第九章 油揚げ
ある晴れたすがすがしい朝のことです。
裏の川べりの草地の方からとてもおいしそうな良い匂いがしてきます。
近づいて見ると カラスのカー子が一心に揚げたての油揚げをついばんでいます。きっと近所の豆腐屋さんのところからいただいてきたものでしょう。
P坊はそ知らぬ顔で近づくと、カー子に朝の挨拶をしました。
「おはようカラスのカー子様」 カー子は油揚げから嘴を離すと、可笑しそうに言いました。「おいおい、カー子様だけは止めてくれよ。羽根の下がムズムズするじゃあないか。お互いに仲のよい友達同士なんだから」 P坊は「そうだよな、とても仲の良い友達だよな」と言い、そこで初めて“油揚げ”にきずいたような顔をして、「その油揚げ、二人で仲良く分けようじゃあないか」と言いました。
カー子は少し困ったような顔をしましたが、機嫌がいいのか、「まあいいいよ、君と僕の仲だから。口の数で分けることにしようか」と提案しました。
「いや、足の数で分けよう」 P坊はたたみかけました。
カー子はあきれたような顔で「いや、口の数だよ」と言い張ります。
そこへ、やはりいい匂いを嗅ぎつけて子猫のニャンコもやって来ました。
三人はその“油揚げ”を三っつに分けておいしそうに食べました。
第十章 いじめっ子
めぐみさんの家の近くに小学校があります。
P坊が草原で遊んでいると、突然、四五人の下校途中の男の子達がやってきました。
男の子達は P坊 を見ると、「メグサの羊だ」 「メグサが飼っている羊だ」 「やっつけてやれ」 「叩いてやれ」と言いながら木の棒を持って追いかけてきました。
じつはP坊も頭の上に立派な角が生えかけていました。
羊は戦う時は頭を低く下げ、相手に挑みかかります。そうして相手の体を空中高くほうり上げるのですが、P坊はそんなことは知りません。
体の何箇所も棒で叩かれながら、やっとのことで逃げ帰ってきました。
でもこのことをめぐみさんには言いませんでした。
BACK HOME TOP NEXT