第十一章  交番で
めぐみさんの家の近くに交番があります。
レンガ造りのとてもきれいな交番でいつもお巡りさんが一人います。
ある日の夕方、P坊はめぐみさんに連れられて、この交番の前を通りました。
すると、お巡りさんが飛び出してきて不審そうな顔でしばらくP坊を見てから言いました。
「どう見ても、この動物は羊のようだが」
それからお巡りさんは分厚い法令集を取り出して言いました。
「家畜は “道路交通取り締まり法”、ならびに“車両法”により、軽車両として扱われる」
お巡りさんは、又別のページを開いて言いました。
「軽車両は夜間前方に前照灯、ならびに後方に尾灯もしくは有効な面積をもつ赤色反射板をつけなければならない と書いてある」 
「明日の夜必要な装備を装着して、出頭しなさい」
これでは、次には“方向指示器”を付けるように言われるかもしれません。
めぐみさんは夜はP坊を連れて歩かないことにしました。


  
              第十二章  番犬

白い羊達が暮らしている河原の上流で大きな橋を架ける工事が行われていました。
そこには恐ろしい番犬がいて、おいしい草が茂っているのですが、羊は入れません。
ある日のこと、P坊を含め、五匹の若い羊達はそこを探検することにしました。
行ってみるととてもおいしい草です。羊達は夢中になって食べていました。
その時、突然獰猛なうなり声とともに大きな犬が羊達に襲い掛かってきました。
白い羊たちはすぐさま敏捷に逃げてしまいました。
しかし。飼われているP坊は早く逃げられません。
すぐに犬が追いついてきて、後足に咬みつかれてしまいました。
倒れたP坊の背中に再び犬が鋭い犬歯を突きたて振り回そうとしました。
その時です、空中からカラスが一羽、急降下してきて、鋭利な嘴で犬の頭に一撃を加えました。
カラスは執拗に犬を攻撃したので、とうとう犬も愛想を尽かして、去っていきました。
黒い子猫に連れられてめぐみさんも助けに来てくれて、イソジンで傷を処置してくれました。
P坊はあまりの痛さで気が遠くなっていたので、カー子にも、ニャンコにも助けてもらったお礼を言えませんでした。
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