すり抜けするメルセデス
00.9.1
ツインカムトラックなんてこれも信じられませんね | |
すり抜けするメルセデス 1980年(昭和55年)頃、3気筒シャフトドライブのヤマハGX750で中央高速多治見付近を名古屋に向かって走っていました。 その時です、後方から派手にパッシングをかけながら一台のクルマが他のクルマを掻き分け掻き分け近付いてきました。 私はしばらく意地悪して避けないでいましたが、やがてこのバカベンツに身のほどを知らしめてやろうと思いました。 な、なんとーっ、軽く振り切った筈なのに、真後ろにあのバカベンツが、 しかもミラーで見ると年は私と同じ30代くらいのドライバーが、ハンドルから両手を離してのけぞって笑っています。 私は一瞬の内に頭に血が上り、 「こいつにだけは何があっても負ける訳には行かないっ」と決心しました。 即座に、今度は全力ですり抜けを開始しました。 「なんちゅう強引な!」 その後しばらく走るうちに私とメルセデスの差は徐々にに広がり、やがてメルセデスは視界から消えました。 はじめて知ったオートバイの極限走行 その内前方で進路をふさいでいた数台のクルマの前に出ると、その先はがら空きでした。 (高速道路ではこういう事はかなり良くあることなのです) ところがこの時、私の中で何か不思議な事が起こりました。 次のコーナーにどういう角度で入り、どの辺でアクセルをこの程度開けたら、後輪が少しだけ滑ってスムーズに抜けて行く、という事が手にとるように分かったのです。 そして愛機はその思った通りの走りをしました。 その後ほぼ全てのコーナーで自分としては経験した事のない理想的な速さで走り、しかも走りの全てが思い通りで正に悦楽の境地、至福の一時、バカベンツの事などはすっかり忘れてしまいました。 勝負の世界では良く集中心などという事が言われますが、本当に集中すると人は思いもよらない力を発揮するものだと自分で体験して良く分かりました。 この時以後、これと同じ走りが出来た事はありません。 |