有川 浩 13


別冊 図書館戦争II


2011/08/30

 これで本当にシリーズの最後となる『別冊 図書館戦争II』。前作『別冊 図書館戦争I』は超ベタベタで甘甘な作品集だったが、本作は一転して超ビター。

 一、「もしもタイムマシンがあったら」。ここまであまり前面に出ることがなかった副隊長の緒形。彼が回想する知られざる過去に驚愕する。郁は郁の理由で、緒形は緒形の理由で、図書隊を志した。改めて、稲嶺という人物の懐の深さを知る。

 二、「昔の話を聞かせて」。郁の知らない、堂上や小牧、玄田の若かりし頃の話。今でこそ笑い話のウサちゃん事件だが、当時は冗談で済ませることはできなかった。こうした歴史の積み重ねの上に、現在がある。と、微笑ましい展開はここまで。

 三〜五は「背中合わせの二人」(1)〜(3)として連続している。お断りしておこう。ここからは、シリーズ中最も読むのが辛い展開が待ち受けている。実際、単行本版あとがきによると、第一稿を読んだ有川浩さんの旦那様に、泣きを入れられたという。

 (1)はまだ笑い流せる。十分不快だが、似たような展開はこれまでもあった。ところが、うまくやったのかと思いきや、真の辛さはこれからだったのだ。

 うぐう…あまりの用意周到さかつ執拗さにげんなりすると同時に、有川さんを恨みたくなる。実際にありそうな話だけに、シリーズ中屈指のリアリティ…。しかし、思い起こせば、有川浩という作家は必要とあらばヘビーな展開も辞さないではないか。例えば自衛隊三部作『塩の街』『空の中』『海の底』然り。耐えて読み進むべし。

 最後は必ずハッピーエンドで救われる。そこが有川浩作品が高い支持を集める理由なのだろう。旦那様が泣きを入れたおかげで、エンディングでのアフターケアは万全なのでご安心あれ。黒幕が誰か早い段階で気づいてしまうのが、難点といえば難点か。

 図書館戦争シリーズの文庫版には、DVDの初回特典だった短編が追加収録されているが、本作に収録された「ウェイティング・ハピネス」にはまいりました。最後の最後まで痒いところに手が届くシリーズだった。図書隊に栄光あれ。



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