加納朋子 09


ささら さや


2001/10/08

 『ささら さや』…不思議なタイトルを冠した加納朋子さんの新刊である。どうしてこうまで切ない話を書いてしまうのよ、加納さん。 

 突然の事故で夫を失ったサヤは、残された赤ちゃんのユウ坊と共に埼玉県の「佐々良」という街に移り住んだ。佐々良に住むサヤだから、『ささら さや』というわけだ。このタイトルにはもう一つ意味があるが、ここでは触れない。

 どうしてこんなに薄幸なのさ、と加納さんを恨みたくなるほどサヤは薄幸だ。そして、今時ここまで気弱で今にも折れそうな女性がいるんかい、と加納さんに突っ込みたくなるほどサヤは気弱で繊細だ。そんなサヤに、亡き夫の親族が赤ちゃんの親権を寄越せと迫る。何ともわかりやすい構図である。

 意地悪く言ってしまえばお涙ちょうだいなお話なんだけど…こう見えても(?)この手の話には弱いのである。心優しきサヤに、久代さん、夏さん、珠さんのお婆ちゃんトリオや、エリカとダイヤの親子という心強い友達が次第にできていく。これも人徳の賜物だろう。祖母と最後に言葉を交わしたのは、さていつだったろう…とふと考える僕。

 そして、サヤの身に不思議な事件がふりかかる度に、亡き夫が他人の姿を借りて助けに来てくれる。だけどサヤ、君はいつかは自力で生きていかなければならないんだ。本作は、サヤの成長記でもある。母は強し。

 最初の「トランジット・パッセンジャー」と、最後の「トワイライト・メッセンジャー」は亡き夫の一人称で語られるが、この配置がまた絶妙なのだ。加納さんのうまさに唸りつつ、二人を切り裂いた加納さんを改めて恨みたくなる。サヤとユウ坊に幸あれ。

 『ななつのこ』といい、『魔法飛行』といい…つくづく加納さんは連作短編集の名手だ。長さを競うかのような傾向がある昨今だが、長編よりもよっぽど手間がかかるだろう。1998年に「星星峡」誌上に蒔かれた種は、丹精込めて育てられ、ようやく実をつけた。これなら年一作もやむなしか。でも、もっと出してほしいな。



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