか。そのうち必ず「やってもやってもごみはでる。一体どうなっているんだ」とか,「やったって仕方ない」という結末にたどり着くだろう。言い換えれば子どもに絶望感を味わわせることにもなる。中にはそれでもやり続ける子もいるだろうが。 総合的な学習の時間の終末がそういう形でよいのだろうか。その点,宮上弁当の実践はどうだろう。実に晴れ晴れとした結末ではないか。地域の素晴らしさ,そこに住んでいる人々の凄さを体験し,いっそう我が町を誇りに思うのではないだろうか。 |
授業研究会 宮上小学校 |
授業研究会は5年2組「地域の人に弟子入りしよう」に参加した。助言者は愛知教育大学の寺本潔教授。授業者から「本校では学級ごとにテーマを設定している。4年生での共通項“地域を基盤とした実践”“地域の人々とかかわった実践”を受け,各学級でテーマを設定した。」という話があった。これは私も賛成。「人と深く関わらせたい」「個々の体験を共有化させ,次の段階へと進めたい」という考えにも賛成。また,「この子の発見を広めたい」「この子の発見を生かしたい」という思いもすばらしい。なにより,子どもたちが75分延々と話し合いを続けたことがすばらしい。それぞれが自分の体験に基づく熱い思いがあるからこそだろう。この「熱い思い」を持てるかどうかが最大のポイントであろう。 助言者からは「子どもがいい(発言力)」「教師がいい(学級カリキュラムがしっかり学級に根ざしている)」「テーマがいい(人と深く関わっている)」という話があった。 おもな質問への回答は「個々の到達目標は不必要」「評価は,○○ができた,できない,ではないだろう」など。 |
課題別分科会 旭小学校 |
G分科会「総合的な学習の研修や研究の進め方」に参加。司会は横須賀・鴨居小の小川義一先生(MLのメンバーです),助言者は有田和正先生。 提案校の内容はテーマから少し外れ,自校の研究概要であった。それを指摘したのは鳴門教育大の村川教授。 研究校での研修や研究はスムーズであろうが,そうでない学校ではむずかしい。まだまだ意識の低い教師も存在する。そういう学校では研究主任が孤軍奮闘しているケースもある。これは私の発言。 有田先生からは「そういう学校こそおもしろいことをやるべき。子どもも教師もおもしろくなるような単元を開発する必要がある。」というお話が。 また,「総合的な学習の時間では特に授業を見せ合うこと」「子どもは3つの関わりを持たねばならない。つまり,教材とかかわる,友だちとかかわる,自分の学びとかかわる」「指導は3つの側面で。1つは見えないものを見えるようにする,2つ目は学び方を育てる,3つ目は学習意欲を引き出す,である」というお話があり,さらにレジメには「勉強しない教師は失格時代」と書かれてあった。まったく同感。 |
自由研究発表 旭小学校 |
2つの提案。1つ目は私の「生きる力を育てる総合的な学習の時間の実践―明治用水せせらぎ遊歩道のひみつを解き明かそう―」の提案。発表原稿をごらんになりたい方はここをクリック。 ML仲間の翠さんが機器の操作を手伝ってくださった。また,同じくML仲間の横須賀の小川さん,愛知の橋本さんも参加してくださった。 出されたおもな質問は「Y子のその後は」「情報の共有化の場面が少ないのでは」「学区外へ出かける際の手配は,また時間は」「自己評価と相互評価の方法は」 1つ目の質問には,環境問題へと目が向いていった結末を上記(3セル前)のような理由で反省していることを話し,情報の共有化は「情報掲示板を使えば毎日が共有化である」ことを説明する。「自己評価と相互評価」については,発表原稿の中に詳しく書いてあります。 もう一つの提案は1年生の生活科の実践。アサガオを題材としたすばらしい実践であった。 |
懇親会 平安閣 |
懇親会に参加する。参加されている方の中には著名人もたくさんおられる。言葉を交わす機会はなかったが,こういう場で意見交換できたらいいなと思う。 MLの小川さんとも交流が持て,私にとっては意義ある懇親会であった。 神奈川の関係者の方,たいへんお疲れさまでした。 |
