Carnival
  NO.1 
                                    

                                      アーモンドの花祭り
                                                    (シチリア・アグリジェント)
 
 

 

2月のある日、大好きなイタリアの旅に出た。

目的地はシチリア。そう、「ゴッドファーザー」や、「ニューシネマパラダイス」、

マフィアや、テロや、そんなので有名なイタリアのブーツの先の、

さらに先にある島。

アリタリア航空でローマから乗り継ぎ、カターニャまで行き、

そこからさらに車で、南イタリアの避暑地タオルミーナまで一気に行った。

小型バスで迎えに来てくれた、ツアーコーディネーター(?)のじいさんが、

ブラッドオレンジ(血のオレンジ・シチリアの名産品で、果肉が血のように赤いが、

甘くておいしい)と言う、シチリアらしい物騒な名前のオレンジを箱ごとくれ、

ツアーのみなさんと分け合い、強行軍のために夕食なしの、

ひもじい空腹をまぎらわした。


今回の旅行のお目当ては、「カーニバル」。

2月になると、あっちこっちでお祭りが始まる。

一度行ってみたかったのが、有名なベネチアの「仮面カーニバル」。

でもせっかく行くなら、それだけではもったいない。

それで色々と欲ばり、シチリアの「アーモンドの花祭り」、

ニースの「光のカーニバル」まで入ったツアーを、

見つけてしまったのだ。

有名なカーニバル開催中は、個人で行くとホテルはとれないし、

荷物は重いしで、ツアーが一番ラクである。

おまけに今回のツアーは15日間と長いので、参加者も10人ほどの

少人数でいい。(しかしジイさん、バアさんばかりだったが。)

おまけにバスの運転手、アンジェロは真っ黒な髪とブルーの瞳を持った、

24才のかっこいいナポリターノ。

言うことないね、もうこれだけで幸せな旅になりそうだ。

なにはともあれ、高まる期待(なんの?)を胸に、シチリアの旅は始まった。

 

                                      イタリア屈指の避暑地・タオルミーナ

                                      
映画「グランブルー」の撮影地でも有名。エトナ火山がある。

 

石の家々に、オレンジ色の屋根、オレンジの木やアーモンド、

ブーゲンビリア、ミモザの花が咲き、下には紺碧の海が見える断崖絶壁の町。

朝一番の散歩に出かけたら、若いニイちゃんから、

「ボンジョルノッ!」と声をかけられる。70ぐらいのジイさんからも、

「あんた、どこから来たかいのぉ?」と話しかけられた。

「日本だよ」とそっけなく答えたら、「おおっ、日本、東京か? わしは、70年ここに住んでいるぞ。

日本には、こんなアーモンドの花なんか、咲いているか?」

「咲いていないよ。」と、またそっけなく答えたら、

「アーモンドの実は、あんたの目のようだ。ビーュテイフル。」と

お世辞を言われた。ジイさんから言われても、うれしくない・・・・。

 

                                    昼食を食べたレストラン

                                                   お店のオーナーの子供(6才ぐらい)が、テレながらお店のカードをくれた。                                                                       メニューは前菜にクリーム味のリゾットメインは魚料理。
                                                                         どちらもおいしかった。 
 

 

                                             タオルミーナの街角 

                                             ちょっと路地を入ると、思いっきり
                                     ロマンチックな雰囲気に。

 

食事を終えて、街のメインストリートをブラブラ歩きながら、

ウィンドウショッピング。なにしろ日曜日だから店が開いていない。

しかしイタリアも不景気のあおり、ポツリ、ポツリとは開いているところもあったが、

なんとなくシケた感じがする。

たまたま入ったBAR(バール)で、エトナ火山をかたどったアーモンドのお菓子が売られていた。

マジパンのようなこのお菓子は、ここらへんの名物だそうだ。

そのお菓子をレジで買っていたら、「セニョリータ!」と思いっ切り、肩をたたかれた。

後ろを振り返れば、朝のジイさん・・・・。

真っ昼間から酒をあおったジイさんは、しごくご機嫌で、

エトナ火山のお菓子の説明を、全然わからないイタリア語でしだした。

つかまってしまったが最後、ジイさんの話に終わりはなく、フムフムとうなずきながら

タオルミーナの午後は過ぎていく・・・。

 

