加納朋子 13 | ||
スペース |
これから本作を読む予定がある方は、以下の文章を読まないことをお薦めする。どうか一切の先入観抜きで読んでいただきたい。
本作は、『ななつのこ』『魔法飛行』に続く「駒子」シリーズの続編である。前作から実に11年ぶりに刊行される、シリーズ最新刊ということになる。
「はじめに」の中で、できれば『ななつのこ』『魔法飛行』と順番に読んでいただけたらなあ……と加納さんは書いている。物語としては独立しているが、やはり前二作を読んでシリーズの基本構造に慣れておいた方がいいかもしれない。
支障がない程度に書いておくと、本シリーズは主人公の駒子と探偵役に当たる人物との手紙のやり取りから物語が展開する。全二編中の最初の一編「スペース」は、そんなシリーズの流れを汲むものだが、手紙が占める割合が非常に大きくなっている。いきなり本作を読んだ読者は面食らうのではないだろうか。
かく言う僕も、いつまで続くんだよと思いながら読んでいた。ところが、続く「バックスペース」を読むと、「スペース」の大部分を占める手紙に込められた意味がわかるしくみになっていたのだ。こうした構成力はさすが加納さんと言うしかない。
すべて収まるところに収まったし、めでたしめでたし…なのだが、いくら何でもできすぎじゃない? と思ったのも事実である。その背景に、電子メールで事足りる時代にあんな膨大な量の手紙を書くものか、という意識があったことは否めない。手紙どころか字を手書きすることすらほとんどない日常である。
そういえば、作中の人物がPCや携帯を使うシーンはない。彼らが頼る手段はあくまで手紙。文字通り手書きの手紙。一方、僕の生活はもはやネットと切り離すことはできない。得たものの方がずっと多いと思っているが、失ったものはないだろうか。
とはいえ、実はこのタイトルはネット時代を象徴しているのだった。むう。