2日目 | |
パネルディスカッション | 司会者は筑波大の谷川彰英氏,パネリストは中野重人氏,村川雅弘氏,そして幼稚園から岩本勉氏,小学校から新倉邦子氏,中学校から関口益友氏,高校から石井純一氏。 本大会のすごい点は,幼稚園から高校まで授業を公開したこと。高校では「課題研究」という形で取り組んでいるとのこと。 各パネリストの基調提案は次の通り。 中野重人氏(日体大): ・今までの教育はあてがいぶちの学校(国家・社会から,大人から,横並び学校),これからは子 どもから,ともにつくる,選択できる,体験の重視,がキーワード。 ・新しい時代。何を残して何を変えるか。変えようとすると必ず反作用がある。 ・学力低下。大学から火の手。小学校の学力はほんとうに落ちているのか,落ちていないのか。 落ちているなら何をなすべきか。学力低下には教育課程の次元でどうするのかを議論すべき。例 えば教科の内容はどうか,時間数はどうか,等。 岩本勉氏(幼): ・計画にフレキシビリティーが必要。思わぬ方向に進んでしまう。ゆえに総合性が求められる。 新倉邦子氏(小): ・教師の支援。学年TTで効果。子どもの願いの実現を。 関口益友氏(中): ・自分の専門教科に拘泥しないこと。教師の専門より個の興味関心を優先。 石井純一氏(高): ・課題研究で対応。1年間続くので個のテーマ設定がキーポイント。 村川雅弘氏(鳴門教育大): ・見えない学力と見える学力。見えないから測らなくてよいのか。教科書のない総合だからこそカリキュラム開発,単元開発に子どもの実態を生かすべき。学びの変化をしっかり見ていく。 ・アカウンタビリティー(自分の実践,子どもの変化をきちんと説明できるか) その他のおもな発言(質問への回答も含む)は次の通り。 岩本氏:子どもの自己課題の構造を分析。そこから支援が始まる。 村川氏:総合の到達目標は個別化。一人一人にその目標が積み上がっていく。全体の到達目標は意味を持たない。中・高は個の到達度を見極め,実態にあったカリキュラムをつくる。小学校ではどんな力がついているのか,では中学校ではこうしよう,という形で。 中野氏:幼・小・中・高の連携は総合的な学習の時間から。 谷川氏:総合的な学習の時間の本質が理解され切れていない。学力には基礎基本が重要。鉄棒式学力(ここまでは来なさいという到達度評価)と雪だるま式学力(個別の積み重ねる学力,形がゆがんでいてもあるがままをふくらませる)教科学習では鉄棒式,総合的な学習の時間では雪だるま式。 村川氏:身につけたい3つの力(学んだ力,学ぶ力,学びをささえる力) |
講演会 | 演題「21世紀を生き抜く教育の創造」 講師:嶋野道弘氏(文部科学省視学官) ○21世紀の有能性……総合の存在意義 今,学ぶことが有能なり。今,学びたいことがありますか。今,学び合う仲間がいますか。自分の有能さを生かせる場がありますか。 子どもの学びは「ものが見える」こと。感じ,考え,表現することを日常化させる。知の油断を招かないように。 ○ これから何をなすべきか。 能動的主体的学習観をもった子。「習ってないから」「道具がないから」「時間がないから」といった消極的学習観を払拭。そのためにぜひ「学んでよかった」という場を。知は無限。 ○ どう支えていくか。どう創りだしていくか。 学校にそれだけの体力(学校力)があるか。ビジョンを示す人(校長)とそれを受ける人(教師)との間に双方向発信の関係があるか。 インフォーマルな研修(放課時の雑談や喫茶店での談笑などを通して)があってもよい。 地域の社会的風土の醸成(学校が推進役)学校で学んだことが地域で生きる,地域で学んだことが学校で生きる。 学校は自省を。今まで通りでよいか,時間がないを言い訳にしていないか,など。チェックリストを作成して定期的にチェックを。 ○ 教育は未来……ロマンであり希望である。 一度校歌の歌詞を見直してみたい。そこには願いが込められている。子どもも教師も「いいこと」が語れる学校づくりを。教師は,ひるめば後退,おごれば子どもが見えない,かたよれば信頼をなくす。 |
