原 りょう 02


私が殺した少女


2001/02/24

 なぜ、この作家のこの作品を読んでみることにしたのか? 理由は単純明快。1989年版『このミステリーがすごい!』で第1位であったこと。直木賞受賞作であること。もう一つ付け加えるなら、漢字二文字のペンネームに何となく惹かれたこと、だろうか。

 本作は、おそらく僕が初めて読んだ本格的なハードボイルドだ。文庫版の帯に書かれている通り、「傑作ハードボイルド」なのかどうかは僕にはわからないが…少なくとも、手放しに「傑作ミステリー」と言うには疑問が残る。

 プロローグも何もなしに事件は幕を開ける。依頼を受けて駆けつけた私立探偵の沢崎は、その場で警察に拘束される。彼は既に、誘拐事件の渦中にいた…。

 本作をハードボイルドたらしめている要素を挙げると、例えば沢崎の陰のある人物像であり、シニカルな台詞回しであり、全編に漂う渇いた雰囲気なのだろう。そこに魅力を感じるかどうかで、本作に対する評価は変わってくるに違いない。うまいとは思う。しかし、僕にはそれ以上の魅力を見出すことができなかった。

 では、ミステリーとしてはどうだろう。凄惨な事件を扱っているのは、タイトルから推して知るべし。にも関わらず、すいすいと読めてしまった。緊迫感に溢れる序盤の展開は良かったが、中盤以降いまいち物語に入り込めなかったのはどうしたことか。こんなはずじゃない、もっと面白いはず…だったのだが、結末に至って一気に脱力した。

 そもそも、僕が期待したものと原りょうさんの目指したものがずれていたのだろう。素直に堪能するべきなのだろうし、雰囲気で読むのが正しい読み方なのかもしれない。

 沢崎という男は、青臭い義憤に駆られてはいないが、何かに飢えている。その点は評価しておきたい。とりあえず、続けて『そして夜は甦る』を読んでいるところだが、僕自身の飢えと渇きは、果たして解消されるだろうか。



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