畠中 恵 11


ちんぷんかん


2010/05/14

 しゃばけシリーズ第6作。第4作『おまけのこ』の感想に、水戸黄門のような安心感がありながら、少しずつひねりを加えてマンネリにならない工夫をしているように思う、と僕は書いたのだが、本作もあの手この手でマンネリ化と戦っている。

 序盤で、度重なる火事にも難を逃れてきた長崎屋が、とうとう火事に巻き込まれた!

 病弱な一太郎がついに冥土へ? という「鬼と小鬼」。三途の川を前にして、やけに冷静だな一太郎。なぜかついてきた鳴家だけは元の世に戻してやりたいという。何とも生真面目な。というか、まず自分が戻りたいとは思わないのか?

 本作の個人的一押しは、表題作「ちんぷんかん」。妖封じで有名な広徳寺の寛朝には、秋英という弟子がいた。どうして弟子になれたのかわからないまま13年。1人で相談に応対せよと寛朝に言われたのだが…。読みどころは、秋英が巻き込まれた和算勝負だ。答えが気になるという少数派の読者の皆様、解答例をどうぞ。

 ここからは、一太郎にとって身近なある人物の事情が絡んでくる。

 一太郎の母おたえと、父籐兵衛のなれそめが明かされる「男ぶり」。一生懸命に「卵」の謎を解いた結果は…一太郎にとってはよかったのだろう、多分。

 「今昔」には、某有名シリーズ作品で広く知られるようになった職業(?)の男が、一太郎と妖たちに挑んでくる。時代の流れが、〇〇〇から活躍の場を奪ったことには同情できなくもないが、やはり勝手な理屈だ。そんな彼に待ち受ける運命とは…。

 「はるがいくよ」は、本作中、しゃばけシリーズの熱心なファンに最も訴える1編だろう。多くは語るまい。色々とトラブルもあったが、友に囲まれ、愉快な妖たちに囲まれ、病弱ながらも楽しく過ごしてきた一太郎。だが、確実に時は移ろいゆく。この儚くも美しい1編は、一太郎の周囲にも変化が訪れることを突きつける。今後を気にさせる終わり方だ。



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