東野圭吾 46


レイクサイド


2002/03/18

 東野さんの今年最初の新刊である。当然即入手して即読んだ。即読み終えた。

 うーん…「東野圭吾からの新たなる挑戦状」なんて帯に書いてあるから、僕はてっきり本格だと期待してしまった。あなたは"真相"にたどりつけるか!? たどりつけなかった。たどりつけるはずがないだろう。

 僕は本格とは何ぞやなどと語れるほどこのジャンルに精通していない。「本格」という言葉も時代と共に広義になっているだろうし、本作が本格ではないとは言い切れない。しかし、少なくとも『どちらかが彼女を殺した』や『私が彼を殺した』のように、読者自身が推理することを想定した作品ではない。

 そんな訳で、看板に偽りありだと実業之日本社を責めたくなるが、僕の早とちりと言われればそれまでではある。もちろん東野さんを責めるのは筋違いだ。

 さて、肝心の内容である。中学受験を控えた子供たちの勉強合宿という名目で、四組の家族が集った湖畔の別荘。そこで起きた殺人事件。伏線、背景、動機、真犯人、いずれの点からもよく練られている。十分に元は取れる完成度である。だが、「本格」という先入観が無難にまとまっているとの感を抱かせたことは否めない。

 本作は、『もう殺人の森へは行かない』のタイトルで「週刊小説」1997年2月7日号から9月5日号まで連載された作品を下敷きに書き下ろされた。連載終了後すぐに日の目を見なかった作品が今になってリメイクされたことは、東野さんの意欲を示している。これは東野流本格の復活に向けたのろしだ。僕はそう思いたい。質は高いのに評価してもらえなかった中期の作品群が、僕は大好きなんだから。

 読者参加シリーズの第三弾は出ないのかな?



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