日本車の個性とは(5)

私が思う日本のメーカーの問題

07年1月7日


パブリカ800
 
日本がいいクルマを作るにはどうしたらいいかということについて、マツダ・ロードスターの開発責任者だった立花啓毅さんは自著「愛されるクルマの条件」のなかで、クルマについて十分良く知ってる人が責任者になって作るべきだということを書いています。

これは確かにそういうことはいえるんだろうと思います。エンジンのようなものでさえ日本ではかなり分担制となっており、「究極のエンジンを求めて」などを読んでも兼坂弘さんがトヨタを訪問すると各部門の専門家が5,6人も出てきたそうです。これはトヨタは丁寧な応対をしてると言うことですが、うらを返せば一人で応対できる人がいないということです。分担制になりすぎると全体としての整合性とか意思のようなものが希薄になりますね。

エンジンでさえこうなんですから、クルマ全体について大変良く知ってる人も少ないでしょう。また欧米のようにそういう人を外部から呼んできて開発責任者にすえるということも難しいでしょう。またそうしたことは日本のメーカーではすべきだとも思えません。となると会社の中にそういう人材を育てることが必要となりますが、日本の会社ではこれがなかなか難しいように思います。

クルマを良く知ってる人というのは若いころから自動車趣味があって自動車会社に入社し、経験を積んでクルマについてさらに深く知った人ということになります。日本のメーカーで開発責任者になる主査などの肩書きの人は製品企画室のような部署の人ですが、こういう人は入社直後はボデー設計などの現場をまず経験し、何年かしてから製品企画室に配属されますが、どこの部署も大変仕事が忙しく、まず自動車趣味を継続するのが難しいということがあります。

ただしこの点は最近はかなり改善されており、30年前のように月の残業が80時間以上などということはこのごろはなくなったようです。しかしもっと問題なのは肝心の自動車趣味の人が自動車会社にどれだけ入社するのかということです。自動車会社の技術部門に入社する若者のうち、自動車に深い情熱を持っているものがどれだけいるかということですね。私の知る限りこれは大変少ないようです。このことが、日本が本当にいいクルマを作るうえでもっともネックになっていることではないかと思います。

何故こうなるのかといえば、やはり自動車趣味というものが今の日本ではあまりいい趣味に思われていないことが原因だと思います。だからクルマが本当に好きな人がメーカーに少なく、「お仕事」でクルマ作りをすることとなるのではないでしょうか。自動車趣味を社会的に認めてもらうようにすること。これが回り道のようですが、日本が本当にいいクルマを作るうえで最も重要なことだと思います。

黒田さんのような自動車趣味の方が畏れ多くも天皇のご息女と結婚なさったことは、そうした意味で大変喜ばしいことだと思います。いい方向には向いていると思うんですが。

 
オープンは昔の車のほうがかっこいいですね
   

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