付録 横浜ラーメン博物館 |
終了後,同行の翠さん,そして平子さんの3人でラーメン博物館へ行く。平子さんはパソコン購入次第MLに登録するとのこと。筑波大で修士号をとった新進気鋭の若者。 |
6月22日(金) 1日の仕事を終え,18時48分の望みで横浜へ向かう。名古屋駅でメンバーの翠さんと合流。翠さんは1泊2日の宿泊研修を終えたその足で名古屋駅へ。車中で駅弁で夕食。新横浜着後直ちに横浜線乗り換え。橋本着は21時頃。予約してある橋本パークホテルへチェックインする。原稿を読み直し,少々手直しして就寝。 |
6月23日(土) 7時起床。昨夜コンビニで仕入れたパンと紅茶で朝食。再度原稿を読み,8時半出発する。 宮上小まで徒歩で10分弱。要所要所には保護者らしい方が看板を持って案内しておられる。受付へ向かう。受付にはMLの小川さんがおられた。お互いに自己紹介する。ほのぼのとした気分になる。同じ市内に勤務するO先生に会う。O先生も休日返上自費での参加とか。お互いに労をねぎらう。また,平子氏とも久しぶりの再会を果たす。 校舎内へは靴のまま入ってよいということである。靴を持って歩かないで済む。これはたいへんなサービスである。感謝,感謝。 宮上小で弁当を食べ,午後からの会場旭小へ。弁当は少々不満。翠さん,平子さんと旭小へ向かう。案内の方が立っておられ,迷うことなく10分ほどで到着。ここでは残念ながら靴を持って歩くことに。 はじめは課題別分科会。有田先生と久しぶりの再会である。かつて研究発表会でたいへんお世話になった。二言三言言葉を交わすが,何となく体調がよくなさそうに見受けられた。 さて,いよいよ自由研究発表。出番だ。日程の最後である成果,帰ってしまった方が多く,参加者は20人ほど。やや落胆する。無難にこなし,本日の日程すべて終了。機器操作を担当してくださった翠さん,ありがとうございました。 翠さんと駅前でコーヒーを飲む。6時からの懇親会まで時間つぶし。 平安閣で懇親会。有田先生との会話を楽しみにでてきたが,あいにく欠席されるようだ。やはり体調不十分なのだろうか。小川さん,たいへんお世話になりました。 終了後,ホテルへもどる。11時頃就寝。 |
6月24日(日) 今日は日曜日。7時起床。簡単な朝食を済ませ,会場の相原高校へ。駅からは案内の方々っておられ,最短距離を通って会場へ。駅からは5分程度。 すばらしくきれいな学校である。よく手入れされた樹木や芝生,そして落書きやごみもまったくない。会場は体育館。すでに人であふれている。恒例の出版社の出店を見るが,特にほしいものはなかった。こういう場合,なかなか使えるのが無料で配布されているパンフレット。今回は光村図書のリーフレット「ホップ・ステップ・ジャンプ16号」がなかなかの内容であった。 パネルディスカッションは幼稚園から大学までのパネラーをそろえた議論が有意義であった。正直言って幼稚園の方のご意見を聞く機会はなく,真剣に考えておられる様子に感服した。 12時30分終了。翠氏,平子氏とラーメン博物館へ行ってラーメンを食べることにする。2時頃着いたが,地階にある各店はたいへんな行列。最も人気のある店は75分待ち。めんどうなので最短の店の列に並ぶ。それでも15分待ち。その割にはたいしたことはなかった。いつも行くベトコンラーメンがやはり最高である。これを超えるアジにはまだ出会わない。 3人一緒に3時過ぎののぞみに乗って帰名。 2日にわたる研究発表会であった。それも休日返上で,おまけに自費参加。しかし,それに見合う,いやそれ以上の得るべきものがあった。行かされる研修と違い,自らの意志で参加する研修である。意欲的になって当たり前ではあるが,それにしても満足感で一杯である。来年の水戸大会にもぜひ参加しようと思う。 |