加納朋子 02 | ||
魔法飛行 |
『ななつのこ』の続編という位置付けである。手紙のやり取りはさらに続く。もっと気楽に考えればいいじゃないか。手紙で近況報告するくらいの気持ちでね――という言葉に後押しされ、物語を書き始めた駒子。
前作以上に連作長編という趣きが濃い。全四編の間に挿入された三つの謎の手紙。すべては最後の「ハロー、エンデバー」へと繋がっていく。
最初の「秋、りん・りん・りん」が既に伏線になっていることに気付くのは、最後まで読み終えてから。ある女性の人物像を強く印象付ける。誉められた行動ではないが、一概に責められない。僕自身にもこうした感情は存在するから。
「クロス・ロード」はネタ自体はわかってしまったが、シリーズ中でも痛切な一編。キャンバスに込められた思いは…。しかし、これもまた伏線だ。
表題作の「魔法飛行」の謎は、他愛もない。けれども、いい話じゃありませんか。時にはリアリストよりもロマンティスト、ペシミストよりもオプティミストでありたい。学園祭が舞台であるところは、大学祭のスタッフをしていた僕には個人的に懐かしい。
謎の手紙を受け取り、我がことのように心配する駒子は実に心根が優しい人間だ。こういう手紙を受け取ったら、心配する以前に気味悪く感じるのが普通の反応のような気がするのだが…。駒子のような感受性が、物語を綴るためには必要なのだろうか。
手紙の謎、そしてこれまでの三編が、一気に雪崩れ込む「ハロー・エンデバー」。一件落着に終わることくらいは言ってもいいだろう。良かった良かった。
前作といい、各編でそれぞれ謎解きを成立させつつ連作長編にもなっているのだから、その手腕はお見事。『掌の中の小鳥』も含め、創元推理文庫から出ている三作は、日常に疲れたあなたに是非お薦めしたい。