日本生活科・総合的学習教育学会 茨城大会

自由研究発表 「私の考える総合的な学習の時間 ―総合的な学習実践10か条― 」

発 表 原 稿

 ・ 私の実践から自分なりにまとめた10か条
 ・ 今までの実践
   6年度「植物を大きく育てる魔法の土をつくろう」
   7年度「学区の環境マップをつくろう」
   8年度「今と30年前の学区立体地形模型をつくろう」
   9年度「原始の火をともそう」
  10年度「ケナフを育てて紙を作ろう」
  11年度「手づくり修学旅行」
  12年度「明治用水遊歩道」    以上,7つの実践
―わたしの思い― 
1 総合的な学習の時間のとらえ方が年ごとに変わってきた。
 ・ 総合的な学習の時間における基礎・基本の大切さを痛感
 ・ 「自分の思うように学習が進められない子」例えば,取材などを通して得た情報を自分のものにで
  きない子,自分の感動や発見をうまく文にまとめられない子,自分の思いを発表できない子,まとめ
  の表現物作りができない子など
 ・ 教師が「こうしてみたら」「こういう方法もあるよ」などと声をかけ,ともに追究していくという
  姿勢が欠かせない。
 ・ 基礎・基本の身についていない子にとっては「体験あって中身なし」
   「基礎・基本」とは何か?→資料が読めない,文が書けない,まとまられない,計算ができない,
  図表やグラフが書けない,発表できない,など
 ・ こういった力がなければ総合は中身のないものになってしまう
 ・ 事後のアンケートでは「楽しかった,おもしろかった」
   しかし力がついていない。
2 総合をどうとらえるか 
 ・総合的な学習の時間は「知の総合化」
 ・「知の総合化」とは?・・・・(そのねらいは「生きる力」を育てること)
  子どもたちが学校や生活で身に付けた知識や技能を,そのとき,その場の状況に応じて活用し,働くよ
 うにすることである。まさに「基礎・基本」
 生きる力をどうとらえるか
 「生きる力」とは,子どもたちが学校や生活で身につけた知識や技能を,問題に直面したとき,その場の
 状況に応じ,活用し,働かせることができる力である。
3 どのような総合を構想するか 
 ・ ぜひとも力をつけてやりたい,という教師の願い
 ・ 総合的な学習の時間における「基礎基本」を洗い出す。
 ・ 教科学習と関連を持たせた総合
   教科学習での基礎・基本と合致する。これを教師側のねらいとして確実におさえておく。
 ・「つけたい力」・・・・学習スキル
  @追究する力(問題を発見する力/計画を立てる力資料を集める力/資料を活用する力/事物を観察す
   る力/集めた事実を分析する力/自分なりに判断する力
  A自分の思いを表現する力(作品(レポート,新聞,パンフレットなど)にまとめる力/発表する力,
   その他の表現する力(劇,音楽,ダンスなど)
  B学習をふり返り,高めていく力(自分の学習を評価する力/お互いの学習を評価し合う力/自分の生
   活を見直す力)  
  つけたい力をさらに具体化した単元構想図の作成
 ・ 力が身についた子どもは(目指す子ども像)
  「その時,その場に応じて知識や技能を柔軟に組み替え,新たな形で働かせることができる子」であり
  「直面する様々な問題をよりよく解決するために,たりないもんを探し出し,他のもので代用し,それ
  でも見つからないときは自ら創り出すことができる資質や能力を身につけた子」
   つまり,問題に直面したとき,やれる!という積極的な姿勢が持てること。確かな学力を元に,解
  決への見通しが持て,そして取り組んでいける子を育てる。
 ・ ではどのようなところから学習材を求めるか?
   新指導要領の厳選された内容(最低基準,質の高い学習)を行っても,成果がばらばらであれば確か
  な学力とはなり得ない。各教科での成果を互いに結びつけるのが総合的な学習の時間の役割である。
   これを達成させるために小学校の発達段階では教科と深く関わる学習が期待される。(教科発展型の
  総合)  
 ・「自ら課題を設定し,自ら学び,自ら考え,個性を生かしながら問題を解決する」が小学校でどこま
 で可能か。小学校でできること,小学校でしなければならないことは何か?
   そういった意味からも教科発展型で教科学習との連携をすすめるべき。
   本校では教科学習とのリンクを明記した単元構想図を作成 
  小学校:教科自体の発展的な知の形成 中学校:教科間で関連づけられた知の形成
  高等学校:総合的な知の形成      (玉川大:山極氏 教職研修6月号)
4 誤解される「子ども中心の学習」
  実際に進めるにあたって注意すべきこと。
 ・支援という言葉に惑わされないで,「わからないことは指導する」が原則
 ・「確かな学力」を身につけさせようとすれば教師の意図的,系統的な指導性の発揮が最重要となってく
  る。
「総合的な学習は子ども中心でやるんですよね」と言う人がいる。まったくその通りだと思う。ところが,その後に驚くような言葉を吐く人がいる。「子ども中心だから,教師は何もしなくていいんですよね」これは大間違いだ。どこが間違いかというと,「子ども中心」と「教師は何もしなくていい」を「だから」で結ぶ点である。もし,両者を「だから」で結びたいのならこうなる。「子ども中心だから,教師の意図性や指導性の発揮がいよいよもって重要になってくるんですよね」子ども中心の教育とは,放任でも迎合でも,いわんや教育放棄でもない。子どもの夢や願い,気がかりや着眼,彼らを取り巻く生活現実に依拠しながら,教師から見ても教育的に価値ある内容を,意図的,計画的にしっかりと実現していく教育のことだ。    (立教大:奈須正裕氏 月刊誌「悠はるか」6月号)
5“総合的な学習の時間”実践のための10か条
  私の7年間の実践を元に,思うところをまとめたもの。
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6 まとめ (私の主張)
 1) つけたい力を明確に
 2) 教科学習での成果を互いに結びつける学習展開を(教科からの発展が望ましい)
 3) 教科学習とのリンクを
 4) 目的を達成させるにふさわしい単元開発を
 5) 目標達成のための指導の見通しを
 6) こまめに評価活動を