東野圭吾 40


私が彼を殺した


2000/05/28

 『どちらかが彼女を殺した』に続く、読者参加型本格ミステリー第二弾。今回は、容疑者が三人に増えている。

 流行作家の穂高誠が、詩人の神林美和子との挙式当日に毒殺された。美和子の兄、貴弘。穂高のマネージャー、駿河直之。穂高の担当編集者、雪笹香織。事件後、三人は一様に呟く。私が彼を殺したのだ、と。三人の容疑者が交代で語り部を務めながら、物語は進む。

 前作と違い、本作では三人の容疑者がいずれも自分こそが殺したと思っているところが興味深い。しかし、当然ながら捕まりたくはない。三人はそれぞれに穂高への殺意を抱き、独自の殺害計画を実行に移す。問題は、真犯人が誰かというより、誰の計画が穂高の死に繋がったのか、である。

 実際、穂高の死は三人の計画が絡み合った結果起きているので、結果的には三人の共犯と言えなくもない。真犯人を一人に確定するのは、ちょっと疑問が残るかな。罪状は一人が殺人罪、他の二人は殺人教唆に殺人未遂…か?

 今回も、加賀恭一郎刑事が登場する。しかし、今回はあくまで脇役であり、加賀ファンはがっかりするかもしれない。真犯人の指摘はするものの、前回のように手に汗握る推理合戦を繰り広げることはない。ラストシーンはちょっと盛り上がりに欠けるか。その慧眼には、相変わらず敬服するが。

 また、個人的には、謎解きは前作の方が難しかった。最後のヒントはちょっと易しすぎないか? 少々疑問点は残るのだが、僕なりにまとめた謎解き編を掲載しておく。



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