サイドカーショップ


 

「100%側車車検付き」

(ケンテック 1985〜1999)

 
 サイドカーを仕立てようとした際に最も悩む事がどのショップにしようかという事でしょう。
サイドカーは仕立てるものであって、完成された自動車やオートバイを注文して購入するのとはワケが違います。

そもそも自動車やオートバイについては、その乗り物がどういう物であるかという事は我々は良く知っており、雑誌にも試乗記などがしょっちゅう掲載されますから、そうしたものを良く読めばおおよそ自分の求めている物が比較的簡単に決められます。
また自動車やオートバイに付いては、例えば良いハンドリングとはどういうハンドリングなのかという点に関してもかなり煮詰まったものがあり、雑誌を読んで知る事もできます。

例えば最近ではロータス・エリーゼやMVアグスタF4のハンドリングなどが高く評価されており、我々はこれらの自動車やオートバイに実際には乗っていなくとも、おおよそこんな感じなのだろうという事を知る事が出来ます。

 ところがサイドカーというものは肝心の「良いサイドカーとはどういうサイドカーなのか?」という点に関してさえ、はっきりとしたものを雑誌で読んだという記憶はありません。
実際には現在日本に20店近くあるといわれるサイドカーショップが、それぞれ自分なりに良いと考えられる方法でサイドカー作りをしており、しかも仔細に見るとサイドカーショップごとにかなり考え方が違う場合があるというのが現状のようです。

 こうした事はいざサイドカーを仕立てようとする人にとってはとても分かりにくい世界だという事になりますが、しかし,であるからこそますます摩訶不思議なサイドカーに魅力を感じるという人もいるでしょう。(そう来なくちゃウソでっせ旦那)

サイドカーおよびサイドカーショップについて早く良く知りたいという場合にはJSC(日本サイドカー連盟)のようなサイドカークラブに加入するというのも良い方法でしょう。(私は加入してませんが。独自に探求するというタチなので。)

 サイドカーショップの経営者とはもともとはオートバイ屋さんであった人、他のサイドカーショップで働いていた人、サイドカーファンが嵩じてサイドカーショップを始めた人などが多いようですが、得意分野も技術レベルも、サイドカーに対する考え方も各人各様なようです。
こうした光景は英国のキットカー・メーカーにも似たところがあります。

 サイドカーショップを決めるときに「良く話を聞いて納得できる店を選べ」という事が昔から言われますが、何年もサイドカーショップを経営している人はサイドカー初心者がどんな事を聞きたがるのかはおおよそ分かっていますから納得させるのは簡単であると言えるでしょう。
(そもそもお客さんの方も納得したがっていますから)

 例えば側車輪ブレーキは普通は本車後輪と連動させますが、前輪と連動させるようにできるショップもあります。
ただし、そうした物が作れるショップが常に技術があると言えるのかというと一概にそうとは言えません。

これは決してある特定のショップの事を指して言っているのではなく、あくまでも一般論としてですが、他のショップでは出来ない物を作るには作ったけれども、性能や品質には問題があるというのでは困ります。
ある本車に対しあるショップではサイドカーの取り付けができないと言い、またあるショップではできると言ったなどという場合にも、必ずしも取り付けできると言ったショップの方が優れているとは言えません。
もともとその本車にサイドカーを取り付けるのは強度的に無理だったなどという事もありうるからです。

 側輪ブレーキの件ですが、この場合本車ブレーキとのバランスが大事で、私のサイドカーでは本車後輪と連動していますが、フットブレーキを掛けたときには少し側車側に寄り、前輪ブレーキを掛けたときには少し本車側に寄り、どちらも掛けると真直ぐ止まると言うセッティングになっています。

私のサイドカーは京都のケンテック(1985〜1999年)で取り付けをしてもらいましたが、ケンテックでは側輪用のブレーキを何種も用意しており一番合う物を取り付けたと大月さんは言ってました。
実際に棚の中には種々のブレーキ・キャりパーがいっぱい並んでおり感心させられました。
もし側輪用のブレーキが一種類しか用意していないショップだったら車種によってはうまいバランスを出す事は難しいかもしれません。

 CBX750FBサイドカーの時に何度か追突の危機を経験、側輪ブレーキの必要性を痛感し、当時面倒を見てもらっていたショップで側輪ブレーキの装着を相談しましたが、そのショップでの回答は「側輪ブレーキを付けると真直ぐ止まらなくなりますよ」と言われてあきらめたと言う事もあります。

この時はもう2年近くサイドカーを経験した後だったのでさすがにそれはおかしいんじゃないかと思いましたが、サイドカー初心者だったら「そんなものなのか」と思ってしまうかも知れません。(真っ直ぐ止まる様にするのがサイドカー屋さんのお仕事なんですね)

なおこの店ではアールズフォークの作成、サス強化も依頼しましたが「考えておきます」という事で後は連絡が無く、なし崩し的に断わられました。(やる気のない店に無理の頼んでもいい事はないのです)