                                                 タオルミーナの町にて

                                                 
写真を撮っていたら、近くにいたニイちゃん、ネエちゃんたちが
                                               わらわらと入ってきた。さすがラテン系、異常なくらい明るい。 

 

翌日、タオルミーナを出発後、数多くの遺跡が残るシラクーサへ。

ギリシア劇場跡とパラディーブの石切場を見て、さっさと次のピアッツア・アルメリーナへ。

3〜4世紀のモザイク絵の残るカザーレ別荘の見学だが、

遺跡もモザイクも、ほとんど興味がない。生あくびばかりが出た。

外は雨が降ったりやんだりの、コートが手放せない寒さだ。

バスの車窓からは、オレンジ畑ばかりが見える。

郊外のBARでオレンジジュースをたのんだら、カウンターの上に山と積んであった

オレンジを3コも使って、手絞りでグラスについでくれた。

それでコーラよりも安いのだ。

今まで日本で飲んだ、どのオレンジジュースよりおいしい。

(裏の畑で採れたオレンジ?)

シチリアの田舎は、オリーブや小麦畑、牧草地の緑に、

アザミ、レンギョウ、ヒナゲシなどの野の花が咲き、

小鳥のさえずりが絶えず聞こえる。

そして、サボテンなんかも自生する土っぽさが、

妙なくらいに私の中で懐かしさを呼び起こし、

安堵のため息が出た。

 

                        アグリジェント「コンコルディア神殿」

 

アグリジェントの町は「アーモンドの花祭り」の真っ最中。

時代がかった衣装を着た人たちでいっぱいだ。

メイン広場では、歌って踊ってのすごい騒ぎ。

イタリア国内だけではなく、ヨーロッパ各地の人々が来ている。

しかし、日本人は私たちだけ。

そのせいか、やたらとジロジロ見られる。

まだ10才ぐらいの男の子が、こちらに向かって色っぽい目でウィンクしてきた。

おいおい、あたしゃ、あんたの母親と同じぐらいだよ・・・。

こうやって天才的なナンパ男が育っていくのだろか・・・。

おそるべきイタリア。

 

                                             タイツが似合うイタリア男たち

 

                                                   アーモンドの花

 

                                                  メイン広場で、踊っていた人たち


夜になると、丘陵の頂上に建っている神殿まで、

火のついた松明を持ってのパレードがある。

これがメインだと言っても過言ではないくらい、

色々な国の人々が、さまざまな民族衣装をまとい、

やる気満々で出発を待っている。

ちなみにTV局も来ていた。

チアガール風の女の子たちは、お揃いの赤いミニスカートから

スラリとした足を出して、身だしなみに余念がない。

トルコから来た一行は、まるで魔女のようだ。

フィンランドから来た女の子たちは、長いボア付きスカートをはいた

かわいいサンタクロース姿。

私も松明を持たせて貰い、みんなと一緒にアーモンドの畑をすり抜け、

なだらかな丘陵を登っていった。

 

                                          アグリシェントの女の子たち

 

                               ブルガリアの男の子

 

                                                                                   フィンランドの女の子たち

 

 

                                          どこの国の人たちかわからない

 

                                           トルコの人たち

 

アグリジェントのお祭りが過ぎ、翌日はセリヌンテへ。

セリヌンテの意味は、「野生のセロリ」。

あっちこっちでセロリが自生している、食うには困まらん町らしい。

心休まる田舎の風景がどこまでも続くが、ここでもギリシア神殿跡の見学で、

シチリアの旅は、ひたすら忍耐の遺跡めぐりだ。

余談だが、北イタリアへ行くと、今度は遺跡から教会めぐりの旅に変わる。

こう毎日遺跡ばかりをめぐると、どれがどれなんだが、なにがなんなんだか

私の頭はすっかりわからなくなり、

「これって、ただの石じゃん」という結論に達した。

私って、哲学的? (ただのバカ)