 本車ブレーキと側輪ブレーキの効き具合の配分を調整できるという物もあるようですが、聞いた話としてはそうした物の中には調整したのにすぐに狂ってしまうという物もあるようです。
側車の塗装なども最初に乗ったCBX750FBサイドカーの塗装はかなり良かったと思いますがST1100サイドカーの塗装は明らかに質が悪かったようです。

 アールズフォークは通常左右のフォークを下部で連結して剛性を上げますが、この連結が無いという物もかつてあったようです。(今もある?)
またあるショップで「アールズフォークを付けるとハンドルの復元力が小さくなるからハンドルシミーは返って大きくなる」と聞いたこともあります。

復元力の大きさがシミーの原因なんですから、これは明らかに間違いなのですが(この点についてはSC10アールズフォークで述べます)、ではこのショップはだめなのかと言うと、必ずしもそういう訳でもなく、つまりサイドカーという物は(特に日本では)はっきりとした理論に基づいて作られていると言うよりも経験と勘によって作られている部分が多いようです。

理論は大した事ないがちゃんとした物を作ると言うのは、例えば職人の仕事とはそうしたものです。大工さんは構造力学なんて知りませんから。

 こうした事を全て良く知るという事はかなり難しい事で、おおよそ信用できそうなショップだったらそれで構わない、という場合は良いですが、出来るだけ自分で納得の行く物を仕立てたいという場合には、先ず格安の中古サイドカーを購入するのが良いのではないかと思います。

 それはサイドカーという物を良く知るには先ずサイドカーを入手して乗って見なければ分からないという事があるからです。
私自身サイドカーに乗る前と1年でも乗った後とではかなりサイドカーに対する理解度は違っていたし、また考えや好みが変化した部分もあります。GTUスタイルに対する考えなどは180度変わりました。(SC6 GTUスタイル考参照)

さらに、ここが大変重要なところなのですが、一から仕立てる高価なサイドカーは「一生物」ですから長持ちしてもらわなければなりません。
ところが初めてサイドカーを購入した直後というのは初めての乗り物が面白くてあっという間に1万qくらいは走ってしまうようで、しかも技術が伴っていませんから車両にかなり無理をさせてしまいます。

 格安で購入したサイドカーであれば少し無理をさせてもあまり気にならないし、これに乗って各地のサイドカーショップを訪ねるというのはうまいやり方ではないかと思います。
しかもサイドカーというものはサイドカーであるというただそれだけで(ちゃんと動きさえすれば)そこそこの値段で誰かに買ってもらえるようで、私のCBX750FBサイドカーの場合も雑誌に広告を出したら10人くらいの人から問い合わせがありました。

 上でサイドカーショップは千差万別だという事を述べましたが、専門のサイドカーショップである限りいわゆる悪質なショップというものは無いようです。
ただしサイドカーは大メーカーで作っている訳ではありませんから技術やサービスなどが万全であるということもなく、何かの取り付けなどをしてもらった後で不満が残るということも往々にしてあると思います。
特に技術というものは研究心と資質と経験ですから、単に長くやってるからいいというものでもないですね。

 CBX750FBサイドカーを売却する時には出来るだけ良い状態にして別れたいと思い、かなり疲れが見え異音も出ていたエンジンを当時面倒を見てもらっていた前述のお店でオーバーホールしてもらった事がありますが、実際にしてもらえたのはエンジンをばらしてまた組み上げただけで、エンジン部品の交換もなく、従って異音も消えていないという状況でした。
(そもそも代金も9万円で、オーバーホールの値段ではありませんでした)

結局9万円は全く無駄だった訳ですが、よほど苦情を言おうかとも思い喉の辺りまで出かかりましたが、オーバーホールの内容をはっきりと言わなかった自分にも責任があると言う事でホコを収める事としました。
もっとも、ただばらして再組み上げをする事に何の意味があるのかかなり疑問に感じましたが…。
なおST1100サイドカーはケンテックで購入したのでその代理店でメンテをしてもらいました。

 サイドカーを仕立てるときの契約書は、私はケンテックでしたが思いのほか細かい事が沢山書いてあって意外に思いましたが、どうも出来上がった後のトラブルというものもかなりあるためのようでした。
サイドカーを買おうとする人はみんないい人と言う訳では必ずしもないようで、試乗車に乗ったままどこかへ行っちゃったなどという事もどこかであったらしく、オートクラフトにもお客さんから預かった「書類のない」TX750が長く置いてありました。
そういえばあの「犬の調教師」もハーレーのサイドカーに乗っていたようです。

 「納期が遅いのがサイドカーの特徴だ」などという言葉もあるようですが、約束の納期から3ヶ月以上たっても完成せず、結局他のサイドカーに替えたと言う人もいます。
この場合注文したサイドカーを代わりに引き取ってくれる人がいたから良かったようなものの、下手をしたらあと何ヶ月待てば良いのか分からないと言う状況でした。
注文する時には納期の事はちゃんと決めておいた方が良いと思います。

もっともサイドカーは、特に店にとって始めての本車の時にはなかなか思い通りに事が進まないということもあるでしょう。余り急かすのもいいことではないですね。
かつて太田政良さんのお店ではでは 「何時出来るのか聞いてはいけない」 と言うルールがあったそうです。

 
トライアンフ T110

Lesney Matchbox (英)

   

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