 

                                 セリヌンテの遺跡前で

 

岩山の頂上にある、中世そのままの街「エリーチェ」

雨と霧に霞んでいる。

白い霧の合間から、石畳の道と、古い石の家が見え隠れするその様は、

まるでモノクロ映画のワンシーンのよう。

カツン、カツンと足音だけが響く。

雨に濡れた犬が一匹。

時代をさかのぼり、まるで中世の迷路に入り込んだような不思議な空間。

 

                                 エリーチェの路地にて

 

 

マフィアで有名なパレルモ。

人殺しはそれほど起こらないが、スリ、かっぱらいの類に要注意の街。

しかし、バスで移動しながら、

「ここではマフィアに有罪を言い渡した裁判官がテロで銃撃されて死にました。」とか、

「ここではマフィア撲滅に力を入れた議員が、テロの爆弾で死にました。」とか、

「ここではマフィアを検挙した警察のトップが、テロの犠牲になりました。」とか、

そんな説明ばっかり。

やっぱり相当ヤバイ街? でも私の印象では新宿・歌舞伎町の方が、

ヤバイ度はかなり上だと見たが・・・。

でも、ここパレルモ、マフィアはともかくとして、

西と東の文化が混じり合いつつ融和して、

一筋縄では、計れない街。

(それもそのはず、歴史を紐解きゃ9世紀から11世紀までは世界イスラム4大都市だったとか・・・)

          

                                 パレルモ 

                        左・マルトーナ教会     右・サン・カタルド教会

 

 

ゲーテが「イタリア紀行」で書いている、神の啓示を受けた山、

たかだか標高606メートルの「モンテ・ベレグリーノ」。

途中には、パレルモの守護神「聖ロザリア」の像を祭った寺院、

「Santuario di Santa Rosalia」がある。

ここでは焼き物の工房を発見。勝手に中へ入り、色々と見学させてもらい、

記念に工房の人達と写真を撮らせてもらった。

 

 

                                           上・工房の人たち

                                         下・そこで購入したエンジェルの焼物 

 

そうそう、パレルモと言えば気の弱い人は絶対行けない場所がある。

それは「カタコンベ」。要するに教会墓地。

それもミイラばかり8,000体。

ちゃんと入場料をとって、見せているところがスゴイ。

シチリアの風習として、未だ死んだらミイラを作る。

金持ちのミイラは、生前の姿を残しているが、

悲惨なのは、ビンボー人のミイラ。

肌なんか、ドクロにへばりついているって感じだし、目なんか窪みまくって、

髪の毛なんか、トウモロコシ。まるでムンクの「叫ぶ人」。

8、000体のミイラ、それが壁いっぱいに飾ってあるんだよ。

時代別に洋服もちゃんと着せて、ミイラを見ながら狭い通路を歩く。

子供のミイラなんか、白いレースのワンピースなんか着せてあって、

ひからびたアンテークドールだ。

下手なホラーなんか見るより、よっぽどコワイ。

ホラー好きの人は、是非1回行ってみよう。

 

                                                   世界で一番美しいと言われている子供のミイラ

                                                ミイラだけど、子供がすやすやと寝ているような感じ。
      

 

さて残念なんがら、ここパレルモでかっこいい運転手の

アンジェロさんとはお別れだ。

このままフェリーにバスごと乗って、ナポリまでご帰還。

イタリア男のわりに、すっごくシャイですぐテレるかわいい人だった。

最後のウィンク、効いたぜ、ニイちゃん。

私があと10才若かったら、イチコロだったさっ!

元気でなっ! アルデベルチ!!

                                             最後に記念撮影

                                                サングラスをかけると、とってもかっこいいので、
                                           「かけて一緒に撮ろう」と、失礼なお願いをした。
                                                ごめんよ、アンジェロさん。
                                                かけてなくても十分ハンサムだったよ、あんたは。                         
                
                                                              つづく                                       

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